コンサルタントコラム

SDGsをリスクマネジメントの視点で考える

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
CSR、リスクマネジメント、危機管理、海外危機管理、コンプライアンス、CS・苦情、BCP、ハラスメント 他
役職名
リスクマネジメント第三部 統合リスクマネジメントグループ 上席コンサルタント
執筆者名
加藤 壮 So Kato

2018.7.23

SDGs(エスディージーズ)というキーワードを、ここ最近よく耳にするようになったという方は多いのではないだろうか。「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」とは、国際社会の持続的な発展を阻害する様々な環境・社会的課題を克服すべく、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットを掲げたものである。2015年に国連で採択され、国連加盟国193か国がその達成のために様々な取り組みを開始している。国内でも17色のカラフルなアイコンが掲示された企業広告やSDGsバッジをつけた方をお見かけする機会も増え、かなり身近なものになりつつある印象だ。このようにSDGsの認知・活動の幅が広がっていることは、社会にとってプラスであることは間違いない。

一方で、SDGsが企業に対して重大なリスクテーマを投げかけていることも無視できない。SDGsで掲げられた目標を達成できなければ、社会の持続可能性が損なわれる可能性が大きい。それはとりもなおさず、企業の事業活動の基盤が損なわれることにもなりうる。例えば目標13「気候変動に具体的な対策を」をいつまでも達成しなければ、企業は常に巨大化する自然災害リスクに曝されることになるかもしれない。つまり、SDGsの目標達成に貢献しないことは、企業自体の持続可能性にも関わってくるのである。ましてや近年、SDGsと密接に関係するESG投資の普及により、SDGsの目標達成に貢献しない(または阻害すると見られがちな)業種・企業への投資を控える動きが活発化している。企業は、社会の持続可能性と同時に自社の事業の持続可能性を確保するために、どう貢献できるのか、事業を通じて目標達成を阻害していないか、といったことを真剣に検証しなければならない状況にある。

そこで、リスクマネジメントの観点でSDGsを捉えることが重要となる。リスクマネジメントの本質は、社内・社外の環境変化を捉え、自社の目標を達成するための機会や損失発生の可能性を把握し、必要な対策を講じることにある。
SDGsの目標達成に向けた世界の変化を把握し、それに伴う自社のリスクは何か?―どのようなチャンスがあるのか?どのような損失の発生が想定されるか?自社のみならずサプライチェーン全体ではどうか?―を検証し、経営戦略に落とし込んでいくことが重要となる。

しかしながら、企業においてはSDGs、リスクマネジメント、経営企画を所管する部署がバラバラで、それぞれの意思決定・取組が有機的に連携しているとは必ずしも言い難いケースがしばしば見られる。万が一にでも、SDGsを「企業価値向上のためのPR材料」と認識しているだけであれば、自社の将来を危ぶませる重大なリスクを見落としてしまっているかもしれない。リスクマネジメントの視点でSDGsに伴う社会変化を適切に捉え、経営戦略に反映させていくことこそが、企業、ひいては社会の持続可能性を高めることに寄与するのだ。

以上

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