リスク情報・レポート

リスク情報・レポート / ESGリスクトピックス

2021.10.1

ESGリスクトピックス<2021 No.7>

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<脱炭素>
JCLP、カーボンプライシング制度設計推進に向けた意見書を公表

日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)*は7月28日、カーボンプライシング(炭素税及び排出量取引)の制度設計推進に向けた意見書を公表し、関係省庁に送付した。気候危機回避のための効果的な カーボンプライシング制度の導入に向けた議論を前進させることがねらい。意見書では、カーボンプライシング制度の設計や導入時期の議論の促進、中小企業や低所得者層への負担軽減を考慮した公正な移行、 カーボンプライシングの目的や効果に関する分かりやすい情報発信などを求めた。

(参考情報:2021年7月28日付JCLP HP

<リサイクル>
米 NGO Recycling Partnership、容器・包装の"リサイクル可能性"のフレームワーク案を策定

米 NGO Recycling Partnershipは8月11日、容器・包装の「Recyclability Framework(リサイクル可能性フレームワーク)」の案を公表した。本フレームワーク案では、企業が容器・包装のリサイクル可能性を判断する上で 活用することを目論んでいる。

本フレームワーク案では、容器・包装のサーキュラーエコノミー*化に向けた、リサイクル可能性を評価する基準として、「Design for circularity(サーキュラー設計)」「Recyclability Prevalence(リサイクル可能性の普及率)」 「Access & Adoption(アクセスと適用)」「Capture Journey(回収経路)」「Packaging Fate(使用後の処理/選択肢)」の5つが示された。例えば「リサイクル可能性の普及率」では、「市場流通量の75%以上でリサイクル可能な 形態となっているか」どうかが具体的な判断基準として挙げられており、他4つの項目についても具体的な判断基準が整理されている。

(参考情報:2021年8月11日付The Recycling Partnership HP

(参考情報:2021年8月11日付PATHWAY TO CIRCULARITY: Recyclability Framework

<サーキュラーエコノミー>
循環経済パートナーシップ(J4CE)がサーキュラーエコノミーの企業取り組み事例を紹介

循環経済パートナーシップ(J4CE)*は9月2日、日本企業および業界団体による循環経済の取り組み事例を紹介するウェブサイトを公開した。また、有識者委員会が選定した注目事例をまとめた 「注目事例集2021パンフレット」も公表された。本事例集を通じて、日本企業の優れた技術やアイデアなどを国内外に広く発信し、循環経済を早期に実現することを目指している。

(参考情報:2021年9月2日付IGES HP

Social-社会-

<人権>
国際人権NGOが中国企業の海外事業における人権侵害を警告

国際人権NGOの「ビジネスと人権リソースセンター」は、8月11日公表の報告書で、2013年から20年までの間に中国企業の海外事業に関連した人権侵害の告発が679件あったとして、中国企業による人権侵害を警告した。業種では鉱業や建設が多く、 国別では資源産出国のミャンマーやペルーなどが目立った。

(参考情報:2021年8月11日付同団体の HP

Governance-ガバナンス-

<ガバナンス>
経済産業省が「Society5.0」を実現するためのガバナンスに関する報告書を公表

経済産業省は7月30日、「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2:アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」報告書を公表した。世界が直面する様々な課題をデジタル技術によって解決する 「Society5.0」を実現していくために、多様なステークホルダーが迅速にルールや制度をアップデートし続ける「アジャイル・ガバナンス」の実践が必要であることを示した。

(参考情報:2021年7月30日付同省 HP

<公益通報者保護>
消費者庁が改正公益通報者保護法施行に向けた指針を公表

消費者庁は8月20日、組織の不正を内部通報した役職員らの保護強化を求める公益通報者保護法改正(2020年6月)の趣旨を踏まえ、公益通報に対応する窓口の設置や責任者の明確化などを企業に義務付ける指針を公表した。本指針では、 通報対象事案に関係する役員や管理職などを調査や対処に関与させないための体制や通報者に降格や減給などの不利益な取り扱いをした役職員らの懲戒処分などを挙げる。同庁は改正法施行(22年6月まで)に併せて、指針の解説を作成する。

