レポート

ESGリスクトピックス 2020年度 No.5

2020.8.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
WBCSD、ビジネスにおいて炭素排出ネットゼロを達成するための気候変動対策フレームワークを発表

WBCSD(The World Business Council for Sustainable Development)は6月5日、企業が2050年までに炭素排出量ネットゼロを実現するためのフレームワーク"SOS1.5:The road to a resilient, zero-carbon future"を発表した。 本フレームワークはボストンコンサルティングとの共同開発で、6つの基本ステップと16のアクションで構成されている。気候変動取組みに関してあらゆる段階にある企業が、 炭素排出ネットゼロにむけて科学的知見に基づく取組みを加速させることができるとしている。

(参考情報:2020年6月4日付WBCSD HP

<環境経営>
コニカミノルタが日本企業15社参加の下、「環境デジタルプラットフォーム」を開設

コニカミノルタ株式会社は6月5日、日本企業15社参加の下、産業界全体の環境経営の効率性向上を目的に環境課題に関する知見・ノウハウ等を共有する「環境デジタルプラットフォーム」を開設した。

同プラットフォームでは、参加企業から提供された情報を基に個社で解決困難な環境課題への解決策を他社と共創すること、環境課題に取り組む企業のニーズと参加企業が有するノウハウ・コンテンツをマッチングさせることが可能となる。 同社がプラットフォームの運営を担当するほか、長年に渡って省エネ等の環境課題に取り組んできたパナソニック株式会社が幹事会社を務めることが決定しており、今後も参加企業の拡大、提供コンテンツの強化にむけた取り組みを進めていく。

(参考情報:2020年6月5日付コニカミノルタ HP

<気候変動>
UNFCCC、2050年までのCO2排出ネットゼロを目指す過去最大のアライアンス"Race To Zero"を組成

UNFCCCは6月5日、遅くとも2050年までにCO2排出ネットゼロを目指すアライアンス"Race To Zero"を組成したことを発表した。昨年9月のNY国連気候サミットで発足したClimate Ambition Alliance の参画団体が このキャンペーンの母体となっており、995の企業、449の自治体、38の投資家、21の地域、505の大学が参加している。参加者には2050年のCO2排出ネットゼロ達成の誓約と、 COP26までに次の10年間の中間目標の提出が義務付けられている。本キャンペーンは、企業、自治体らがパリ協定の目標達成に向けて団結していることを各国政府に訴えることを狙いとしている。

(参考情報:2020年6月5日付UNFCCC HP

(参考情報:2020年6月5日付UNFCCC HP

<サステナビリティ>
ユニリーバ、気候変動対策や環境保全に関する新たな取り組みを開始

ユニリーバは6月15日、気候変動対策や環境保全に関する新たな取り組みを公表した。本取り組みの中で、「2039年までに同社製品から生じる温室効果ガスの排出量を調達から販売までのすべての過程において実質ゼロにする」など、 温室効果ガスの削減や森林破壊の防止等に関する6つのコミットメントを表明している。

同社は、2010年にユニリーバ・サステナブル・リビング・プランを導入し、「すこやかな暮らし」「環境負荷の削減」「経済発展」に関する9つのコミットメントと50以上の目標を掲げて取り組んで きた。本プランの導入から10年が経過した今年、各目標の達成状況を公表するとともに、さらに挑戦的な目標を掲げサステナビリティの推進に取り組むとしている。

(参考情報:2020年6月15日付ユニリーバ HP

<生物多様性>
オランダ中央銀行、生物多様性損失の金融リスク分析結果を発表。中央銀行としては初。

オランダ中央銀行は6月18日、オランダ環境アセスメント庁と共同で、金融機関における生物多様性損失リスクの分析結果を発表した。本レポートは、生態系サービス*の源である生物多様性の損失は、それに依存する企業の事業リスクとなり、 投融資を行う金融セクターにおけるリスクにも繋がるとした。例えばオランダの金融機関において、生態系サービスの依存度が高い事業への投融資額は全ポートフォリオの36%にあたる5100億ユーロに上り、リスクにさらされている。

