コンサルタントコラム

仕事と介護の両立とその備え

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
福祉施設、福祉事業者におけるリスクマネジメント
役職名
リスクマネジメント第四部 事業継続マネジメント第二グループ 福祉医療戦略ユニット 上席コンサルタント
執筆者名
岡本 慎一 Shinichi Okamoto

2019.9.11

介護離職者は「年間10万人」、「40代から急増」、「4人に1人が課長クラス以上の役職」となっており、働き盛りのミドルクラスの離職が増幅することは、企業としても大きな損失となる。2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、団塊世代のジュニア層が親の介護の課題に直面する。

法改正により仕事と介護の両立に関する支援策を充実させている企業は増えているが、社内制度が整備されても、その周知がまだまだ十分でないことが、弊社のアンケートからも明らかとなっている。

介護はどこか他人事であるイメージがあるが、年齢が高くなると介護が必要な方が急増し、80~84歳では、4人に1人が何らかの支援・介護が必要な状況である。つまり、夫婦の両親4人のうち、誰かは介護が必要になる可能性があり、介護に直面するリスクはひとごとではない。また、脳卒中や骨折、転倒などである日突然始まる介護が全体の約4割となっている。

そのため、突然の介護に備えるために事前に介護に関する知識を幅広く得ておくことや、親の希望を聞いておくことが必要である。特に、仕事と介護を両立するためには、介護に直面しても、「ひとりで悩まない!ひとりで抱え込まない!」という心構えを持ち続けることが大切である。“餅は餅屋”という諺があるように身近な介護プロの相談先として「地域包括支援センター」や「ケアマネージャー」の存在を知っておくことも大切である。

そして、介護で離職された方は精神面・体力面・経済面、そのすべてにおいて、離職後の方が負担感が増加する傾向にあり、離職しなければよかったと後悔されている方が多い。介護に直面した場合でも、簡単に離職せず、仕事と介護の両立をまず考えていくことが必要である。そのためには、介護休業や介護休暇を自らが介護するための期間ではなく「介護できる環境を整えて職場に復帰する、もしくは突発的な介護に備える」ための期間として利用しながら、公的介護サービスを活用し「自分ひとりで介護しすぎないこと」が大切である。

さらに、介護にかかる費用は、居宅介護の場合で平均毎月8万円・年間100万円、初期費用100万円が発生するというデータがある。弊社グループ保険会社の団体制度には親の介護を補償するいわゆる「親介護補償プラン」がラインナップとして用意されている。このプランは、同居・別居に問わず従業員と配偶者の両親が公的介護保険の一定以上の要介護状態になった場合に、一時金や年金が支払われるものであり、従業員が両親の介護リスクに備えるための金銭的な後ろ盾としての有効である。

介護は今のところ自分は関係ないとか、介護に直面した場合に何をしたらいいかわからない、といった従業員を対象に、企業が仕事と介護の両立に関わる支援策を周知するために、定期的なセミナーを開催することが有効である。このような取り組みは、従業員が介護に直面した時のみならず、プライベートで何かあった場合でも、まずは会社や上司に相談してみようという気持ちや行動につながり、従業員のモチベーション維持・向上に効果があると考える。

以上

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