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AI(人工知能)を活用したサービス等の受容度調査
現在のAIに対する消費者のイメージは3~4年前に比べてポジティブに

2021年2月5日

MS&ADインターリスク総研株式会社

MS&ADインターリスク総研株式会社(取締役社長:中村 光身)は、2020年12月、全国996人を対象にAI(人工知能)をテーマとするアンケート調査を実施しました。

本調査では、回答者にはAIに対するイメージ、AIを活用すべき分野、またAIの活用における倫理的課題に関する設問に回答していただきました。

2000年代初頭のディープラーニング(深層学習)の登場に端を発する「第三次AIブーム」以降、我が国にはAIを搭載した製品、AIを活用したサービスが次々と現れています。消費者はそれらAIおよびAIがもたらすものについてどのような考えを持っているでしょうか。本調査では、消費者のAIに対するマインドを探りました。

本調査の詳細な報告書は後日MS&ADインターリスク総研オフィシャルサイトで公開する予定です。

1. 調査結果のポイント

  • 3~4年前に比べて消費者のAIに対する理解と関心が高まっている。3~4年前にあったAIに対するネガティブなイメージが現在は解消されつつありAIに対するポジティブなイメージが高まっている。
  • 購入・利用を検討している製品・サービスの名前や説明に、「AI」または「人工知能」とついている場合については、消費者はそれをポジティブに受け入れる姿勢がみられる。しかし一方で、20代の約4人に1人は「製品・サービスにAIまたは人工知能とついているかはあまり関係ない」という考えを持つ。
  • 通訳、製造、介護・福祉、運輸といった分野は他の分野と比較して「AIの活用が適切である」とする回答が多かった。
  • AIの活用に関する問題点で、最も倫理的に許容できないとされたケースは、「自動運転車が搭乗者の命を守るために、歩道上の通行人をはねて死亡させた」というもの

2. 調査の概要について

(1) 調査時期・対象

2020年12月18日~20日に全国47都道府県の男女計996人を抽出しインターネットによる調査を行った。

(2) 回答者の属性

対象者996人(男性498人、女性498人)の主な属性は以下のとおり。

① 年齢

男女別に20~29歳、30~39歳、40歳~49歳、50歳~59歳、60歳~69歳、70歳以上の年齢区分ごとに83人

② 職業
公務員 経営者・
役員
会社員 自営業 自由業 専業主婦
(主夫)
パート・
アルバイト
学生 その他 無職
2.8% 1.8% 27.0% 5.4% 1.7% 17.8% 16.1% 2.8% 8.7% 15.9% 100%

3. 主な調査結果について(抜粋)

(1) AIの認知度

  1. ① 全回答者の7割超がAIの「意味を理解している」と回答した。
  2. ② 1割近くが人工知能の意味をよく知っていると回答した。

【図表1】 AIの認知度(回答者全体)

設問:あなたはAI(人工知能)について知っていますか。

【図表1】 AIの認知度(回答者全体)

(2) AIに対するイメージ(選択形式)および「3~4年前」と「今」の比較

  1. ① 「3~4年前のイメージ」と「今のイメージ」で回答を比較すると、(AIは)「怪しい」、「心配」、「使い物にならない」、という回答は「今のイメージ」において減少している。これは3~4年前にあったAIに対するネガティブなイメージが現在は解消されつつあることを示している。
  2. ② 同様の比較で、(AIは)「空想のもの」、「関心がない」、「イメージがない」、「無関係である」、という回答が「今のイメージ」において減少している。加えて、(AIは)「イメージはつく」、「関心がある」、という回答が「今のイメージ」において増加している。これは3~4年前に比べて現在はAIに対する理解と関心が高まっていることを示している。
  3. ③ 同様の比較で、(AIは)「生活や社会に役立つ」、「生活や社会が豊かになる」、「進歩してほしい」、「期待している」、という回答が、「今のイメージ」において増加している。これは3~4年前に比べて現在はAIに対するポジティブなイメージが高まっていることを示している。

【図表2】 AIに対するイメージ(回答者全体)

