レポート

ESGリスクトピックス 2023年度 No.10

2024.1.1

<リスクマネジメント>
監査役協会が上場企業に監査とリスクの関係性で調査、監査役会に執行側のリスク認識確認を提言

日本監査役協会は11月30日、調査報告書「多様化するリスクの把握と監査活動への反映及びその開示」を公表した。企業を取り巻くリスクの多様化が進む中、監査とリスクの関係性についてのアンケート調査を実施し、取締役とのリスク認識の共有や監査計画の策定、新しいリスクへの監査などについて提言を取りまとめた。報告書は「監査役会等は、執行側のリスク認識の妥当性やリスクの評価プロセスの適切性などを改めて確認する必要がある」としている。

(参考情報:2023年11月30日付 日本監査役協会HP

<下請法>
労務費転嫁に向けた価格交渉で政府指針、協議なしの価格据え置きなどは法抵触と注意促す

内閣官房と公正取引委員会は11月29日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表した。急激に進む物価の上昇に賃金の上昇が追い付いていないことを課題とし、中小企業が賃金引き上げの原資を確保するための取引環境を整備することが目的。本指針では、労務費の転嫁に係る価格交渉について、発注者および受注者それぞれが採るべき行動や求められる行動を行動指針として取りまとめた。

(参考情報:公正取引委員会HP

<SDGs>
SDGs 実施指針を全面改定、企業や自治体などステークホルダー間の連携強化を求める内容に

政府は12月19日、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部(本部長・岸田文雄首相)を首相官邸で開き、政府のSDGs取り組み戦略となる改定実施指針を決定した。政府は4年ごとに実施指針を見直している。今回の改定は、初版の2016年から2回目。人口減少や少子高齢化などの問題を抱える日本で「多様性と包摂性のある社会を築き、イノベーションを生かした社会課題を通じて、持続可能な発展と繁栄・国際競争力の強化の実現」することを改定の趣旨に記載。「異なるステークホルダー間の有機的連携」を具体的取り組みに記載するなど、全面的に見直した。

(参考情報:2023年12月19日付 首相官邸HP

<生物多様性>
環境省が生物多様性オフセット・バンキングの類似制度を検討も、効果に制約

証券化などの取引手法を活用して「ネイチャーポジティブ(生物多様性の損失防止と反転)」の実現を目指した生態系オフセット・バンキングへの注目が高まっている。経団連が12月12日に公表した生物多様性宣言・行動指針の改訂版でも、生物多様性の損失回避や機能回復を図る上での手法として記載が残った。一方、環境省が導入を検討している支援証明書制度も類似の効果を期待した動きだ。財界などで制度化の議論に関心が集まる一方、規制が未整備の国内では普及にハードルが高い。

(参考情報:10月24日付 環境省HP
12月12日付 経団連HP

<自然資本>
UNEP-FI、銀行向けの自然関連目標設定ガイダンスを発行

国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP-FI)*はこのほど、国連責任銀行原則(PRB)**の署名機関の支援を受け、銀行向けに自然関連の目標設定ガイダンスを発行した。

2022年12月に開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)において採択された「昆明-モントリオール生物多様性枠組み(GBF)」の文脈に沿って、銀行がポートフォリオ全体の目標設定などの自然に関する行動を起こす一助となることを目的としている。

(参考情報:国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP-FI)

<気候変動>
世界の洪水リスク、沿岸部で21世紀末までに5倍増加UNDP予測

国連開発計画(UNDP)は11月28日、CO2排出量が現在の水準で推移すると、海面上昇による沿岸の洪水リスクが21世紀末までに5倍増加し、その影響は7,000万人以上となる予測結果を発表した。特にラテンアメリカ、アフリカ、東南アジアの沿岸地域の人間活動に深刻な影響を与える可能性があるとしている。化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しない最大排出シナリオ(SSP5-8.5)では、21世紀末までにブラジルのリオデジャネイロやインドのコルカタ、オーストラリアのシドニーなどの10都市で、面積の5%以上が海面下に沈むと予想されている。

(参考情報:2023年11月28日 国連開発計画(UNDP)HP

<サステナビリティ情報開示>
GRIとIFRS財団、両サステナ基準の利用拡大狙いシンガポールに初拠点設置

GRIとIFRS財団11月9日、両団体のサステナビリティ情報開示基準の相互運用性を高めて利用拡大を図ることを目的にした「サステナビリティ・イノベーション・ラボ」(SIL)の初の拠点をシンガポールに設置した。ISSB基準の公表や各国での制度化など、企業に対するサステナビリティ情報開示の要請の世界的な高まりに対応した。開示対応に必要なスキルの開発や各種ソリューションを提供し、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の企業や公的機関などに対し、GRI・ISSB両基準の活用拡大やサステナビリティ情報収集・開示の普及を図る。

(参考情報:2023年11月9日 GRI

<サイバー>
サイバー攻撃被害の情報共有は個別同意よりもスピード優先、経産省検討会が最終報告

経済産業省の「サイバー攻撃による被害に関する情報共有の促進に向けた検討会」は11月22日、最終報告書等を公表した。サイバー攻撃の被害企業の同意を個別に得ることなく速やかな情報共有の対象となり得る「攻撃技術情報」についての考え方を整理し、そうした考え方に基づく専門組織間での円滑な情報共有を提言している。

(参考情報:2023年11月22日 経済産業省HP

<サイバー>
IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0実践のためのプラクティス集 第4版」を公開

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、「サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0実践のためのプラクティス集 第4版」を発行した。本プラクティス集は、経済産業省とIPAが公開する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」の改訂にあわせて公開されるものであり、同ガイドラインVer3.0の「重要10項目」を実践するにあたり、参考となる考え方やヒント、実施手順、実践事例をまとめている。「制御系を含むデジタル基盤を守ることを意識した対策の充実」や、「サプライチェーン全体にわたるサイバーセキュリティ対策の推進」に関する事例が追加された。

(参考情報:2023年10月31日 サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0実践のためのプラクティス集 | 情報セキュリティ | IPA独立行政法人 情報処理推進機構

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