レポート

ESGリスクトピックス 2020年度 No.12

2021.3.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
Climate Action 100+、航空業界を対象に初のセクター戦略を発表

気候変動に関する機関投資家イニシアティブの Climate Action 100+は1月27日、航空業界を対象に、機関投資家が企業に期待することをまとめたセクター戦略を発表した。同イニシアティブが業種に特化した戦略を発表するのは初めて。

同戦略では、「アクション」「ガバナンス」「情報開示」の3側面で、投資家が航空企業に期待することを整理している。例えば「アクション」では2050年までのGHG排出ネットゼロのコミットメントや、パリ協定に沿った 移行計画の策定・公表、「ガバナンス」では気候変動のリスク・機会に対する取締役の説明責任・監督を明確にしたガバナンス枠組みの導入、などを提言している。

(参考情報:2021年1月27日付Climate Action 100+ HP

<気候変動>
バイデン大統領、国内外での気候危機への取り組み、雇用創出、気候変動に関して科学的根拠を重視する大統領令に署名。

1月27日、米バイデン大統領は国内外の気候危機に取り組むための行政措置及び、気候変動に対して科学的な証拠に基づく政策決定を行うことを目的とした科学技術諮問機関の再設立を大統領令において署名した。 この署名は、大横領就任初日に署名したパリ協定への復帰や大気、水、地域社会を保護する基準の見直し等を強化するもので、政府主導による気候危機への取り組みや持続可能な経済のためのインフラ再構築、 森林再生の促進、エネルギー関連産業コミュニティーの活性化、低炭素・脱炭素社会移行時の公平性の確保と経済機会の促進などが含まれている。

(参考情報:2021年1月27日付The White House -FACT SHEET: President Biden Takes Executive Actions to Tackle the Climate Crisis at Home and Abroad, Create Jobs, and Restore Scientific Integrity Across Federal Government

Social-社会-

<Society5.0>
経産省、デジタル市場の整備に向けたディスカッションペーパーを公表

経済産業省は1月8日、デジタル市場の重要性とその実現に向けた議論の重要性を提起するディスカッションペーパーを公表した。産業構造の変化や人口減少・少子高齢化など社会的・経済的課題について、経済界や学術界、弁護士などの 委員が議論した結果を踏まえ、デジタル市場の整備に向けて「データの使いやすい状態での取得・蓄積」「技術革新を前提にした技術中立的なアーキテクチャ」などのポイントを挙げた。

(参考情報:2021年1月8日付経済産業省 HP

<ワークライフバランス>
厚労省審議会が、男性の育児休業取得促進案を公表

厚生労働省の労働政策審議会は1月18日、男性が育児休業を取得しやすくするための施策案を公表した。子どもの出生後8週間以内で4週間の取得や2回の分割取得を可能とする一方、大企業に男性の育児休業等の取得率の 公表を義務付けるなどの内容。同省は、内容を踏まえて法案を作成する。

(参考情報:2021年1月18日付厚生労働省HP

<グリーンエコノミー>
ILOとLinkedInがグリーンエコノミー移行に伴う労働市場変化分析に関するパートナーシップを締結

国際労働機関(ILO)は1月21日、グリーン経済行動パートナーシップ*(PAGE)、LinkedInと、グリーンエコノミー以降に伴う労働市場変化分析に関する2年間のパートナーシップの締結を公表した。 世界の労働市場のリアルタイムデータをもとに、グリーンエコノミーへの移行に伴って需要が急速に高まる職業・技能等を分析。得られた知見をもとに、政府のグリーンエコノミーへの移行支援や、政府・労働市場制度における 技能訓練の促進につなげる。同パートナーシップは、SDGsの達成支援やCOVID-19パンデミックによる課題への対応に資することも企図している。

(参考情報:2021年1月21日付ILO HP

<ダイバーシティ&インクルージョン>
ユニリーバが公平かつインクルーシブな社会実現に向けた計画を公表

ユニリーバは1月21日、より公平でインクルーシブな社会の構築に向けたコミットメントとアクションプランを発表した。取り組みは、バリューチェーン全体の生活水準の向上、マイノリティへの雇用機会の拡大・創出、 未来の働き方・雇用に備えた育成・教育の3つのテーマからなる。一次サプライヤーにおける生活賃金・収入の確保をコミットメントに掲げるなど、自社のみならず、サプライヤーや広告の出演者・制作者を取り組みの対象に含めることで、 社内外におけるダイバーシティ&インクルージョンを促進。同取り組みを通じて、社会の変化を促していくとしている。

(参考情報:2021年1月21日付ユニリーバ HP

Governance-ガバナンス-

<情報開示>
経産省、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示に関するFAQを公表、企業・投資家間の対話充実が目的

経済産業省は1月18日、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示について、企業の取り組みが容易となるよう、ひな型・記載例、開示スケジュールなどを含むFAQを取りまとめ、公表した。開示書類作成者である企業担当者や監査法人、 関係機関等と継続的に意見交換し、その中で多く寄せられた質問を整理・取りまとめた。開示書類作成の効率化・合理化で、非財務情報の開示や企業の中長期的な成長に向けた投資家との対話を充実させるのが目的。

