人的資本調査2022の回答データから人的資本の取組と企業業績の関係性を分析
~人的資本取組が進んでいる企業は営業利益が高いことが判明~
2023年12月6日
MS&ADインターリスク総研株式会社
「人的資本調査2022※」の運営や人的資本経営・開示のコンサルティングを実施するMS&ADインターリスク総研株式会社(本社:東京都千代田区、社長:一本木 真史)は、このほど人的資本調査2022回答データの統計的な解析を行いました。その結果、人的資本経営や開示の取組みが進んでいる企業において、従業員1人当たりの営業利益額が高い事実が判明しました。
概要は以下の通りです。
詳細につきましては、弊社発行の人的資本・健康経営インフォメーションをご参照ください。
※(一社)HRテクノロジーコンソーシアム、HR総研(Pro Future(株))と共同で、人的資本経営と情報開示のあり方を中心とした人的資本の取組みを後押しするために、2022年9月8日~12月2日の期間で実施した大規模調査
1. 分析の概要
当社が共催者として実施した「人的資本調査2022」のデータを分析に活用しています。「人的資本調査2022」は280社(上場232社、非上場48社)から回答をいただき、そのうち、今回の分析対象とした項目に欠損がなかった184社を分析に使用しています。
人的資本調査の項目は、「人材版伊藤レポート2.0」(経済産業省)や「人的資本可視化指針」(内閣官房)で推奨されている人的資本の取組内容を参考に、大項目・中項目・小項目を作成し(表1)、企業の人的資本に関する取組水準を各項目ごとに4段階でスコア化出来るように設計されています。
表1:人的資本調査2022で測定した「人的資本取組」の項目
2. 結果の概要
(1) メニューの概要
人的資本調査2022のスコアにより高群・中群・低群に回答企業を分類し、企業業績の指標である「従業員1人当たりの営業利益額」(調査回答時点の直前決算期)との関係性を分析しました。
その結果、最も取組水準の高い「高群」は他の2群と比べて1人当たり営業利益が3倍程度高く、統計的にも有意な差であることが示されました。一方、従業員規模や業種による分類では1人当たり営業利益に有意な差は見られませんでした。
今回の分析では人的資本の取組水準の最も高い群のみが、他の2群に比べて高い営業利益を上げる結果となりました。これは、人的資本の取組をある程度実践すれば結果が出るものではなく、一定以上の高い水準に至らなければ企業業績に影響を及ぼさない可能性が示唆されます。
図1:人的資本調査2022総合スコアと1人当たり営業利益の関係(単位:百万円)
3. 今後の取組み
今回、人的資本調査2022のデータ分析により、人的資本の取組が進んでいる会社の企業業績が優れているという結果が得られました。これは「人材版伊藤レポート」や「人的資本可視化指針」で「人的資本投資が企業価値向上につながる」としている主張とも整合しており、我が国で進められている「人への投資」の効用を間接的に示す研究成果と考えられます。
人的資本への取組(=人への投資)が企業業績につながるというエビデンスが蓄積されれば、企業の経営者も、より人的資本投資に前向きな姿勢を示すと考えられるほか、投資家も投資判断の材料としての優先順位を上げることが想像されます。
一方、本稿で示した分析結果はあくまで相関関係であり、因果関係を示すものではないことから、今後の人的資本調査2023による経年データの分析等を通して、より精緻に企業価値向上につながる人的資本の取組について研究を進めたいと考えています。
以上