コンサルタントコラム

事業継続管理(BCM)~企業存続の生命線を守れ~

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
事業継続管理/総合的リスクマネジメント・プログラムの設計と運営/リスクファイナンシング
役職名
総合リスクマネジメント部 上席コンサルタント(BCI日本支部代表)
執筆者名
篠原 雅道 Masamichi Shinohara

2008.4.1

地震・風水災や火災・爆発事故、さらにはSARSや炭素菌テロなど企業の存続を脅かすリスクの多様化・複雑化が時代と共に進展している。そしてその影響は高速でかつ広域・深刻に広がるという特性も持っている。また、最近ではサプライチェーンの拡大により、原材料調達企業や納入先企業の事故といった思わぬ原因から企業が存続の危機に立たされるケースも見られるなど、『事業継続』への関心は高まらざるを得ない状況である。

事業継続管理(BCM)は、「企業経営者が、個々の事業形態・特性などを考えた上で、企業存続の生命線である『事業継続』を死守するためのマネジメント手法」と定義されている。つまり、事故や災害が発生した際に、「いかにして事業を継続させるか」もしくは「いかにして目標復旧時間内に事業を再開させるか」について、あらゆる観点から対策を講じることと言ってもよい。以前から欧米企業を中心に経営管理手法として行われてきていたが、特に3年前の米国同時多発テロ以来、世界的企業の多くがその取組みを強化しており、今日ではリスク管理の中心的課題になっている。また、日本においても全社的な取組みを開始する企業が増えていることが注目される。

通常、事業継続管理は三つの手順を踏む。一つ目は、ビジネスプロセスの脆弱性や相互依存関係などを分析してボトルネックの特定を行う。このボトルネックの特定は事業継続において非常に重要な要素で、これと併せて目標復旧時間を設定する。このフェーズをビジネスインパクト分析と呼ぶ。そして二つ目の手順は、分析結果をもとに当該企業の状況に応じた事業継続計画を策定し、最後に、この計画の効果検証・継続的改善を行う。

事業継続管理の世界標準化も始まっている。事業継続管理に関する世界的な団体であるBCI(Business Continuity Institute)のガイドラインが英国規格協会(BSI)より、PAS(一般仕様書)56として発行された。2005年中頃には世界標準化の方向性について結論が出ると言われている。またBCIの調査によると、事業継続管理は、既に取引先の選別基準として活用され始めており、日本企業の中にも取引先選別の一つの基準として活用を開始している企業がある。BCIの日本での活動は、BCIの活動に賛同する企業・機関8社が結集したBCIジャパンアライアンスの設立とともに今年2月から始まった。同アライアンスは日本で事業継続管理を専門とする初めての団体で、企業、官公庁、大学などの研究機関への普及啓発活動や調査・研究、標準化の推進等を行い、事業継続管理の重要性を訴えている。

欧米に比べると、日本の事業継続管理に対する取組みは遅れているが、現在急速に政府・官公庁、企業で展開され始めている。事業継続管理はまさに企業存続の生命線を担うものであり、その重要性について経済的・社会的な観点から認識を深めた上で、直ちに着手すべき時期が到来したと言えよう。

以上

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • コンテンツを保存していつでも見返せる。