(参考情報:2021年1月18日付経済産業省 HP)

<株主総会>
経産省、リアル・バーチャル併用の株主総会の実施ガイドを公表、肖像権や通信障害など対策例を紹介

経済産業省は2月3日、実際の会場(リアル)とインターネット等などを通じた遠隔地からの参加・出席(バーチャル)を併用した株主総会の開催について、2020年の実例や運用上の考え方を盛り込んだ実施ガイドを公表した。 肖像権や通信障害など運用上起こりうる課題と対策などを企業の工夫例とともに紹介している。

(参考情報:2021年2月3日付経済産業省 HP)

全般・その他

<ガバナンス>
世界経済フォーラムがステークホルダー資本主義におけるガバナンス実践のフレームワークを提示

世界経済フォーラムが1月13日、「企業の将来」と題した白書で、ステークホルダー資本主義*におけるガバナンス実践のフレームワークを提示した。企業に対し、短期的に最大の利益を上げるのではなく、 長期的な価値創造を求める投資家や株主が増えており、ESG課題に対して取締役会の関与や透明性の高い情報開示が求められていることを示した上で、取締役会及び経営陣が取るべき行動や考慮すべき事項を 「目的」「戦略」「ガバナンス」「文化と価値観」の観点でまとめた。

(参考情報:2021年1月13日付WEF HP

<全般>
世界経済フォーラムが「グローバルリスク報告書2021」を公表

世界経済フォーラムは1月19日、「グローバルリスク報告書2021」を公表した。今後10年で発生する可能性の高いクローバルリスクとして、「異常気象」、「気候変動の緩和・適応の失敗」、「人為的な環境破壊」、「感染症」、 「生物多様性の破壊」が上位5項目に挙げられた。また、報告書では、COVID-19の感染拡大により、貧困の削減や不平等の是正などの改善取り組みが後退し、社会的分断や国際協調の弱体化が加速する恐れがあると指摘。

(参考情報:2021年1月19日付WEF HP

<サーキュラー・エコノミー>
環境省と経済産業省が「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を公表

環境省と経済産業省は1月19日、政府策定としては世界初である「サーキュラー・エコノミーにかかるサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を公表した。本ガイダンスでは、 サーキュラー・エコノミーおよびプラスチック資源循環に取り組む日本企業が国内外の投資家や金融機関から適正に評価を受け、投融資を呼び込むための情報開示および対話・エンゲージメントのポイントを 「リスクと機会」「戦略」「指標と目標」「ガバナンス」「価値観」「ビジネスモデル」の6つの項目に沿って、事例を交え解説している。

(参考情報:2021年1月19日付環境省 HP

(参考情報:2021年1月19日付経済産業省 HP

<ESG投資>
グローバル企業61社のCEOが「ステークホルダー資本主義指標」に賛同

世界経済フォーラム(WEF)は1月26日、「ステークホルダー資本主義指標」に61社(日本企業7社含む)の最高経営責任者(CEO)が賛同したと発表した。この指標は、多様なステークホルダーを考慮し、企業のESG・SDGs取り組みの 情報開示ガイドラインとしてWEFや世界の主要な監査法人などが2020年9月に発表したもの。これまで世界の主要団体が公表しているESG開示基準のコンバージェンス(収斂)を促し、ESG開示での比較可能性を高めることを目的としている

(参考情報:2021年1月22日付環境省 HP

<ESG投資>
ブラックロックがカーボンニュートラル推進の方針を公表

資産運用会社ブラックロックのグローバル経営委員会は1月26日、投資家向けレターの中でカーボンニュートラルの推進に強く関与していく姿勢を示した。

具体的には、2021年の主なアクションに「測定と透明性」「投資管理」「受託責任」を提示。「受託責任」では20年、二酸化炭素排出量の多いターゲット企業440社うち191社を「監視対象」にしたことを公表。 気候関連リスクへの対応で大きな進展がない限り、21年は取締役に対する反対票が投じる意向を示した。さらに21年にはターゲット企業を1000社に拡大する方針。

(参考情報:2021年1月26日付BlackRock HP「Net zero: a fiduciary approach

今月の『注目』トピックス

<気候変動>
SBTiが2020年進捗レポートを発表。330以上の目標承認企業がパリ協定以降の5年間でCO2排出量を4分の1削減。

(参考情報:2021年1月26日付The Science Based Targets initiative HP

気候変動に関する科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(Science Based Targets Initiative;SBTi)は1月26日、2020年の進捗レポート「SBTi Annual Progress Report 2020」を公表した。

レポートによれば、2015~2019年において世界のCO2排出量は3.4%増加する中、目標承認企業338社*は全体で25%削減した(下図参照)。削減量にすると3億200万tで、石炭火力発電所の年間排出量78基分に相当する。 また、これらの企業は1.5℃目標よりも速いペースで排出削減をしていることが明らかになった。

Q&A

Question

SDGsの取り組みを始めるにあたって、SDGsと関連性のある自社の取り組みをどのように把握・整理したらよいでしょうか。

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