コンサルタントコラム

安全と危険を意識した運転

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
交通リスクマネジメント
役職名
リスクマネジメント第二部 交通リスク第二グループ 名古屋事務所 マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
牧野 哲三 Tetsuzo Makino

2019.7.8

このところ、痛ましい交通事故が相次いで発生している。東京・池袋をはじめとする高齢運転者による事故、滋賀県・大津市で起きた園児・保育士を巻き込んだ事故等の大惨事で、歩行者等の命がいとも簡単に奪われてしまった。これらの悲報に触れて感じるのは、「どうすればこのような事故を防止できたのか?」ということと、「どうすれば回避できたのか?」ということである。本稿では、交通事故に関して、防止と回避のために重要なポイントのうち、安全と危険を意識することの重要性について考えてみたい。

交通事故防止に関して、最初に言えることは、運転には危険が付き物であり、それ故に安全運転は難しいということである。交通事故は、多くの場合、運転する人のミスやエラーが原因で発生するといわれている。そのミスを起こさない為には、安全運転をしようとする意識(以下、「安全意識」)を持つことが非常に重要になってくる。ただ、最近感じることは、安全意識を維持することの難しさである。運転に対する良い意味の慣れは貴重な経験として活かされるが、悪い意味の慣れは、安全意識を低下させ、運転に油断や不注意等の一瞬の隙を生じさせ危険を増幅させる。今まで長い間無事故であっても、その運転が完璧な安全運転とは限らず、これから先も無事故である保証はない。今まで無事故であった運転でも、一瞬の隙が加わると事故に繋がり易くなる。安全運転をするためには、常に安全意識を持って、慣れ等からくる油断を排除し、一瞬の隙を作らず運転することが必要である。そうすれば、より安全な運転ができるはずである。

一方で、交通事故を回避するということは、防止することよりはるかに難しい。なぜなら、自分以外の人や車等の特性を良く知り、そこから生じるであろう危険を意識し、具体的に予測することが必要で、かつ、交通の状況を良く観察し、適切な判断をしなければ回避することができないからである。更に、これらの予測・判断を運転中常に行ない、その対応準備をしていなければ、万が一の事態に対応することができなくなる。運転中にすべきことは多く、これらを完璧にこなすことは、非常に難しい。従って、事故を回避するコツは、まず、速度を落とし、車間距離を取ってゆとりを持つことである。その上で、運転中は様々なところで様々な危険が生まれ、自分に係わってくるかもしれないと悲観的に、かつできる限り具体的に予測して、早めに対応準備をしながら運転することである。

最近、安全意識を高め、定着させるために、お奨めしていることがある。著名なスポーツ選手の多くがしているように、自分なりのルーティンを行い、意識と集中力を高めることである。例えば、大切な人の写真を見る、安全運転を具体的にイメージする、事故の現場を想像する等自分の安全意識を高めることをしてから運転を始めるのである。安全意識を高めてから運転すれば、車を運転する際の危険と事故があった際の被害の大きさ、そして安全運転の必要性をより強く意識しながら運転することができ、自分以外に起因する様々な危険に気づいて回避することにも有効であろう。これからも、機会がある毎に、安全と危険を意識することの重要性、一瞬の隙を作らず、防止と回避をすることの大切さをしっかり伝えていきたい。

以上

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