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~安心・安全で快適なエアモビリティ社会の実現に向けて~
「『空飛ぶクルマ』の社会受容性等に関する調査(第2回)」について

2022年03月30日

MS&ADインターリスク総研株式会社

「空飛ぶクルマ」が実現すると思うと回答した消費者は53.1%
市場性と社会受容性双方を高めるための課題とその克服の条件の理解が重要

MS&ADインシュアランス グループのMS&ADインターリスク総研株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:中村 光身)は、「空飛ぶクルマ」に対する消費者の意識や社会受容性を把握し、商品・サービスの高度化と新たな開発に活かすことを目的に、東京大学スカイフロンティア社会連携講座の中村裕子特任准教授のご協力のもと、「空飛ぶクルマの社会受容性等に関する調査」を実施しました。

弊社では、2020年度、移動に関する様々な課題を解決する次世代モビリティとして期待される「空飛ぶクルマ」に関して調査を実施しましたが、2021年度も引き続き「空飛ぶクルマ」の社会受容性等に関する調査を実施しました。今回の調査により、利用者を含む社会が、現在の移動手段に対して抱いている不満や課題、「空飛ぶクルマ」に対する期待、不安について地域や属性等の特性を踏まえた結果を示すことができました。さらに、社会受容性の観点からは有事の際のスキームや不安要素についての対策に取り組む必要があることを明らかにすることができました。「空飛ぶクルマ」の社会実装に向け、市場性、社会受容性双方を高めるための課題とその克服のための条件を理解し、特に利用者の立場においては、地域、属性等の特性を踏まえた対策を講じる必要があると考えられます。

今回の調査結果を踏まえて、弊社はこれまでのCASE、MaaS領域におけるリスクマネジメントに関する知見を活用するとともに、次世代エアモビリティサービスの安全性・社会受容性向上に加え、サービスの普及による地域の様々な課題の解決に貢献していきます。

1. 「空飛ぶクルマ」に関する意識調査

(1) 調査の概要

① 調査方法
:Webによるアンケート
② 調査対象
:15歳~89歳の男女個人
③ 回答数
:2,000人

「地域①」東京都・大阪府在住者:800、「地域②」三重県・長崎県在住者:800、「地域③」左記以外の在住者:400。性別、年代がほぼ均等となるよう割付を実施。

④ 調査期間
:2021年8月

(2) 調査の背景、目的

① 背景

「空の移動革命に向けた官民協議会」において「空飛ぶクルマ」の2023年度の事業スタートが検討されており、居住区近くでの運航の他、中山間地帯や離島での移動、観光、災害時の救助など様々なユースケースが想定されています。
弊社は、「空飛ぶクルマ」の社会受容性の観点から、利用者を含む社会が、官民などの動向をどう受け止め、何を期待し、何に不安を覚えているか明らかにすることも重要と思慮いたしました。
弊社は、2020年10月、「『空飛ぶクルマ』の社会的受容性等に関する調査」結果を公表しましたが、継続的な調査を通じて社会課題の解決に貢献したく、市場調査と社会受容性調査の区別に注意を払いつつ、本年度も調査を行いました。

② 目的

(ア)目的の一つ目は、日常利用するモビリティに対する不満や期待を明らかにしつつ、「空飛ぶクルマ」に対して、地域特性によって異なる意見等を持っているとの仮説のもと、期待や不安・課題などを浮き彫りにすることです。

【今回仮説を設定した地域】
地域①…渋滞などの課題解決の手段として期待されていると考えられる大都市圏(東京都・大阪府)
地域②…大都市からのアクセス、県内でのアクセスの課題解決の手段として期待されていると考えられる地域(三重県・長崎県)
地域③…上記①、②以外の地域

(イ)目的の二つ目は、「空飛ぶクルマ」に対して、回答者の属性によって異なる意見等を持っているとの仮説のもと、期待や不安・課題などを浮き彫りにすることです。

【今回考慮した属性】

  • (a) 住所(都道府県、郵便番号)
  • (b) 性別
  • (c) 年齢
  • (d) 職業
  • (e) 年収
③ 調査項目

調査項目は以下のとおりとし、計50問の質問を行いました。

  • 日常利用するモビリティの課題と期待するソリューション
  • 「空飛ぶクルマ」に関する認知度と実現への期待
  • 利用者としての期待・不安
  • 社会としてのベネフィット・不安

