コンサルタントコラム

所属
リスクマネジメント第一部 災害リスクグループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
長谷川 幹 Kan Hasegawa

2018年6月5日

企業は東日本大震災や熊本地震での被災状況を目の当たりにし、大規模地震に備えた設備投資やBCP(事業継続計画)策定などの取り組みを更に進めていると感じる。これらの対策は地震による事業への影響を小さくし、その後の復旧を早める効果が期待できる。
一方、地震後にも企業の活力を維持するためには物的対策や仕組みづくりに加え、復旧・復興の原動力となる従業員や家族の被害を一層低減させるよう意識すべきである。従業員・家族への被害を低減させる取り組みとして下記の2点を紹介する。

1.従業員の地震時行動基準の策定・周知

地震発生後の初動対応では、緊急対策本部などの限られた人員で多数の従業員の安否確認や帰宅困難者対応などを実施することになる。時間も人員も限られる中で従業員の人的被害を防ぐには、従業員全員が自発的に適切な行動をとれるよう準備したい。
そのためには、地震発生時の身の守り方や救急・救護の知識、安否確認の方法、帰宅ルールなどを記載した地震発生時の行動基準を策定することが有効である。

また、発災時に従業員が必ずしも基準どおりに行動するとは限らないことに注意を要する。例えば、現在は帰宅困難者対策上、発災直後は無理に帰宅せず社内など安全な場所で待機することが推奨されている。しかし、従業員が事前にこのルールを知らない、または納得していない場合、自宅や家族が心配になり無理をしてでも徒歩で帰宅してしまうケースがある。
従業員には、行動基準の内容を納得して受け入れてもらえるよう、研修などを通じて行動基準に従わない場合のリスクやデメリットについて周知したり、地震時の初動対応に即した行動訓練(その場での安全確保、建物内待機、安否・所在の確認など)を実施したりするのが有効である。

2.家庭での防災の推進

従業員にとって就業時間は1か月の4分の1程度であり、多くの時間を自宅など社外で過ごしている。すなわち、従業員は社内で被災する可能性より自宅などの社外で被災する可能性の方が高く、地震による従業員への被害を低減するためには各従業員が自主的に家庭での防災に取り組むことが必要である。
家庭でできる地震対策として、家具・家電の固定や備蓄品の準備、家族の安否確認手段の準備など、国や自治体、各企業等から多くの知識・情報が出されている。一方、各家庭では「忙しい」「面倒だ」「お金がかかる」といった理由から対策が十分進んでいないのが実情である。

各企業としては、各従業員が家庭での防災に取り組むきっかけを作ることが大切となる。具体的にはメール連絡やチラシ配布、研修やセミナー、防災体験会などを通じて地震防災についての認知度とやる気を高め、家庭でその情報や体験を共有する機会を創出することが挙げられる。
特に、家庭での防災を進めるには家族の協力が必須となることに注意する。家庭での話題に上りやすいよう、わかりやすく、身近な情報ツールを提供したり、つい誰かに話したくなるような地震体験・防災体験を企画したりするのが有効である。

以上

(2018年5月24日 三友新聞掲載記事を転載)

長谷川 幹 Kan Hasegawa
氏名
長谷川 幹 Kan Hasegawa
役職
リスクマネジメント第一部 災害リスクループ 上席コンサルタント
専門領域
自然災害(地震、風災、雪災、水災)RMコンサルティング
自然災害(地震、風災、雪災、水災)リスクサーベイ
自然災害リスク定量化
不動産デューデリジェンス(エンジニアリングレポート作成)