コンサルタントコラム

注目される気候変動に対する企業取組~国連グローバルコンパクトへの参加~

所属
事業リスクマネジメント部 環境グループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
寺田 祐 Yu Terada

2015年12月8日

企業の気候変動に対する取組が改めて注目されている。本稿では10月29日に韓国ソウルで開催された「国連グローバルコンパクト(GC)・第7回日中韓ラウンドテーブル会議」において、MS&ADインシュアランス・グループ(以下「当グループ」)の気候変動取組の発表の模様を簡単に紹介する(同ラウンドテーブルの解説は下記<参考>をご参照)。なお、今回は環境分野の調査・コンサルティングを行っているインターリスク総研から私が当グループを代表して発表を行った。

現在、気候変動をめぐる国際的な枠組みの構築が大きな局面を迎えている。今年9月国連サミットで採択された新開発目標(SDGs)では、気候変動対策も目標の一つとされた。また、今年11月30日から12月11日まで開催される気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、中国、アメリカなど全ての主要国が責任あるかたちで参加する温暖化対策の枠組みが合意されるかが大きな関心を呼んでいる。

このような背景のもと、今回のラウンドテーブルでは日中韓の企業や学術関係者などが集まり、気候変動を含む将来の地球的課題に企業取組のあり方について発表及び意見交換が行われた。「気候変動と官民連携」のセッションでは、当グループが会員企業の日本代表としてその取り組み方針と具体的な取り組み事例を紹介する機会を得た。

発表の中で、当グループでは、保険事業やリスクコンサルティング・サービスを通じて「活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支える」ことをCSR方針としている点を強調。その上で、気候変動に伴う水災などの自然災害リスクに対する適応策やCO2排出量削減に向けた緩和策について、官民連携の取り組みを紹介した。

適応の貢献事例の一つとして、世界銀行グループの国際開発協会(IDA)とのデリバティブ取引を通して、太平洋島嶼国に一定規模の自然災害が発生した場合に復興資金を提供する「太平洋自然災害リスク保険パイロット・プログラム」への三井住友海上火災保険株式会社の参画を説明。また、宮城県が東日本大震災の経験や教訓をもとに作成した「みやぎ企業BCP(事業継続計画)策定ガイドライン(みやぎモデル)」の制作を支援した実績や、2015年3月に開催された「第3回国連防災世界会議」のパブリックフォーラムにおいて、宮城県と共催で体験型イベントを出展したことを紹介した。

気候変動取組に対する国際的な注目が高まる中、国際的なプラットフォームを通じて他国企業の動向について情報収集・意見交換を行い取り組みをさらに深化させていくこと、積極的に自社の取り組みを情報発信し企業としての信用を得ることがますます重要になる。

当グループは今年6月に国連責任投資原則(PRI)に署名、また8月にはグループの財務情報と非財務情報を統合的に関連付けて初の統合報告書を発行した。今回の会合を通じて、今後もCSR課題に積極的に取り組んでいく必要性を強く感じた。

参考

国連グローバルコンパクト

2000年7月に発足した持続可能性と責任あるビジネスを約束する企業の政策形成のプラットフォームであると同時に実践的な枠組み。

日中韓ラウンドテーブル

2009年から中国、韓国、日本のローカルネットワークが連携し、毎年各国も持ち回りで学生・アカデミア・ビジネス3領域の合同シンポジウム開催。各国の連携強化、CSR推進における企業とアカデミアネットワークの構築等を目的としている。

以上

(2015年12月3日 三友新聞掲載記事を転載)

寺田 祐 Yu Terada
氏名
寺田 祐 Yu Terada
役職
事業リスクマネジメント部 環境グループ 上席コンサルタント
専門領域
■環境マネジメントシステム、環境リスク
■海外の公共セクター・プロジェクト管理(調達監理)

コラムカテゴリー