リスク情報・レポート

リスク情報・レポート / ESGリスクトピックス

2020.7.1

ESGリスクトピックス<2020 No.4>

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<環境全般>
欧州連合の欧州環境庁は5月19日、欧州・世界の環境やサステナビリティに変化をもたらすメガトレンドについて分析した報告書を発表した。6つのテーマ「世界人口の増加、都市化、移住」 「世界規模の気候変動と環境の悪化」「資源不足と資源競争の激化」「テクノロジーの変化および収れん」「世界経済、地政学におけるパワーシフト」「価値観、ライフスタイル、ガバナンス方法の多様化」および これらテーマ間の関連性について分析している。

(参考情報:2020年5月19日付 同庁 HP

<気候変動>
150超のグローバル企業がコロナからの経済復興に、GHG排出ネット・ゼロとの整合を各国政府に要請

155のグローバル企業は5月19日に、自らの野心でもある「2050年より前にGHG排出ネット・ゼロ」とコロナからの経済復興を整合させることを各国政府に要請する声明に署名した。各国政府において、 パンデミックからの回復計画や経済対策の議論が高まる中での発表である。署名企業らはSBTイニシアチブの一部メンバーで、合計時価総額は2.4兆ドル超、500万人以上の従業員を抱える。 日本からは、丸井グループ、前田建設工業、YKK、高砂香料工業の4社が署名した。

(参考情報:2020年5月19日付Science Based Targets HP

(参考情報:2020年5月19日付同日 共同声明

<コロナ、気候変動、経済復興策>
欧州委員会が2027年を見据えた経済復興予算案を発表

欧州委員会は5月27日、2027年までの長期経済復興予算案を発表。加盟国の新型コロナウイルス・パンデミックからの回復支援、経済始動と民間投資支援、災禍からの教訓反映を3つの柱とし、 4月23日に加盟国合意済の緊急財政支援に加え、今回の2024年までの特別予算と2027年までの一般予算の三段構えで、合計約290兆円相当の予算を見込む。EUが掲げる環境配慮とデジタルへの 移行"(green and digital transitions")に整合した投融資によって、雇用と経済成長を活性化させ、社会のレジリエンスと環境の健全性を高めることを目指す。

(参考情報:2020年5月27日付European Commission HP

Social-社会-

<LGBT>
厚生労働省が、性的マイノリティが活躍できる職場環境実現のための取組事例集を公表

厚生労働省は5月8日、性的マイノリティの当事者が直面する差別や不利益などの問題とそれに対応した企業の実際の取り組みを事例集にまとめ、公表した。企業に対して性的指向や性自認についての理解促進と、 性的マイノリティを含めた多様な人材が活躍できる職場環境の整備を求めている。

(参考情報:2020年5月8日付同省 HP

<個人情報>
世界経済フォーラムが「プレシディオ原則」を公表、ブロックチェーンのユーザー保護と技術価値向上が目的

世界経済フォーラム(WEF)は5月22日、世界規模でブロックチェーンの活用を受け、ユーザーの権利を保護しつつ、技術の基本的な価値を高めることを目的にした「プレシディオ原則」の策定を発表した。

同原則は、「透明性とアクセシビリティ」「プライバシーとセキュリティ」「受託者と相互運用性」「説明責任とガバナンス」の4つの観点から、全16原則で構成。WEFは、同原則を 「ユーザーの権利を保護しながらアプリケーションを設計するためのベースライン」と位置づけ。法人・個人を問わずブロックチェーン技術設計に携わる主体に署名を呼びかける。

(参考情報:2020年5月26日付WEF HP

Governance-ガバナンス-

<情報管理>
経産省が、テレワーク時の企業の秘密情報管理のポイント公表、テレワーク実施を後押し

経済産業省は5月7日、企業の秘密情報を適切に守りながらテレワークを実施するポイントを公表した。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い多くの企業でテレワークの導入が進んでいる状況を受けて注意を促すとともに、 テレワークの実施を後押するのが目的。不正競争防止法に関連して同省が作成した「営業秘密管理指針」や「秘密情報の保護ハンドブック」などを踏まえた。

(参考情報:2020年5月7日付同省 HP)

(参考情報:同省 HP「営業秘密管理指針」

(参考情報:同省 HP「秘密情報の保護ハンドブック」

<下請法対応>
公取委・中企庁、新型コロナ拡大受け、下請事業者への独優越的地位の濫用防止で注意を呼び掛け

公正取引委員会と中小企業庁はこのほど、新型コロナウイルス感染症の拡大で影響を受ける中小企業との取引に関して、下請法対応に関する考え方をQ&A形式で示した。その中で、発注の取り消しや受領拒否、 代金の減額等の行為は、独優越的地位の濫用として問題となり得ることから注意を呼び掛け、取引停止や大幅な取引量の減少に際しては、現状の取引内容や取引条件の確認と今後の発注などの対応について、 下請事業者と十分に協議した上で決定することを求めた。