(参考情報:2020年6月18日付オランダ中央銀行 HP

<気候変動>
Climate Action 100+、2020年の株主総会シーズンで気候変動関連株主提案の賛成票伸ばす

Climate Action100+*は6月23日、2020年の米国株主総会シーズンにおいて、石油メジャーや電力会社に対し気候関連の情報開示やガバナンス向上を求める株主提案が、過去最高水準の賛成票を獲得したと発表した。 中でも石油メジャーのChevronでは、パリ協定の目標に整合したロビー活動を行うよう求める株主提案が53%の賛成票を獲得し可決された。

(参考情報:2020年6月23日付Climate Action 100+ HP

<サーキュラーエコノミー>
サントリー等12社、使用済プラスチックの再資源化に取り組む共同出資会社「アールプラスジャパン」を設立

サントリーホールディングス子会社のサントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社は6月30日、業界を超えた12社と共に、使用済プラスチックの再資源化技術の開発・実用化推進を行う株式会社アールプラスジャパンを設立した。 サントリーグループが米国バイオ化学ベンチャー企業・アネロテック社と取り組んでいる植物由来100%原料使用ペットボトル共同開発の中で見出した技術を活かしたもので、2027年の実用化を目指す。

(参考情報:2020年6月30日付SUNTORY グループ HP

(参考情報:2020年7月1日付食品産業新聞社ニュースweb

Social-社会-

<データガバナンス>
世界経済フォーラム、データの国際的な活用促進で提言

世界経済フォーラム(WEF)は6月5日、国際的なデータ活用が可能なガバナンスのための枠組みと行動計画を整理した提言を公表した。プライバシーやセキュリティに関する相互の信頼を確保する国際連携やデジタル保護主義の是正、 適切なデータ保護の確保に向けて政策対話やルールの活用などを呼びかけた。2016年6月に大阪市で開催した主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)での日本主導の提起を基点とし、デジタル社会の競争力の源泉であるデータを、 国をまたいで安全安心に、活用できる社会の実現を目指す「Data Free Flow with Trust(DFFT)」のコンセプトの達成を目指す。

(参考情報:2020年6月5日付世界経済フォーラム HP

<健康経営>
経済産業省、健康経営の「見える化」やステークホルダーの評価を促す管理会計ガイドラインを公表

経済産業省は6月12日、企業の健康経営を効果的に実施し、資本市場をはじめとした様々な市場と対話するための枠組みを示す「健康投資管理会計ガイドライン」を公表した。従業員の健康管理を、法律への義務的対応ではなく、 労働生産性向上といった「経営課題解決に必要な取り組み」と意義づけ。管理会計の手法を用いて、健康経営への取組み状況を量的・金銭的指標によって「見える化」し、効果の分析や従業員・株主などステークホルダーによる評価促進などに活用する。

(参考情報:2020年6月12日付経済産業省 HP

<BCP>
国土交通・経済産業両省、マンションなど建物電気設備の浸水対策ガイドラインを公表

国土交通省と経済産業省は6月19日、マンションやオフィスビル、病院などの電気設備の具体的な浸水対策例を整理したガイドラインを公表した。2019年の台風19号による大雨で、 高層マンションの地下部分に設置した高圧受変電設備が冠水し、エレベーター、給水設備等のライフラインが一定期間使用不能となったことを受けて作成した。

(参考情報:2020年6月19日付経済産業省 HP

Governance-ガバナンス-

<コンプライアンス>
米司法省、企業コンプライアンス・プログラムの評価指針を更新、リスク評価の継続的見直しなどを追加

米司法省は6月、企業のコンプライアンス・プログラムの実効性や適切性を評価する際の指針 「Evaluation of Corporate Compliance Programs」を更新した。これに合わせて、自社の体制やプログラムを見直す企業の増加が見込まれる。

今回の更新では、具体的な視点に以下の要素が追加された。

  • リスク評価の継続的な見直しの必要性
  • 自社だけでなく他社に起きた問題を踏まえた検証
  •   

(参考情報:2020年5月7日付米国司法省 HP)

<法的リスク>
経済産業省と特許庁、スタートアップ企業向けに「モデル契約書ver1.0」を公表

経済産業省と特許庁は6月30日、事業会社と研究開発型スタートアップ企業間のオープンイノベーション促進にむけたツールとして「モデル契約書ver1.0」(以下、同雛形)を公表した。