設問:あなたのAI(人工知能)に対する、3~4年前のイメージと、今のイメージは変わっていますか。3~4年前のイメージと、今のイメージについて、それぞれあてはまるものをお選びください。(複数回答)

単位:%、パーセントポイント

  3~4年前のイメージ 今のイメージ 差分
怪しい感じがする 20.4 5.0 -15.4
心配である 20.6 11.2 -9.3
あまり使い物にならない 13.9 2.4 -11.4
空想上の(SF的な、実現しなさそうな)もの 15.9 2.8 -13.1
関心がない 16.9 5.8 -11.0
どんなものか、イメージがつかない 11.5 1.9 -9.6
自分には無関係である 21.2 7.0 -14.2
どんなものか、だいたいイメージはつく 10.0 17.2 7.1
関心がある 20.4 32.9 12.6
生活や社会が豊かになる 14.8 27.9 13.2
生活や社会に役立つ 18.6 37.6 19.0
期待している 22.9 36.5 13.7
もっと進歩して欲しい 13.9 27.3 13.5

【図表3】 グラフ AIに対するイメージ(回答者全体)

【図表3】 グラフ AIに対するイメージ(回答者全体)

(3) 「AI」製品・サービスの購入・利用意向

  1. ① 購入・利用を検討している製品・サービス(家電、金融商品、その他)の名前や説明に、「AI」または「人工知能」とついている場合、「購入・利用したいと思う」の回答は全体の6.6%、「どちらかといえば購入・利用したいと思う」が23.7%で、合計30.3%となった。
  2. ② 年代別にみると、20~30代の「あまり関係ない」の回答が2割を超えており、他の年代に比べて高い値となっている。20代の約4人に1人は「製品・サービスに「AI」または「人工知能」とついているかはあまり関係ない」という考えを持つ。

【図表4】 「AI」製品・サービスの購入・利用意向(年代別)

設問:購入・利用を検討している製品・サービス(家電、金融商品、その他)の名前や説明に、「AI」または「人工知能」とついている場合、購入・利用してみたいと思いますか。

単位:%

  購入・利用したいと思う どちらかといえば購入・利用したいと思う どちらともいえない どちらかといえば購入・利用したくない 購入・利用したくない 「AI」または「人工知能」とついているかはあまり関係ない
20代 7.2 24.7 29.5 4.8 7.8 25.9
30代 5.4 19.3 40.4 7.2 4.8 22.9
40代 6.6 21.7 37.3 10.8 9.0 14.5
50代 7.8 19.3 47.0 10.2 5.4 10.2
60代 7.2 27.1 41.6 5.4 5.4 13.3
70代以上 5.4 30.1 39.8 8.4 6.0 10.2
全体 6.6 23.7 39.3 7.8 6.4 16.2

(4) AIの活用分野(方法)として適切だと思うもの

  1. ① 「通訳」、「製造」、「介護・福祉」、「運輸」といった分野は他の分野と比較してAIの活用が適切であるとする回答が多かった。一方で、「就職・採用判断」および「芸術」はAIの活用が適切でないとする回答が多かった。
  2. ② 「接客業」については「そう思う」と「ややそう思う」の合計が44.4%、「そう思わない」と「ややそう思う」の合計が41.7%と回答が拮抗する結果となった。

【図表5】 AIの活用分野(方法)として適切だと思うもの(回答者全体)

設問:以下の項目について、あなたはAI(人工知能)の活用分野として適切だと思いますか。

単位:%

  そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない わからない
通訳(あらゆる言語間の同時通訳等) 35.4 39.0 12.2 3.0 10.3
製造(需要予測による材料仕入れなどの最適化) 21.7 42.3 19.0 4.0 13.1
介護・福祉(要介護者や要支援者ののサポート等) 17.0 41.8 21.8 6.9 12.6
運輸(自動・自律運転車の実現等) 18.5 39.9 22.6 5.8 13.3
金融②(自動的な運用による利回りの最大化等) 12.9 37.8 26.6 6.3 16.5
旅客(バス・タクシー・鉄道・船舶等の運転) 13.3 36.6 28.0 8.8 13.3
医療(高度かつ精度の高い診断等) 11.8 37.8 26.4 10.2 13.8
金融①(最適な融資の審査による貸し倒れの回避等) 11.5 36.2 29.0 6.8 16.4
接客業(各種小売店、飲食業の顧客対応等) 8.7 35.7 30.8 10.9 13.8
就職・採用判断(人を採用する際の合否を決める等) 5.7 21.8 33.5 24.4 14.6
芸術(絵画・音楽などの芸術作品を創作する等) 3.3 15.9 32.6 31.0 17.2

