コンサルタントコラム

所属
リスクマネジメント第三部 製品安全グループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
吉田 利秀 Toshihide Yoshida

2020年2月27日

農産物を取り巻く最近の動向として、農産物生産者のGAP(Good Agricultural Practice)への取り組みが注目されている。

GAPとは、農場経営者が「食品安全」、「環境保全」、「労働安全」、「人権・福祉に配慮した労務管理」を実現することにより、持続可能な農業を実現することを目指した取り組みである。

大手スーパー等の小売事業者や消費者は、農産物生産者に対し、農産物の安全はもちろんのこと、「環境へ十分に配慮して生産しているか」、「作業者の人権や安全に対して十分な配慮がされているか」、「農場の経営は健全になされているか」といった「見えない価値」にも関心を高めている。大手スーパーの青果物売り場等で「GAP認証を受けた農場から仕入れている」との宣伝をご覧になったことがある読者もいらっしゃると思うが、小売事業者等が生産者を選別する基準として、GAP認証を受けているかどうかが重要な要素となることがある。

GAPにはGLOBALG.A.P.、ASIAGAP、JGAP、各自治体のGAPなどさまざまな種類があり、「食品安全」、「環境保全」、「労働安全」、「人権保護」などの観点からの要求事項(管理点)がそれぞれ設定されている(要求事項はGAPの種類にもよるが、100~200個程度設定されている)。要求事項を満たしていれば運営主体が認証をする。一般財団法人日本GAP協会などのほか、各自治体でも独自に運営をしている。

国はGAPの普及促進に力を入れている。例えば、内閣府主導による「未来投資戦略2018」においては、農産物の輸出等でGAPを戦略的に活用することを謳っている。また、各自治体では独自のネーミングを付けた認証制度を設け、農場経営者への普及に努めている。

GAPで求められていることは、決して難しいことではない。作業工程における農産物等への汚染や労働災害等のリスクを洗い出し、リスクの低減策を図る、周囲の環境に配慮した行動をとる、労働者の人権を守る、といった観点から設定した管理ポイントを経営者等が適切に管理し、記録を残す、というしくみを農場内で定着させましょう、という趣旨である。

先般、筆者はある県の「GAP推進大会」に参加する機会があり、GAPを導入した農場経営者の講演を拝聴した。講演では「導入してよかったこと」として、「農場内で起こる可能性のある事故や、農産物に与える可能性のある危害が整理され、対策として何をしたらよいのかが明確になった」、「作業者が清潔さに気を遣うようになった」、「作業場が整理整頓された」、「肥料や農薬の在庫管理が適正に行われるようになり、無駄が減った」等を挙げていた。

なにより、「農場全体がきれいになったので、お取引先の見学をいつでも受け入れられ、よいイメージを持って帰っていただける」との意見が印象的であった。

このように生産者はGAPを活用するなどして、よりよい農産物の提供を目指しているところもある。

スーパーなどで農産物を手に取る機会があったら、店頭に出回るまでの生産者の工夫や努力に思いをはせてみてはいかがだろうか。

以上

(2020年2月20日 三友新聞掲載記事を転載)

吉田 利秀 Toshihide Yoshida
氏名
吉田 利秀 Toshihide Yoshida
役職
リスクマネジメント第三部 製品安全グループ 上席コンサルタント
専門領域
食品安全/製品安全