コンサルタントコラム

多発する製品安全問題に思うこと

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
製造物責任(PL)・リコール・製品安全等に関して講演実績多数/海外製造物責任委員会委員(日本機械輸出組合)/「諸外国のPL制度に関する調査」(日本機械輸出組合)/実践リスクマネジメント第三版「雇用慣行」編著(経済法令研究会)/「米国連邦PL関連法制定の行方」(『リサーチビュー』2006年8月)他
役職名
コンサルティング第一部 上席コンサルタント
執筆者名
岸本 明人 Akito Kishimoto

2008.4.1

製品安全に関して、日常生活で馴染みがある製品の不具合や回収の情報が頻繁に報道されている。消費生活用製品安全法の改正により一般消費財の事故報告制度が創設され、多くの事故が製造業者などから報告されることに伴い、リコール件数も急増するという変化が短期間に起こった。食品安全については、中国製食品の安全問題が“問題"となり、国内企業による偽装事件が後をたたないことより、農水省や厚労省などが規制の適用を見直すこととなる。

海外においても製品安全行政の動きは活発であり、米国では、CPSC(消費者製品安全委員会)やFDA(食品医薬品局)などの規制機関は権限強化され、各国の事故情報交換制度作りのイニシアティブをとって推進している。欧州においては、EUでRAPEX(製品安全情報の早期警戒システム)が、EU各国の消費者へ製品安全情報を早期に伝え、警告することを実現している。中国においては、品質検査・リコール制度の対象を自動車だけでなく、食品や玩具などの分野まで拡げ輸出品の品質を高めるように努めている。

国民生活を脅かす安全問題への対処として、日本の製品安全行政が急ピッチで制度改正を行ってきたことは、製品品質についての日本製造業の神話の失墜が叫ばれて久しい今日、再び、良品質の日本製品の復活につながるのであろうか。製造コストの格差により、多くの日本企業が中国を中心にアジア諸国での海外生産に切り替えている中、製品販売後の事故報告・処理面での厳しい規制は、製品品質を高く維持することとなってくるだろう。製品は特定の地域だけではなく、世界を市場とすることが多くなっている現在、各国での製品事故処理を統一して系統立てて適切な対処を行うと同時に、設計や製造だけでなく、販売方法まで統一した安全思想で貫かれた製品提供が必要となってきている。

もはや価格での競争力では太刀打ちできない日本の製造業は、品質を中心とした製品開発で世界に抗していくことになるという構造の中、安全を提供する設計・製造・販売・保守の一貫システムにて再び世界の製造業における地位を確立できる可能性はないだろうか。
そのためには、製品安全実現のためのリスク発見・分析・対策の手法の確立、適用は必須の事項となろう。

製品安全のリスクマネジメントについては、様々なレベルで企業のお手伝いをさせていただいているが、常に、日本のみならずワールドワイドで、製品安全を取巻く新しいリスク環境に添った提案を心がける一方で、過去の取組みが形骸化していないか、組織運営やルールが正しく機能しているか、機能するような指揮命令系統ができているかといった点にも気を配っている。しっかりした社内組織と安全認識がなければ、対策の実効性は上がらないからである。

以上

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