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AIを用いた映像解析による交通事故リスクアセスメントの提供を開始
~「衝突ハザードAI映像解析」によりヒヤリ・ハットを定量的に評価~

2024年09月27日

MS&ADインターリスク総研株式会社

MS&ADインシュアランス グループのMS&ADインターリスク総研株式会社(代表取締役社長:一本木 真史)は、AIを用いた映像解析により交通参加者間の衝突危険性を定量的に評価する「衝突ハザードAI映像解析*1」を開発し、走行ルートや交差点など特定地点における交通事故削減に向けた新しいリスクアセスメントの提供を開始します。

1. 概要

走行ルートや交差点など特定地点における交通事故発生リスク(以下、「ヒヤリ・ハット」)の洗い出しは、調査担当者による現地での目視、もしくは現地映像の確認によるものが主流となっています。MS&ADインターリスク総研では、ヒヤリ・ハットの洗い出しにおいて調査担当者ごとの経験・スキル等による結果差異が発生する可能性を課題として認識していました。

この課題に対し、調査担当者が行っていたヒヤリ・ハットの洗い出し・評価を米国Streetscope社が開発したAIを用いた映像解析ツール*2に置き換え、日本の交通環境下において定量的にヒヤリ・ハットを分析する実証実験を2021年より実施してきました*3。この度、システム開発を終え、日本における本ツールを「衝突ハザードAI映像解析」の名称でリリースし、交通事故削減に向けた新しいリスクアセスメントの提供を開始します。

図1. 映像解析イメージ(自車から見た他の交通参加者をAIで把握し距離等を算出)

図1. 映像解析イメージ(自車から見た他の交通参加者をAIで把握し距離等を算出)

2. 特徴

「衝突ハザードAI映像解析」は、交通状況を記録した映像をAIを用いて解析し、各力学的特性をもとにヒヤリ・ハットを数値で算出するものです。この数値を指標化しSHM(Streetscope Collision Hazard Measure*4)と名付け、0から100の間でヒヤリ・ハットの程度を表します。

図2. SHM(Streetscope Collision Hazard Measure)のイメージ

図2. SHM(Streetscope Collision Hazard Measure)のイメージ

「衝突ハザードAI映像解析」で算出したSHMを地図上に可視化することにより、「SHMが高い地点(重大性が高い地点)」や「SHMが頻繁に高くなる区域(ホットスポット)」を定量的に把握できます。この可視化により、以下の目的に利用することが可能です。

  • 「対策を講じるべき地点の絞り込み」や「優先順位付け」
  • 目視を中心とした定性分析結果の検証
  • 年次変化等の比較

また、SHM値は撮影映像と紐づいているため、SHMが高い地点、または高いSHMが頻出する区域で発生した事象について映像データを抽出し、ビジュアルで把握することも可能です。

図3. (左)走行ルート上のSHM分布例、(右)高いSHMが発生したときの映像ピックアップ例
図3. (左)走行ルート上のSHM分布例、(右)高いSHMが発生したときの映像ピックアップ例

図3. (左)走行ルート上のSHM分布例、(右)高いSHMが発生したときの映像ピックアップ例

3. 評価対象

「衝突ハザードAI映像解析」は、下記の2つの評価対象をニーズに合わせ選択し実施できます。

① ドライブレコーダーで撮影した映像:走行ルート全体のヒヤリ・ハット評価

② 交差点などに設置した定点カメラで撮影した映像:特定地点のヒヤリ・ハット評価

具体的には以下の実施事例があります。

  • 自動運転実証実験走行ルートおよび特定地点の評価
  • 新交通システム(路面電車)導入における走行ルートの評価
  • 大型ショッピングセンターに併設される自走式立体駐車場走行路の評価

4. 価格

解析する映像の時間に応じ価格が変動します。

例:解析を行う映像時間5時間の場合330万円(税込)~

なお、解析結果をふまえた個別対策の検討などは別途費用となります。

5. 今後

全国各地での自動運転車実証実験におけるリスクアセスメントを始め、現在および将来の交通事故削減に向け、「安全・安心で快適なモビリティ社会」の実現に貢献してまいります。

*1 「衝突ハザードAI映像解析」はMS&ADインターリスク総研により商標登録出願中

*2 映像解析ツールはStreetscope,Inc,.により「車両信号を処理して挙動危険性の測度を計算するための装置及び方法」として日米特許出現中

*3 MS&ADインターリスク総研ニュースリリース(2022年6月20日)「新居浜地域スマートシティ推進協議会における交通事故発生リスクのAI予測等に関する実証実験」を参照

*4 SHMの詳細についてはErik K. Antonsson, Ph.D., P.E., NAE、Streetscope, Inc.「A General Measure of Collision Hazard in Traffic(2022)」(https://www.streetscope.com)を参照

以上