~安心・安全で快適なエアモビリティ社会の実現に向けて~
「空飛ぶクルマの社会受容性等に関する調査(第4回)」について
2025年06月03日
MS&ADインターリスク総研株式会社
空飛ぶクルマが実現すると答えた消費者は44.1%と低下傾向
市場性と社会受容性双方を高めるための課題とその克服の条件の理解が重要
MS&ADインシュアランス グループのMS&ADインターリスク総研(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮岡拓洋)は、空飛ぶクルマに対する消費者の意識や社会受容性を把握し、商品・サービスの高度化と新たな開発に活かすことを目的に、「空飛ぶクルマの社会受容性等に関する調査(第4回)」を実施しました。
弊社では、2020年9月、2021年8月および2024年2月に、移動に関する様々な課題を解決する次世代モビリティとして期待される空飛ぶクルマに関して調査を実施し、今回2025年2月にも空飛ぶクルマの社会受容性等に関する調査を実施しました。
本調査及び過去調査結果から、空飛ぶクルマが実現すると回答した消費者は年々低下傾向にあることが確認されました。本調査実施前の2024年9月に大阪・関西万博での商用運航からデモフライトへの方針切り替えの発表があり、こういった影響により、空飛ぶクルマの実現に対する懐疑的な意見が増えたためとも考えられます。一方で、空飛ぶクルマに対して期待していることとしては「渋滞のない移動」や「移動時間の短縮」といった回答が多く、過去調査結果同様に交通の利便性向上への期待があることも確認されました。
なお、空飛ぶクルマの実現に向けて国土交通省では、「空の移動革命に向けたロードマップ」に基づき、機体や運航の安全基準、操縦者の技能証明、離着陸場等の基準の整備及び、空飛ぶクルマの初期運航に必要な情報提供・モニタリング等を行うための施設整備等を進めています。
今回の調査結果を踏まえて、弊社はこれまでの次世代モビリティ領域におけるリスクマネジメントに関する知見を活用するとともに、次世代エアモビリティサービスの安全性・社会受容性向上に加え、サービスの普及による地域の様々な課題の解決に貢献していきます。
1. 空飛ぶクルマに関する意識調査
(1) 調査の概要
- ① 調査方法
- :Webによるアンケート
- ② 調査対象
- :15歳~89歳の男女個人
- ③ 回答数
- :2,800人
渋滞や渋滞による公害などの課題解決の手段として期待されていると考えられる大都市圏(グループ①)、大都市からのアクセスや県内でのアクセスの課題解決の手段として期待されていると考えられる地域(グループ②・③)、その他の地域(グループ④)を設定し、各グループ下記の回答数を収集しました。また、性別、年代がほぼ均等となるよう割付を実施しました。
「グループ①」東京都・大阪府在住者:800人、
「グループ②」長野県・大分県在住者:800人、
「グループ③」山梨県・石川県在住者:800人、
「グループ④」上記以外の在住者:400人。 - ④ 実施時期
- :2025年2月
(2) 調査の背景、目的
① 背景
空飛ぶクルマの社会実装に向けて、2018年より「空の移動革命に向けた官民協議会」が設置されました。空飛ぶクルマが重要な政策と位置付けられ、政策や法整備の検討が進められています。また自動車や鉄道のように身近な存在としての日常の移動など居住区近くでの運航の他、中山間地帯や離島での移動、観光(空港や駅から観光地への移動を含む)、災害時の救助など、様々なユースケースも検討されています。
空飛ぶクルマの社会実装には、ネガティブなイメージを持っている人の受容性を高めるための課題とその克服のための条件を見極めることが必要です。そのためには、社会(利用者を含む)がこの新しいモビリティに関する官民等の動きをどう受け止め、何を期待し、何に不安を覚えているのかを理解することが重要です。
② 目的
(ア)日常利用するモビリティに対する不満や期待を明らかにしつつ、空飛ぶクルマに対する期待や不安・課題などを浮き彫りにする。
(イ)空飛ぶクルマに対して、回答者の属性によって異なる意見等を持っているとの仮説のもと、期待や不安・課題などを浮き彫りにする。
【今回考慮した属性】
- (a) 住所(都道府県、郵便番号)
- (b) 性別
- (c) 年齢
- (d) 職業
- (e) 年収
(ウ)過去データと比較し経年変化を把握する。
③ 調査項目
調査項目は以下のとおりとし、計54問の質問を行いました。
- 日常利用するモビリティの課題と期待するソリューション
- 空飛ぶクルマに関する認知度と実現への期待
- 利用者としての期待・不安
- 社会としてのベネフィット・不安
(3) 調査結果の概要
①2025年2月の調査では空飛ぶクルマが実現すると思うと答えた人の割合は44.1%でした。2020年9月の調査は57.8%、2021年8月は53.1%、2024年2月は49.3%となり、徐々に減少していました。(図1)。

図1 空飛ぶクルマの実現可能性
②空飛ぶクルマに対して期待することとして1位の回答は「渋滞のない移動」が最も多い結果となりました。次いで「移動時間の短縮」が多い結果となりました。過去の調査でもこの2項目は多くなっており、空飛ぶクルマの社会実装による日常移動の利便性向上が期待されていることが確認されました(図2)。

図2 空飛ぶクルマに対して期待すること
③職業別に空飛ぶクルマが実現したら利用したいと思うと答えた人の割合が最も多かったのは、「会社役員・経営者」の63.6%であり、次に多かったのは「公務員」の61.0%でした。反対に利用したくないと思うと答えた人の割合が多かったのは、「無職」の56.0%で、専業主婦(夫)が続いていました。本結果より、空飛ぶクルマの利用希望が、職業毎に異なっていることが確認されました(図3)。

図3 空飛ぶクルマの利用意向(職業別)
④利用者以外の(空飛ぶクルマの飛行ルートや離着陸場周辺住民としての)立場において、空飛ぶクルマに対する不安という面では、1番目に多かったのは「墜落した場合の人命、財産に対する甚大な被害」であり、「落下物」がこれに続きました。これらは過去の調査でも同じ結果でした。空飛ぶクルマが墜落したり建物等に衝突しないことや、荷物等を落とさないこと、騒音を出したり犯罪に悪用されたりしないこと等、属性にかかわらず共通の不安を有しているものと考えられます(図4)。

図4 空飛ぶクルマが自宅の上空を飛ぶことに対する不安
(4) まとめ
- ①今回の調査により、利用者を含む社会が、現在の移動手段に対して抱いている不満や課題、空飛ぶクルマに対する期待、不安について地域や属性等の特性を踏まえた結果を示すことができました。
- ②社会受容性の観点からは有事の際のスキームや不安要素についての対策に取り組む必要があることを、明らかにすることができました。
- ③空飛ぶクルマの社会実装に向け、市場性、社会受容性双方を高めるための課題とその克服のための条件を理解し、特に利用者の立場においては、地域、属性等の特性を踏まえた対策を講じる必要があると考えられます。
2. 今後の取組みについて
弊社で過去に実施した調査との比較によって、日本と海外の利用者/社会の意識の差や認知度の差等を分析するとともに、継続的な調査を行うことで、MS&ADインシュアランスグループとして、安心・安全な空飛ぶクルマの社会実装に向けた社会課題の解決に貢献していきます。
調査結果の概要報告書はこちらからダウンロードできます。
以上