コンサルタントコラム

所属
リスクマネジメント第三部 統合リスクマネジメントグループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
加藤 壮 So Kato

2020年8月3日

新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の世界的感染拡大が止まらない。緊急事態宣言により一時終息に向かいかけた日本では感染が再拡大している。一方、海外では各国で日本とは比較にならない数の感染者・死者が発生し終息のめども立っていない。COVID-19は人の命を奪いながら経済・社会活動を麻痺させ、これまで構築してきた社会の仕組みや価値観を急速に変容させ、世界をニューノーマル(新たな常態)へ移行させている。このような不確実性が高まった世界において、企業が持続可能性を高め価値を創造していくためにはどうすればよいか。その重要なヒントがERM(全社的リスクマネジメント)という取り組みにある。

ERM(Enterprise Risk Management、全社的リスクマネジメント)は、企業の事業目標の達成を阻害するあらゆる「不確実な事象」をとらえ、それらを経営が認識し経営判断に組み込んで管理するリスクマネジメントの取り組みである。従来のリスクマネジメントが、組織内の事故や損失の予防、再発の防止、危機管理(危機発生時の適切な対応)に主眼を置いたものであったのに対し、ERMは組織外・組織内の環境変化を幅広くとらえ、中長期的な視点で自社の事業目標達成を脅かす事象へ対処することを志向したハイレベルなリスクマネジメントである。近年、気候変動、国際関係の変化、新技術の台頭、社会的価値観の変化など事業を取り巻く環境変化が著しいことからERMを取り入れ実践しようとする企業が増えているが、COVID-19によってもたらされた不確実性に対処するためにも、極めて重要であり、かつ有効な取り組みである。

COVID-19をERMで捉える場合、以下3つの側面で課題を整理することが重要となる。

  1. ① 業務遂行環境の変化に伴って高まっている従来から存在する潜在的なリスク(情報漏えい、サイバー攻撃、社員不祥事、ハラスメント、苦情、労災、労働争議 等)に適切に対処できるか
  2. ② 人々の行動様式や価値観の変化に伴い、これまでの自社事業が提供していた価値が毀損されないか
  3. ③ その変化に対して新しい価値を提供することはできるか

(詳細は弊社発行の機関誌「RM FOCUS74号」(PDF:10,340KB)にて解説)

リモートワークが拡大したことによって情報漏えいリスクが高まったように、COVID-19による就労環境の変化は様々な従来からの潜在的リスクを高めている。まずはそのようなリスクに足元をすくわれないよう、適切に対処することが重要である。また、人々の行動様式や価値観の変化によりこれまで必要とされていたものが不要となる(または必要となる)、といった変化が起きている。これらの変化を的確に捉え、自社事業が今後も持続可能なのか、新たな価値を提供できないか、ということを考え対処することが重要である。

COVID-19を踏まえ、社内感染予防策や感染者発生時の対応手順の準備などの喫緊の対策を講じた企業は多いが、それに終始していてはCOVID-19による環境変化の中で生き残り、価値を創造していくことは難しくなるだろう。COVID-19による事業環境変化に合わせ自社を適切に進化させていくためにも、ERMは必要不可欠な取り組みであると言える。

以上

(2020年7月30日 三友新聞掲載記事を転載)

加藤 壮 So Kato
氏名
加藤 壮 So Kato
役職
リスクマネジメント第三部 統合リスクマネジメントグループ 上席コンサルタント
専門領域
リスクマネジメント、危機管理、BCM、CSR、コンプライアンス、CS・苦情、ハラスメント 他

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