コンサルタントコラム

所属
インターリスクアジアタイランド
役職名
アシスタントマネジャー
執筆者名
佐藤 公紀 Masaki Sato

2018年4月24日

この3月でタイに駐在して2年が経過した。着任してから特に大きな病気やけがをすることもなく、危険な状況に遭遇することもなく平穏無事に暮らしているが、リスクコンサルティングに従事する者として日常生活で最も危惧しているリスクは交通事故である。幸いにも自らが巻き込まれたことは一度もないが、自動車同士の衝突・追突事故、自動車とバイクの接触事故などを目撃した経験はこの2年間で優に20回を超えている。

2015年にWHOが公表したデータによれば、タイにおける人口10万人あたりの交通事故による死亡者数は36.2人であり、世界で2番目にランキングされていた。余談になるが、この記事を執筆するにあたってWHOの最新データ(2017年度版)を確認したところ、同国の人口10万人あたりの死亡者数は19.6人に激減している。WHOが公表している交通事故死亡者数は、各国の死亡原因に関する統計データの信頼性に応じて独自の補正をかけており、タイに関しては、2015年度版は「補正あり」、2017年度版は「補正なし」となったため、死亡者数の推計が大きく変わったようである。タイ国の報告による交通事故死亡者数としてWHOが採用している数値は、2015年が13,650人(補正前)、2017年が12,492人であり、大きな差はない。日本における交通事故死亡者数は、警察庁の公表によれば2017年は過去最少の3,694人であり、タイは単純な死亡者数の比較でおよそ3.4倍、人口の違いを考慮するとおよそ7倍近く交通事故によって死亡するリスクが高いと言える。

タイの交通事故にはいくつかの特徴があるが、その一つがバイクによる死亡者数の割合が極めて高いことである。WHOのデータによれば、タイのバイクによる交通事故死亡者の割合は69.7%であり世界第二位となっている。これは、通勤等でのバイクの使用率が高いことや、ヘルメットの装着率が低い(WHOのデータでは27%)など、安全運転に対する意識が低いことも一因として考えられる。バンコクの街中でもバイクの二人乗り(時には三人乗り)を頻繁に見かけるが、運転者以外がヘルメットを装着していることはほとんどない。また、地方都市では、明らかに小学校高学年ぐらいの児童が学校の制服を着てヘルメットなしで運転しているバイクに、筆者の乗っている車が追い抜かされたこともある。

年末年始(12月、1月)と4月に発生件数が多くなることも、タイにおける交通事故の特徴として挙げられる。12月、1月はNew Year Festival、4月はSongkran Festival(水掛け祭り)が全土で開催され、この時期は飲酒運転による事故や20歳未満の若者が犠牲になる事故が多くなる。

これらの交通事故に関する現状を踏まえ、タイ政府は2020年までに交通事故による死亡者数を2010年比で半減することを目標に掲げ、ヘルメットの着用推進、飲酒運転対策など、八つの取り組みを推進している。ヘルメットの着用や飲酒運転の削減、スピード低減などは、日本においても1980~2000年代にかけて規制や取締りが繰り返し強化されてきた部分であり、実際に日本の交通事故死亡者数は減少していることから、タイにおいても交通事故による死亡者数削減への効果が期待されるところである。

以上

(2018年4月19日 三友新聞掲載記事を転載)

佐藤 公紀 Masaki Sato
氏名
佐藤 公紀 Masaki Sato
役職
インターリスクアジアタイランド アシスタントマネジャー
専門領域
海外リスクマネジメント