レポート

ESGリスクトピックス 2021年度 No.6

2021.9.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<生物多様性>
国連、ポスト2020生物多様性枠組の一次ドラフト発表。COP15にて議論

国連生物多様性条約(CBD)事務局は7月12日、2020年以降の生物多様性の国際目標となる「ポスト2020生物多様性枠組」の一次ドラフトを発表した。ドラフトをベースにさらに内容を調整したうえで、2021年10月に 中国・昆明で開催されるCOP15での審議にかけられる予定。枠組案は、2010年に採択したビジョン"Living in Harmony with Nature*"を2050年に実現するための4つの長期目標を定めたうえで、2030年に向けた10の マイルストーンと21の行動目標を設定している。

(参考情報:2021年7月12日付UNEP FI HP

<気候変動>
SBTiが方針改訂。承認対象を「1.5℃シナリオ」での排出削減目標に限定

気候変動に関する科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)は7月15日、企業の目標設定の基準を「well-below2℃シナリオ」から「1.5℃シナリオ」に引き上げる方針を発表した。2022年7月15日以降に提出される 目標には新たな基準が適用され、過去にSBTiから「1.5℃シナリオ」以外で目標が承認された企業も、所定の期限までに「1.5℃シナリオ」に沿って目標を更新する必要がある。

「well-below2℃シナリオ」とは、産業革命以前と比べて気温上昇を2℃より充分低く保つシナリオであり、「1.5℃シナリオ」は、産業革命以前と比べて気温上昇を1.5℃に抑えるシナリオのこと。 今回の方針改訂で、より野心的な目標を立てて取り組むことを企業に促した。

(参考情報:2021年7月15日付SBTi HP

<カーボンニュートラル>
政府が温暖化対策計画改定案を発表、CO2排出量削減目標を積み増し

政府は7月26日、2030年度末までのCO2排出量削減目標を積み増した地球温暖化対策計画の改定案を提示した。それによると、CO2排出量全体の9割以上を占める「エネルギー起源CO2」(燃料の燃焼および供給された電力や熱の使用で発生)を 2013年度比45%減とし、現計画よりも削減目標を大きく積み増した。部門別の削減目標は、それぞれ産業用37%、家庭用66%、運輸38%。

目標達成に向け、事業主に中長期の削減目標の設定、サプライチェーン全体での排出削減、省CO2型製品の開発、サーキュラーエコノミーへの移行など効果的・効率的な地球温暖化対策の自主的・積極的な実施を求めると同時に、 部門別の具体的な対策を示している。

(参考情報:2021年7月26日付環境省 HP

Social-社会-

<人権>
FCLTGlobal、非上場企業も多様性向上が企業価値高めるのに有効とのレポートを公表

世界大手の企業や機関投資家などが参加し、長期的視点に基づく持続可能な企業経営を提唱・推進する非営利組織の米FCLTGlobalは7月19日、組織の多様性が高い企業ほど投資効果が大きいとするレポートを公表した。 特に、非上場企業でも企業価値向上に有効とした。レポートでは、人種や民族などの多様性が高い企業は、投下資本利益率(ROIC)や財務リターンなどが比較的高いとする調査結果を提示。併せて、取締役の多様性が 高い非上場企業でも収益の成長率が高いという事例を示した。

(参考情報:2021年7月19日付https://www.fcltglobal.org/resource/private-equity-board-diversity/

<SDGs>
英WRAP、コート―ルド・コミットメント2030を発表

持続可能な資源利用を推進する英NPO団体のWRAP(The Waste and Resources Action Programme)は7月20日、食品・小売業界におけるサステナビリティ目標を定めたコートールド・コミットメント2030*を発表した。 本コミットメントでは2030年までの目標として、英国で消費される食品・飲料の温室効果ガス排出量を2015年比50%削減、一人当たりの食品廃棄物を2007年比50%削減、主要製品・原材料の国内外の調達先上位20地域における 質と量を伴った持続可能な水管理の達成の3つが掲げられた。

(参考情報:2021年7月20日付WRAP HP

<ダイバーシティ>
米マクドナルドが、ダイバーシティに配慮した調達を拡大、全体4分の1へ

米マクドナルドは7月22日、20社以上の大手サプライヤーとの間で、女性や有色人種、少数民族、LGBT、障がい者などが所有する企業の活動を積極的に支援していくことで合意したと発表した。2025年までにこうした 企業からの調達を10%増やし、米国内の調達額の全体の4分の1を目指す。

