コンサルタントコラム

所属
リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ
役職名
マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
下平 庸晴 Tsuneharu Shimodaira

2022年5月2日

安全文化(Safety culture)という言葉は、1986年に発生したチョルノービリ原発事故の事故後検討会議の報告書において初めて使用された。「全てに優先して原子力施設等の安全と防護の問題が取り扱われ、その重要性に相応しい注意が確実に払われるようになっている組織、個人の備えるべき特性および態度が組み合わさったもの」と示されている。

一方、日本国内では深刻な事故災害が発生したことを契機として政府に設置された「事故災害防止安全対策会議」の報告書(1999年)において、安全文化とは「組織と個人が安全を最優先する気風や気質を育てていくこと」が重要であり、国や自治体・事業者などの様々な「組織」と「個人」が安全を確保するための積極的な取り組みを行うことが必要であることが示された。特に「組織」として事業者が取り組むべき安全確保のための対策として「安全な作業マニュアルを策定する」「安全管理に関する専門知識を有する適切な人材を採用し、適正に配置する」などが取り上げられ、事業者とその労働者の安全文化を創造させていくための方法も示された。

当社で行っている安全文化醸成コンサルティングは、安全文化が様々な要素で構成されているという考え方に基づいて、事業者の現状把握と改善提案・改善活動支援を実施している。この要素は安全文化の8軸といい、組織統率、責任関与、相互理解、危険認知、学習伝承、作業管理、資源管理、動機づけ、で構成されたものである。現状把握の段階においてインタビューを実施することがある。この際に「労働災害」の背後要因となりうる事項として「守らないといけないルールを飛ばしてしまうことがある」「上司から安全にかかわるアドバイスがない」というような意見を聞くことがある。これらは「安全な作業マニュアルを策定」していても起こりうることであり、その組織に安全を優先していない気風や気質が存在している可能性を指摘することができる。管理者側の立場としては「安全最優先の行動はそもそも自分のためであるのでやって当然」と考える一方で、安全を優先していない気風や気質を組織メンバーが認識できていない、または納得できていない状況となっている場合である。このようなときには気風や気質を変化させていくことが必要であり、①自分たちの組織の気風や気質の現状を知る(注:前記のように外部組織がインタビューして見つける方法もあるが、組織の全員でディスカッションして見つけることもできる)、②組織の全員が気風や気質の現状を納得したうえで望ましい気風や気質を作る具体的な方法を考える、③考えた方法を実行する、などを行う必要がある。

「組織メンバーのケガの発生がつづいている」「安全のためにいろいろな取り組みを進めているが組織メンバーの行動が変わらない」というようなことがあれば、組織メンバーの時間を確保したうえで、安全にかかわる気風や気質を変化させること、すなわち安全文化の醸成についてディスカッションしてみるのはいかがだろうか。

以上

(2022年4月21日 三友新聞掲載記事を転載)

下平 庸晴 Tsuneharu Shimodaira
氏名
下平 庸晴 Tsuneharu Shimodaira
役職
リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ マネジャー・上席コンサルタント
専門領域
安全文化の醸成に関するコンサルティング
  • 安全文化診断、安全活動導入支援
  • 安全に関する教育
  • 機能安全

コラムカテゴリー