同雛形公表の背景として、スタートアップ企業は知財・法務に関する知識・ノウハウや交渉経験が不足する傾向にあり、大企業等と事業連携の経験のあるスタートアップ企業のうち約75%が、 不利な取引・契約条件を強要される等の被害を受けている*ことが明らかになっている。

(参考情報:2020年6月5日付経済産業省 HP

<ガバナンス>
取締役協会、日本企業の「リスクテイク力」強化に指名委員会等設置会社導入を主張

日本取締役協会は6月10日公表のレポートで、経営の執行と監督の役割分担がより明確な「指名委員会等設置会社」制度の導入が望ましいと主張した。「独立社外取締役の行動ガイドラインレポート2」で 取締役会のあり方や独立社外取締役の具体的行動指針を示す中で、日本企業が「リスクテイク力」の欠如のため「稼ぐ力」が低下しており、リスクテイクを促すための強力なリーダーシップが必要と指摘している。

(参考情報:2020年6月10日付日本取締役協会 HP

全般・その他

<ESG>
PRI、SDGs達成へ投資を通じた成果を挙げるため行動フレームワークを公表

国連責任投資原則(PRI)は6月15日、投資家が投資先の財務状態に影響を与える環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)問題に着目し、投資戦略に取り込むことで、国連の持続可能な開発目標 (SDGs)の達成に貢献する「成果」を創出するための行動フレームワークを公表した。フレームワークは、「成果の明確化」「方針と目標の設定」「成果の創出」「金融業界の連携」「ステークホルダーとの連携」の 5つパートで構成。各パートで実践のポイントや有用なツールなどをまとめている。

(参考情報:2020年6月15日付国連責任投資原則 HP

<ESG>
企業業績・株価への影響、短期はガバナンス、長期は環境・社会が大、米MSCIが分析

米インデックス大手MSCIは6月15日、企業のESG取組が企業パフォーマンス(業績および株価)に与える影響について、短期的にはガバナンス(G)の影響が大きく、長期的には環境(E)と社会 (S)の影響が大きくなるとの分析結果を公表した。2006年から19年までの株価を分析した。また、業種別では、Gが金融・一般消費財、Eがエネルギー・素材、Sは一般消費財・サービスで、それぞれ影響が大きかったという。

(参考情報:2020年6月15日付MSICI HP

<SDGs>
環境省がローカルSDGs(地域循環共生圏)ビジネスの先進事例と成功のポイントを公表

環境省は6月26日、「ローカルSDGs(地域循環共生圏*)ビジネスの先進的事例とその進め方」を公表した。ローカルSDGsビジネスを実施・企画・支援しようとしている企業が活用し、振興につなげる参考となるよう、 実際に推進している企業の取組・サービス内容、取組背景となった地域課題、今後の展望などを掲載した。ローカルSDGsビジネスの成功には特に「モノだけでなくヒトの地域資源活用」、 「サービス立ち上げ期の川下確保」「多様な事業を円滑に運営するための事業体組成」が必要であると示している。

(参考情報:2020年6月26日付環境省 HP

今月の『注目』トピックス

<ハラスメント>
職場のハラスメントの相談が過去最多の8万7570件

(参考情報1:2020年7月1日付厚生労働省 HP

2019年度中に全国の労働局などに寄せられた職場での「いじめ・嫌がらせ」(ハラスメント)の相談が、過去最高の8万7570件(前年比5.8%増)だったことが、7月1日に厚生労働省が発表した「個別労働紛争解決制度の施行状況」で分かった。

それによると、内容別で「いじめ・嫌がらせ」は8年連続のトップ。全体の相談件数も、118万8340件(同6.3%増)だった。

Q&A

Question

当社ではリスクマネジメント委員会を中心とした全社的リスクマネジメント活動を展開していますが、今年度はCOVID-19への対応に追われ、活動が十分に行えていません。委員会活動の再開に際して、 経営から「当社のリスクマネジメントに不十分な点はないのか。リスクマネジメント体制の見直しも視野に入れ、実効性のあるリスクマネジメントを目指すように」との指示を受けています。リスクマネジメント委員会事務局として、 まず何から取り組めばよいでしょうか。

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