(参考情報:2021年7月22日付同社 HP

Governance-ガバナンス-

<プライバシーガバナンス>
経産省、企業向け消費者プライバシー保護強化ガイドブックの改訂版を公表

経済産業省は7月19日、「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver.1.1」を公表した。企業が消費者・顧客のパーソナルデータ(個人にまつわるあらゆる情報)を利活用する際の適切な プライバシー保護の取り組みをまとめたもの。昨年8月公表のver.1.0に、実際の企業の取り組み事例を追記し更新した。企業によるプライバシー保護の取り組み強化は、消費者からの信頼の獲得・企業価値の向上につながるとしている。

(参考情報:2021年7月19日付経済産業省 HP

<気候変動>
国内企業など約190社が、カーボンプライシング制度の導入を求めて関係省庁に意見書提出

脱炭素社会の実現に積極的な国内企業など約190社が加盟する日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は7月28日、温室効果ガスの排出量に応じて企業に費用負担を課す炭素税や排出量取引などの カーボンプライシング(CP)制度の導入を求める意見書を公表し、環境省など関係省庁に提出した。炭素税については年内に制度の骨格を明らかにするように求めた。また、2030年までに温室効果ガス排出を 2013年度比46%削減するとの政府目標の達成には、社会全体で効率的に排出削減に取り組む必要があるとした上で、有効策としてCP導入を強調。CP導入は企業の積極的な研究開発や設備投資を進め、 国内外のグリーン投資を呼び込むことで、経済成長にもつながるとした。

(参考情報:2021年7月28日付JCLP HP

全般・その他

<サステナビリティ>
経済産業省が繊維産業のサステナビリティに関する検討会報告書を公表

経済産業省は7月12日、繊維産業のサステナビリティに関する検討会の議論・検討結果をとりまとめた報告書を公表した。日本の繊維産業においては、サステナビリティに関する取り組みが十分になされているとは言い難い状況である一方、 企業の経営基盤強化、新規市場・取引開拓機会の創出、サステナビリティを軽視したビジネス展開によるリスクの回避等の観点から、サプライチェーン全体における取り組み推進が重要であると指摘。環境配慮、 責任あるサプライチェーン管理、ジェンダー平等、供給構造、デジタル化の促進といった5つの取り組みテーマについて、現状と今後注力して取り組むべき事項を整理している。

(参考情報:2021年7月12日付経済産業省 HP

<気候変動>
日本銀行、気候変動に関する包括的な取り組み方針を公表

日本銀行は7月16日、物価と金融システムの安定という使命に沿って気候変動に関する取り組みを進めるために、「包括的な取り組み方針」を決定した。

本方針において、気候変動による物価・金融情勢への影響の低減・マクロ経済の安定化に向けた各種施策が公表された。具体的には、気候変動の取り組みに投融資等を行う金融機関への資金供給制度の整備や、気候関連金融リスクの 管理に向けた金融機関との対話、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく情報開示の促進等の施策が挙げられている。

(参考情報:2021年7月16日付日本銀行 HP

今月の『注目』トピックス

<人権>
欧州委員会、企業がサプライチェーンから強制労働を根絶するためのガイダンスを発表

(参考情報:2021年7月13日付EU HP

欧州委員会は7月13日、企業がサプライチェーンから強制労働を根絶するための実践的アドバイスをまとめたガイダンスを発表した。同委員会は現在、「長期的かつ持続可能で責任ある企業行動」に関する法案を準備中。 法制化までの間、同ガイダンスがEUにおける強制労働に関するリスクへの対応方針となる。

同ガイダンスは、「責任ある企業行動のためのOECDデュー・デリジェンス・ガイダンス」で示されたフレームワークに沿って構成。強制労働に対し「ゼロ・トレランス」(一切妥協しない)を原則とする。 人権デュー・デリジェンス実施時に考慮すべき要素について、以下のとおり例示している。

Q&A

Question

「ポスト2020生物多様性枠組」や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)など、生物多様性に関するニュースを最近よく目にします。自社の事業と生物多様性は直接の関連が薄いように思うのですが、どのように取り組むべきでしょうか。

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