コンサルタントコラム

所属
リスクマネジメント第三部 製品安全グループ
役職名
主任コンサルタント
執筆者名
鶴田 彬 Akira Tsuruta

2022年1月25日

他の製品と混ぜて使わないでください―。自社製品とはまったく無関係の美容液を混ぜ合わせて使うとシミが消えるとうたうネット広告が出回っていたことを踏まえ、あるスキンケア用品メーカーの公式SNSがこのような投稿を行った。大手ニュースサイトなどでも取り上げられたため、目にした読者も多いのではないかと思われる。

この事例に限らず、電気ケトルに卵を入れて調理する方法、シールを剥がすための剥離剤で害虫を駆除する裏技など、メーカーの本来の意図から外れていると思しき使用方法がネット上に流布している場合がみられる。これに対し、メーカーはどう対処すべきであろうか。

メーカーは安全性が担保された製品を市場に供給する責任を負っている。ここにおける安全は、その製品本来の使用方法のみならず、使用者がメーカーの想定しない使い方をする場合も考慮し、実現されなければならない。ただ、製品を市場に流通させる前の段階で、消費者がとりうるあらゆる使用方法を検討し尽くすことは難しい。そのため、メーカーは市場において自社製品がどのように使われているかを継続的に監視し、想定外の使われ方がされていないかチェックすることが求められる。もし、そのような使用を察知した場合は、それによって生じるリスクの大きさを踏まえ、消費者への注意喚起や製品改良などにより、適切な形でリスク低減を図らなければならない。

インターネットの普及以前もメーカーの想定しない使用方法が流布されるケースはあったが、現在ではSNSや動画サイトなどを通じて、誰でも簡単にこうした情報を受発信できる世の中になっている。そのため、メーカーとしてはネット上において自社製品に関しどのような投稿が行われているか監視する必要が著しく高まっている。特定の投稿を検知するツールの活用や、モニタリング業者からの通知により、意図しない安全でない使用方法が発信されていることを把握した場合は、そうした情報を受信している層に対しメッセージが伝わるよう、手段を選んで注意喚起を行う必要がある。SNS上で情報が広がっているケースにおいては、自社ウェブサイトで注意を呼び掛けるより、SNSへ投稿した方が伝わる可能性はより高い。また、訴求力の高いいわゆるインフルエンサーに発信を依頼することも有効と考えられる。数年前、キャンディに似た洗濯用洗剤を食べるという悪ふざけが米国の若者を中心に動画サイトで広がり、これを真似たことによる中毒事故が相次いだことがある。その際、洗剤メーカーは、若者に影響力のあるスポーツ選手に危険な遊びを止めるよう訴える動画を発信してもらうことで、事態の鎮静化につなげている。

一方で、自社では想定が及ばなかった意図しない使用方法の情報は、そうした使用がされることを織り込んだ製品設計としたり、取扱説明書やパッケージに注意表記を設けることで、より安全な製品への改良につなげることも可能である。見方を変えれば、ネットで広がる誤った使用方法も、貴重な情報と位置付けることができるのではないだろうか。

メーカーとしては今後さらにネット上での自社製品の使われ方に関する情報に注目し、必要に応じて注意喚起や製品改良を行うことで、製品安全の実現を図っていくことが求められる

以上

(2022年1月20日 三友新聞掲載記事を転載)

鶴田 彬 Akira Tsuruta
氏名
鶴田 彬 Akira Tsuruta
役職
リスクマネジメント第三部 製品安全グループ 主任コンサルタント
専門領域
製品安全・食品安全・製造物責任対策/航空機・鉄道等の防火性能に関する海外規格/通訳・翻訳(日英)

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