(参考情報:2021年8月20日付消費者庁 HP

<サプライチェーン管理>
花王がサプライチェーンのESG推進の新ガイドライン公表

花王は8月24日、「調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドライン」を公表した。本ガイドラインでは、取引先に対して、原材料調達時に法令遵守だけでなく、環境保全など社会課題への配慮を求めている。 特に、天然資源(油脂、紙・パルプなど)の調達先や人権・環境面でのデューディリジェンスが不十分な取引先を「ハイリスクサプライヤー」と位置づけ、第三者監査を優先実施し、リスク把握および指摘事項の改善要求を行う。 指摘事項が改善されない場合は、取引中止も視野に入れる。

(参考情報:2021年8月24日付同社 HP

全般・その他

<ESG投資>
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「2020年度ESG活動報告」を刊行

GPIFは8月20日、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取組みとその効果を報告するために、「2020年度ESG活動報告」を刊行した。

本報告書によると、気候変動に関する重要性が高まりつつある背景を受けて、気候変動リスク・機会に関連する情報開示の拡充や、温室効果ガス排出量の計測/分析範囲をサプライチェーン全体に拡大するなど、 2019年度版までの分析をさらに掘り下げている。GPIFは、「ESG活動が期待通りに金融市場の持続可能性やリスク調整後のリターン向上につながっているかを測定し、長期的な効果検証につなげていく」としている。

(参考情報:2021年8月20日付GPIF HP

<SDGs>
サステナブルトランジションが、SDGs情報プラットフォームをリニューアル

一般社団法人サステナブルトランジションは8月25日、本年1月にリリースしていたSDGs情報プラットフォーム「Platform Clover(プラットフォームクローバー)」のリニューアル版を公表した。

同プラットフォームは、企業・自治体・個人等が同プラットフォーム上に自身のページを開設することができ、各々のSDGsに関する活動、事業上の強味、解決したい課題などの情報を発信、検索しあうことによって、 SDGs課題を解決するためのパートナーシップの形成やビジネスマッチング、新規ビジネス創出の促進を企図したもの。

(参考情報:2021年8月25日付サステナブルトランジション HP

<DX>
デジタル庁が発足、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会に向けた施策を推進

9月1日、デジタル庁が発足した。「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」をミッションとし、未来志向のDXを大胆に推進、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指すとしている。 COVID-19禍への対応を通じ、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れが課題として浮き彫りになる中、デジタル社会形成の司令塔として発足。「行政のデジタル化」、「医療・教育・防災をはじめ、産業社会全体にわたるデジタル化」、 「誰もが恩恵を享受できるデジタル化」の3つの柱に重点的に取り組む。

(参考情報:2021年9月1日付デジタル庁 HP

今月の『注目』トピックス

<気候変動>
IPCC、第6次評価報告書のWG1報告書公表。人間の影響が大気、海洋及び陸地を温暖化させてきたことに疑う余地がないと言及

(参考情報:2021年8月6日付IPCC HP

(参考情報:2021年8月9日付環境省HP

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第54回総会及び同パネル第1作業部会(WG1*)第14回会合が7月26日~8月6日にかけて開催され、IPCC第6次評価報告書WG1報告書(自然科学的根拠)の 政策決定者向け要約(SPM)が承認された。

2013年に出された第5次評価報告書と比較し、着目すべき更新事項のポイントは以下の通り。特に、海面上昇に関しては、気候変動の対策を取ったとしても上昇し続けるという想定が出されているため、 対策を行うとともに将来の高潮被害に関しても想定を行う必要がある。

Q&A

Question

昨今の報道等で、日本企業にも人権取り組みのいっそうの強化が求められているように見受けられます。企業に求められる取り組みのうち、「人権デューディリジェンス」の概要や取組のポイントを教えてください。

ESGリスクトピックス(旧:CSR・ERMトピックス)

国内外における主なトピックスを、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)ごとに紹介しています。
(A4数枚、毎月発行)