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自然災害時の避難に関する実態と意識についての調査

2023年2月14日

MS&ADインターリスク総研株式会社(取締役社長:中村 光身)は、過去の大規模自然災害被災地の住民を対象に自然災害発生時の避難をテーマとするアンケート調査を実施しました。本調査では、回答者には自然災害発生時にとった行動とその理由や、避難行動のプロセスを促進する要因に関する設問に回答していただきました。

内閣府が作成した「避難情報ガイドライン」には、「自らの命は自らが守る」という意識を持ち、自らの判断で主体的な避難行動をとることが必要とされています。しかし、同ガイドラインの理想ほどには個々人の避難行動の意識は一様ではありません。近年、自治体から警戒レベル4の避難情報(当時の避難勧告・避難指示)が発令された自然災害に直面した人々はどんな考えで、どんな行動をとったのでしょうか。

1. 調査結果のポイント

  • 自治体から警戒レベル4の避難情報(当時の避難勧告・避難指示)が発令された自然災害の発生時に、自宅にいたとした回答者のうち、自宅外に避難をしたのは16.9%であった。この値(自宅外避難率)を自然災害種類別にみると、地震の場合36.3%、風水害の場合5.7%と、6倍を超える開きが見られた。
  • 自宅以外の場所に避難したきっかけ、要因は「自己判断」が約5割で最も多く、「周囲からの呼びかけ」(28.4%)、「行政からの避難情報」(20.6%)がそれに続く。
  • 自宅外に避難しなかった理由については、「自宅は安全だと思った」とする回答が過半数で最も多い。また、4人に1人が「自分は被害に遭わないと思った」と回答している。
  • 「自分は被害に遭わないと思った」の回答者を「正常性バイアス」が働いたと見なして分析した結果、「自分は被害に遭わないと思った」の回答率は各年代を通じて女性よりも男性の方が高いという結果となった。
  • 全回答者の65.7%が金銭の給付は避難の「動機づけになる」と回答した。この回答率は若年層において高く、高齢層において低い傾向が見える。

2. 調査の概要について

(1)調査実施期間

2022/10/6(木)~10/14(金)

(2)調査方法、調査対象者

Web形式でアンケート調査を実施した。調査対象者(回答者)は、以下の自然災害の被災地域より抽出した合計1,000名である。いずれの自然災害においても、被災地域の市区町村より避難勧告、避難指示(緊急) 、つまり警戒レベル4情報が発令されている。

①風水害(650名)
  • 2020年7月豪雨(熊本豪雨)(地域:熊本県人吉市、球磨村他)200名
  • 2019年10月台風19号(令和元年東日本台風)(地域:福島県中通り、長野県長野市他)200名
  • 2018年7月豪雨(西日本豪雨)(地域:岡山県倉敷市他)250名
②地震(350名)
  • 2018年9月北海道胆振東部地震(地域:北海道厚真町他)150名
  • 2016年4月熊本地震(地域:熊本県阿蘇市、益城町他)200名

3. 主な調査結果について(抜粋)

今回のアンケート調査は、風水害と地震の被災地域の住民を対象としている。自然災害の種類(風水害と地震)別に回答者の取った避難行動に差異が生まれるかどうかを確認すべく集計を行った(図表1)。「自宅以外の場所に避難をした」と回答した人の割合(自宅外避難率)は地震の場合で36.3%、風水害の場合で5.7%と、開きが見られた。

【図表1】災害の際、被害を避けるため避難や移動をしたか(自然災害種類別)

単位:%

  自宅以外の場所に避難をした 自宅内の安全な場所
(2階など)に移動した
特に移動や避難はしなかった
風水害(n=527) 5.7 20.1 74.2
地震(n=306) 36.3 12.4 51.3

また、本調査では自然災害の種類(風水害と地震)別に回答者が避難をしたきっかけについて聞いている(図表2)。地震で自宅外に避難した回答者の最も多い回答が「自己判断」(55.0%)である。一方、風水害で自宅外に避難した回答者の最も多い回答は「行政からの避難情報」(43.3%)であった。これらから、自宅で地震に遭った回答者の多くは自らの直感(自己判断)に従って行動をとったことが窺える。

【図表2】自宅以外の場所に避難をしたきっかけ(自然災害種類別)

図表2

「特に移動や避難をしなかった」および「自宅内の安全な場所に移動した」とした回答者にその理由を聞いた(図表3)。いずれの回答者も「自宅は安全だと思った」とする回答が最も多かった。

【図表3】なぜ自宅外に避難しなかったのですか。その理由としてあてはまるものお選びください。(いくつでも)

図表3

以上