(3) 調査結果の概要

① 「空飛ぶクルマ」が実現すると思うと答えた人の割合は53.1%でした。2020年度の調査では、実現すると思うと答えた人の割合は57.8%、2年続けて50%台となり、「空飛ぶクルマ」の認知度が十分に上がっていない状況です。地域別では、東京都・大阪府在住者が、三重県・長崎県、その他地域と比較して、「空飛ぶクルマ」が実現すると思う割合が高い結果となりました。イベント等の開催が多く、万博での飛行も予想される等、大都市圏在住者の方が他の地域在住者と比べて「空飛ぶクルマ」を身近に(現実的なものとして)感じる傾向が強いと推察されます(図1)。

【図1】空飛ぶクルマの実現可能性

【図1】空飛ぶクルマの実現可能性

② 「空飛ぶクルマ」に対して期待することで最も多かったのは「移動時間の短縮」、2番目に多かったのは「渋滞のない移動」であり、2020年度の調査でも同じ結果でした。地域別でみても、1番目、2番目では差異は認められませんでしたが、3番目に多かったのは、東京都・大阪府では「都市部の渋滞緩和」、三重県・長崎県では「離島等、今まで簡単には行けなかった場所への移動」、その他地域では「救命・救急医療の迅速化」という結果となりました。東京都・大阪府では渋滞、三重県・長崎県では離島への移動の不便さ、その他地域では救命・救急における移動・移送の不便さ等、各地域の移動における課題や日常における移動の容易さ等、差異が認められたことが要因と考えられます(図2)。

【図2】「空飛ぶクルマ」に対して期待すること

【図2】「空飛ぶクルマ」に対して期待すること

③ 「空飛ぶクルマ」を利用したい場面で最も多かったのは「急いでいる場面(鉄道やタクシーより時間短縮できる場合)」であり、2020年度の調査でも同じ結果でした。性別では1番目では差異は認められませんでしたが、2番目に多かったのは、男性は「遊覧飛行など観光・娯楽の場面」、女性は「空港から目的地へ移動する際の負担を減らしたい場面」となりました。アンケートの結果から、男性は女性と比べ出張の機会が多かったことから、空港から目的地への移動に負担を感じない傾向にある(慣れている)と推察され、それが差異の生じた要因と考えられます(図3)。

【図3】「空飛ぶクルマ」を利用したい場面

【図3】「空飛ぶクルマ」を利用したい場面

④ 利用者以外の(「空飛ぶクルマ」の飛行ルートや離着陸場周辺住民としての)立場において、「空飛ぶクルマ」に対する不安という面では、1番目に多かったのは「墜落した場合の人命、財産に対する甚大な被害」であり、「落下物」がこれに続きましたが、2020年度の調査でも同じ結果でした。また、属性による大きな差異は認められませんでした。「空飛ぶクルマ」が墜落したり建物等に衝突しないことや、荷物等を落とさないこと、騒音を出したり犯罪に悪用されたりしないこと等、属性にかかわらず共通の不安を有しているものと考えられます(図4)。

【図4】「空飛ぶクルマ」が自宅の上空を飛ぶことに対する不安

【図4】「空飛ぶクルマ」が自宅の上空を飛ぶことに対する不安

(4) まとめ

  1. ① 今回の調査により、利用者を含む社会が、現在の移動手段に対して抱いている不満や課題、「空飛ぶクルマ」に対する期待、不安について地域や属性等の特性を踏まえた結果を示すことができたと考えます
  2. ② 社会受容性の観点からは有事の際のスキームや不安要素についての対策に取り組む必要があることを、明らかにすることができたと考えます。
  3. ③ 「空飛ぶクルマ」の社会実装に向け、市場性、社会受容性双方を高めるための課題とその克服のための条件を理解し、特に利用者の立場においては、地域、属性等の特性を踏まえた対策を講じる必要があると考えます。

2. 今後の取組みについて

今後は、先行調査との比較によって、日本と海外の利用者/社会の意識の差や、昨年実施した調査における認知度の差等を分析するとともに、継続的な調査を行うことで、MS&ADインシュアランス グループとして、安心・安全な「空飛ぶクルマ」の社会実装による社会課題の解決に貢献していきます。

以上