(5) AIの活用に対する不安(選択形式)

  1. ① 「雇用の減少」、「AIの人為的操作」、「AIに支配される」、および「想定外のAIの判断」が不安に感じることとして比較的高い回答数を集めた。
  2. ② 「不安を感じることはない」とする回答は70代以上が1.8%、20代が18.7%と対照的であった。70代以上のAIに対する不安は、他の年代に比べて大きいといえる。

【図表6】 AIが活用されることについて、不安に感じること

設問:AI(人工知能)が活用されることについて、不安に感じることはありますか。(複数回答)

単位:%

  20代 30代 40代 50代 60代 70代以上 全体
AIに支配される 34.3 33.1 39.8 34.3 31.3 47.0 36.6
雇用の減少 37.3 42.2 41.6 36.1 37.3 42.2 39.5
AIの示す情報が人為的に操作される 24.1 34.3 32.5 37.3 48.2 56.0 38.8
個人情報の漏洩 28.9 34.9 33.7 33.7 39.2 42.2 35.4
プライバシーの侵害 24.7 31.9 29.5 31.3 39.2 44.0 33.4
生命、身体、財物への危害 18.7 24.1 16.3 19.3 21.1 27.1 21.1
不当な差別 16.9 15.7 16.9 18.7 18.7 25.3 18.7
自身の意思決定が操作される 19.3 22.3 16.3 16.9 24.1 41.0 23.3
想定外のAIの判断で損害が発生 30.7 26.5 32.5 34.9 43.4 50.6 36.4
監視・選別される社会になる 25.3 27.7 27.7 27.1 37.3 52.4 32.9
AIの動作・発言等の決定理由が不明 24.7 23.5 22.3 22.3 32.5 32.5 26.3
その他 0.6 0.6 1.8 0.6 0.6 1.2 0.9
不安に感じることはない 18.7 16.9 10.2 11.4 8.4 1.8 11.2

(6) AIの活用にまつわる倫理的問題

  1. ① いずれのケースにおいても「許容できない」と「どちらかというと許容できない」の回答の合計が4割弱から5割超となっており、やや厳しいスタンスが窺える。
  2. ② 「人物の評価」、「資産運用」、「人を映像で創り出す」に関しては、「許容できる」と「どちらかというと許容できる」の回答の合計が25%を超えている。
  3. ③ 最も倫理的に許容できないとされたケースは、「自動運転車が搭乗者の命を守るために、歩道上の通行人をはねて死亡させた」というもの。

【図表7】 AI技術の活用にまつわる倫理的問題に対する許容度(回答者全体)

設問:以下のAI(人工知能)の活用に関する問題について、あなたの倫理観に基づく許容度をお知らせください。

単位:%

  許容できる どちらかというと許容できる どちらともいえない どちらかというと許容できない 許容できない
受験、就職、結婚、などのケースで、人物の評価をAIが算出し選別を行う 5.4 21.5 35.3 23.1 14.7
資産運用をAIに託したため、運用の経緯の説明は難しいと金融機関に言われた 5.7 20.1 36.8 21.7 15.7
生きているひとや、既に亡くなった人の姿、ふるまいを、AIが映像で創り出す 7.3 20.7 34.8 20.5 16.7
芸術作品の著作者の特徴を踏まえて、AIにより、著作者が創出したような作品を創る 3.5 15.9 30.6 24.9 25.1
自動運転車が搭乗者の命を守るために、歩道上の通行人をはねて死亡させた 5.7 12.8 24.0 19.1 38.5

以上