(参考情報:公正取引委員会 HP

(参考情報:中小企業庁 HP「新型コロナウイルス感染症拡大に関連する下請取引Q&A」

全般・その他

<ESG>
国連責任投資原則、新型コロナ禍踏まえ、投資判断での人権重視の論評を掲載

国連責任投資原則(PRI)は5月1日、同機関のブログに、新型コロナウイルスの感染拡大による社会的弱者への経済的な影響を考慮し、企業や機関投資家に人権に配慮した投資判断の重要性を訴える幹部スタッフの論評を掲載した。 筆者は併せて、今年度末ごろに署名機関向けに人権に関する要報告事項の指針を策定すると言及した。

(参考情報:2020年5月1日付同機関HP

<ESG投資>
UNEP FIとPRIが受託者責任に関する最終活動報告書を発表

UNEP FI(国際環境計画・金融イニシアチブ)とPRI(国連責任投資原則)は5月20日、「21世紀の受託者責任」プログラム*の最終活動報告書を公表した。 本報告書では、機関投資家などの資産運用の受託者は投資分析や意思決定プロセスにESG課題を組み入れる義務があると結論づけた。

本活動を開始した2016年**以降、今回の投資家へのガイダンスやロードマップの作成等を通じて、受託者責任にESGの考え方を組み入れる動きが欧州などを中心に世界中で加速。ESGを考慮しないことは受託者責任に反し、 法的にも罰せられる可能性が高まっていると示唆した。

(参考情報:2020年5月20日付UNEP FI HP

<ESG>
関係者の半数が新型コロナ禍での債券信用リスク評価にESG全要素を考慮、国連責任投資原則のアンケート結果

国連責任投資原則(PRI)が5月28日に公表した、格付け機関や機関投資家など債券市場関係者対象のアンケート結果によると、全回答者の46%が新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、 債券の信用リスク評価の際にESGすべての要素を考慮していたことが分かった。PRIはこの結果を受けて、パンデミックは公衆衛生や治安などの社会リスクと見られがちだが、 経済活動の停滞に伴う資源消費の減少や流通の革新などの環境側面や、企業ガバナンスではリスク管理の真価などESGすべての側面の課題と強調した。

(参考情報:2020年5月28日付国連責任投資原則 HP

<情報開示>
金融庁が、新型コロナ影響の投資家向け開示充実のポイントを公表

金融庁は5月29日、新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示を充実し、投資家の適切な投資判断を可能とするため、投資家等が期待する開示のポイントをQ&A形式で公表した。 「記述情報の開示の好事例集」のための勉強会に参加した投資家・アナリストの意見を踏まえ作成されたもの。同感染症の影響について、ルールへの形式的な対応にとどまらず開示の充実に向けた企業取組みを促すことが目的。

(参考情報:2020年5月29日付同庁 HP

今月の『注目』トピックス

<COVID-19>
世界経済フォーラム、COVID-19禍がもたらすリスクに関する報告書を公表、さらなる危機の回避、復興による「公正で持続可能な世界」の実現に向けた行動の必要性を指摘

(参考情報1:2020年5月19日付WEF HP

(参考情報2:2020年5月19日付WEF HP

世界経済フォーラムは5月19日、グローバルリスク報告書の編纂チームが作成した、COVID-19のパンデミックによるリスクに関する2つの報告書を公表した。

「新型コロナウイルスとリスクの展望:初期マッピングとその意味(COVID-19 Risks Outlook: A Preliminary Mapping and Its Implications)」では、COVID-19禍を受けた身近なリスクの変化、 新しいリスクが出現する可能性についての現段階の見通しを提供するために、今後18か月で世界的に顕在化する可能性が高いリスク、世界・企業にとって影響が懸念されるリスクに関する調査の集計・分析結果をまとめている。

Q&A

Question

2021年に新しい生物多様性国家戦略の策定が予定されていることもあり、当社でも生物多様性保全に関する取り組みを改めて推進していきたいと考えています。しかし、本業と生物多様性の関連性が今一歩理解できておらず、 どうしても抽象的な目標の設定などに留まっているのが現状です。どのようにすれば、より具体的でオリジナリティのある取り組みができるでしょうか?

ESGリスクトピックス(旧:CSR・ERMトピックス)

国内外における主なトピックスを、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)ごとに紹介しています。
(A4数枚、毎月発行)