国内上場企業のBCM(事業継続マネジメント)導入実態調査を実施
2011年9月28日
MS&ADインシュアランス グループの株式会社インターリスク総研(社長:近藤 和夫)は、国内全上場企業3,209社に対し、BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)の導入実態調査を実施し、回答状況をまとめました。
企業の事業継続取組みへの関心は、今年3月に発生した東日本大震災に加え、2012年に予定されるBCMの国際標準化(ISO化)へ向けておおいに高まっています。2005年の開始から5回目となる今回の調査では、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の対策を進める(もしくは対策を開始する)企業が大幅に増えていることが判明しました。一方で、BCPの実効性確保や事業継続性を継続的に向上させる仕組みづくりなど、企業が対処すべき今後の課題が明らかになりました。
1.調査の概要
(1)調査方法 | : | 質問紙郵送法 |
(2)対象企業 | : | 日本国内全上場企業 3,209社 ※東北6県、千葉県、茨城県の各県に本社を置く企業を除く |
(3)回答数 | : | 432社(回答率:13.5%) |
(4)調査期間 | : | 2011年8月~9月 |
2.調査結果
主な調査結果(顕著な傾向が表れた項目、震災関連の項目等)は以下のとおりです。
なお、「前回調査」とは、2010年7月に当社が実施した同種の調査結果を指します。
(1)BCP策定状況
今回調査 | 前回調査 | 増減 | |
---|---|---|---|
策定している | 30.3% | 29.5% | +0.8 |
現在策定中である | 23.1% | 28.8% | +9.3 |
策定する計画がある | 15.0% | ||
策定していない | 31.3% | 40.7% | -9.4 |
無回答 | 0.2% | 1.0% | -0.8 |
「策定している」・「現在策定中である」・「策定する計画がある」と回答した企業は計約68%(前回調査から+10.1%)に上りました。一方で、「策定していない」と回答した企業の割合は、前回調査より約9%減少しています。このことから、日本企業においてBCP 策定への取組みが確実に加速していることが判明しました。
(2)BCPの有効性に関する検証―BCPに関する訓練の実施状況
今回調査 | 前回調査 | 増減 | |
---|---|---|---|
実施している | 32.0% | 30.9% | +1.1 |
実施していない | 61.1% | 61.2% | -0.1 |
その他・無回答 | 6.9% | 7.9% | -1.0 |
前回調査からの増減を見ると、訓練を実施し実効性を高めようという企業の割合に大きな変化はなく、未実施の企業は依然として約61%あり、課題として挙げられます。
(3)海外事業所/現地法人への展開(前回調査なし) ※海外事業所/現地法人をもつ企業を対象とする設問
(a) 海外事業所/現地法人におけるBCP策定の必要性
今回調査 | |
---|---|
必要である | 67.1% |
必要はない | 18.4% |
無回答 | 14.5% |
(b) 海外事業所/現地法人におけるBCP策定有無と策定方法[複数回答]
地域 | 策定していない | 海外事業所/現地法人にて独自に作成した | 日本国内事業所で作成したBCPを参考にした | その他・無回答 |
---|---|---|---|---|
中国 | 84.3% | 4.8% | 9.0% | 3.0% |
アジア諸国 (除く中国) |
81.9% | 2.7% | 14.1% | 2.7% |
北米 | 77.6% | 6.5% | 13.1% | 3.8% |
欧州 | 71.9% | 7.8% | 18.8% | 3.1% |
海外事業所/現地法人におけるBCP策定については、必要性を認識しているにもかかわらず、多くの企業がBCPを策定していないことが分かりました。サプライチェーンを継続するためにも、今後、海外事務所のBCPをどのように策定していくかが課題として挙げられます。
(4)東日本大震災での影響(前回調査なし)
(a) 震災により影響を受けたもの [複数回答]
今回調査 | |
---|---|
従業員の出社困難 | 62.8% |
停電(含む計画停電) | 57.0% |
取引先の操業停止などによる製品や部品の調達・供給の困難 | 51.7% |
(b) 事業継続への取組みに及ぼした影響 [複数回答]
今回調査 | |
---|---|
事業継続への取組みが加速した | 42.6% |
経営層の理解が深まった | 41.9% |
特に影響はなかった | 28.2% |
事業継続に関する予算が増加した | 5.3% |
その他・無回答 | 3.2% |
(c) BCP全体の総括 ※BCP策定済、かつ震災の影響を受けた企業に対する設問
今回調査 | |
---|---|
うまくいった | 14.2% |
どちらかといえばうまくいった | 54.0% |
どちらかといえばうまくいかなかった | 13.3% |
うまくいかなかった | 2.7% |
無回答 | 15.9% |
3.今後の課題について
東日本大震災を経て、企業では「事業継続能力を継続的に向上させる仕組みづくり(50.0%)」、「組織内へのBCP取組みの浸透(40.3%)」、「組織力/危機管理対応力の向上(38.9%)」、「BCP作成の全社展開(36.8%)」等を今後改善が必要な取組み・課題として認識しています。当社は、BCMの啓発活動などを通じて、BCP策定にとどまらない有効な検証体制確立の仕組みづくりを推進するとともに、海外事業所/現地法人への展開拡大についても支援を行っていきます。
4.調査結果のご提供
BCM導入実態調査の報告書は、2012年1月頃完成予定です。