レポート

ESGリスクトピックス 2019年度 No.10

2020.2.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
Climate Ambition Allianceが発足

12月11日、2050年までに温室効果ガス排出をネットゼロとすることを目指すClimate Ambition Alliance(CAA)が発足した。 本アライアンスは気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)の議長国チリが主導し、73カ国、14地域、398都市、786の企業、16の機関投資家が参加している(2019年12月11日時点)。 参加国は、排出ネットゼロのために2020年の国別目標(NDC)見直しにおいて、野心的な目標の引き上げを行う見込みである。 なお、日本政府は不参加だが、東京、京都、横浜などの29の自治体とアシックス、小野薬品工業、丸井グループの3社は参加を表明している。

(参考情報:12月11日付UNFCCC HP

<気候変動>
英スタンダードチャータード、一般炭からの収益が10%以上の企業への金融サービス提供を2030年までに停止

金融世界大手の英スタンダードチャータードは12月17日、収益の10%以上を一般炭*および石炭火力発電に依存している企業への金融サービス提供を2030年までに禁止することを発表した。 2021年以降、以下のマイルストーンを定め、一般炭による収益の割合が高い企業との取引を段階的に停止していく。

  • ~2025年1月:収益の60%以上を一般炭に依存している企業との取引を行わない
  • ~2027年1月:収益の40%以上を一般炭に依存している企業との取引を行わない
  •   

(参考情報:2019年12月17日付スタンダードチャータード HP

<気候変動>
EUタクソノミー、立法化へ向けた手続き開始へ

EU加盟国の各国代表は12月18日、EU理事会と欧州議会の間で合意に達したEUタクソノミー*を正式に支持することを採択した。 今回合意に達したタクソノミーは気候変動の緩和と適応の2つの目的に関するもので2020年末まで成立を目指している。残る4つの環境目的のタクソノミー**については2021年末までの成立を目指している。 この採択よりEUタクソノミーの正式な立法手続きに入り、欧州議会とEU理事会での可決を経て法案として成立する。

(参考情報:2019年12月18日付欧州理事会HP

<気候変動>
東京都、2050年カーボンニュートラルに向け2030年目標設定「ゼロエミッション東京戦略」を発表

東京都は12月27日、2050年のCO2排出実質ゼロへの貢献に向けた「ゼロエミッション東京戦略」を公表した。 戦略を6分野*14政策に整理し、2050年に目指すべき姿(ゴール)とロードマップを明示。各政策のロードマップにおいて、2030年に到達すべき17の主要目標(ターゲット)をマイルストーンとして設定、 また、主要目標を上回る成果の実現のため取り組むべき具体的取組「2030年目標+アクション」(47項目・82アクション)を整理した。 あわせて、上記14政策中、重点的対策が必要な3つの政策について、より詳細な取組内容等を示すために、「東京都気候変動適応方針」「プラスチック削減プログラム」「ZEV**普及プログラム」を策定、公表している。

(参考情報:2019年12月27日付東京都 HP

Social-社会-

<食品ロス>
イオン、食品廃棄物削減イニシアティブ「10x20x30」の日本プロジェクトを始動

イオンは12月11日、2030年までに食品ロス・食品廃棄物の半減を目指すイニシアティブ「10x20x30*」の日本プロジェクトを始動すると発表した。 プロジェクトには国内の食品メーカー等21社が参画する。各参画企業は世界資源研究所**(WRI)の提唱する「目標設定・算定・行動」の取り組み手法に基づき、自社の課題を踏まえて具体的な取組内容を決定。 同社は各社の取り組みに必要な情報提供やパートナーの紹介等を通じ、サプライチェーン全体をつなぎ、食品廃棄物削減に貢献する

(参考情報:2019年12月11日付イオン HP

<ダイバーシティ>
総務省消防庁が外国人や障害者等の安全な避難誘導のための好取組事例を公表

総務省消防庁は12月13日、東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に、駅・空港、競技場、旅館・ホテル等の施設で、外国人や障害者、心身の機能に支障のある高齢者などが、 火災や地震が発生した際に円滑に屋外に避難できるようにするため、先進的な好取組事例(以下、「取組事例」)を公表した。 3月に公表した「外国人や障害者が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導に関するガイドライン(以下「ガイドライン」)」に基づき、各施設の取組状況の調査結果をとりまとめたもの。 同庁では、ガイドラインおよび取組事例に基づき、関係施設に対し取組の実施を指導していく意向。

(参考情報:2019年12月13日付総務省消防庁HP

Governance-ガバナンス-

<ガバナンス>
金融庁がスチュワードシップ・コードの改定案を公表、ESG投資を重視

金融庁は12月20日、機関投資家の行動指針となるスチュワードシップ・コード(以下、「コード」)の改訂案を公表した。 改定案では、運用戦略におけるESGの位置付けの明示などを機関投資家に求める。同コードへのESG投資重視の明記は初。議決権行使助言会社に対し、 日本拠点の設置を含めた人員や組織体制の整備を促す内容なども盛り込んだ。パブリックコメントを経て、2020年春・株主総会シーズンに向けた改定を目指す。

(参考情報:2019年12月20日付金融庁HP

全般・その他

<ESG投資>
ロイヤル・ダッチ・シェル、サステナビリティ連動型融資で100億米ドル調達

石油大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは12月13日、二酸化炭素排出量削減目標の達成度に応じて金利が変動するリボルビング・クレジット・ファシリティを100億米ドル調達したことを公表した。

同社は、二酸化炭素排出量を、短期目標として2021年までに2016年比2~3%、中長期目標として2035年までに同20%、2050年までに同50%をそれぞれ削減する目標を設定。 今回の融資は、短期目標の達成の進捗に応じて、金利と手数料が下がる仕組みになっている。

(参考情報:2019年12月13日付ロイヤル・ダッチ・シェルHP

<SDGs>
政府、2030年のSDGs達成に向けた具体的取り組みを公表、優先8分野に注力

政府は12月20日、2030年のSDGs達成に向け政府の具体的取り組みをまとめたアクションプランを公表した。 ①ビジネスとイノベーション②SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境に優しい魅力的なまちづくり③SDGsの担い手としての次世代・女性のエンパワーメント――を3つの柱に挙げ、 優先8分野*での取り組み具体化・拡充の方針を示した。

(参考情報:2019年12月20日付政府HP

<ESG投資>
ESG投資運用機関アンケート、85%が「日本企業はESGの情報開示が不十分」と回答

経済産業省が12月24日公表した「ESG投資に関する運用機関向けアンケート」の結果によると、「企業のESGに関する情報開示が不十分」との回答が85.4%に上った。 なお、97.9%が企業のESG情報を投資判断に活用と答えた。また、日本企業の賛同数が増加している(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)*について、80%以上が「賛同企業でもTCFD開示が不十分」と回答した。

*企業に、気候変動への対応関する情報開示を促進させることを目的にした組織(Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略)

(参考情報:2019年12月24日付経済産業省HP

今月の『注目』トピックス

<個人情報>
個人情報保護法改正の大綱案を公表、個人の権利と事業者の責務の強化が柱

(参考情報:2019年12月13日付同委HP

政府の個人情報保護委員会は13日、個人情報保護法改正の大綱案を公表した。 自己の個人情報保護に関する個人の権利強化や、情報漏えい発生時の報告義務化など事業者の責務の強化が柱。本大綱について国民から意見募集を行い、今年の通常国会への個人情報保護法改正案の提出を目指す。

個人情報保護委員会「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直し 制度改正大綱」の概要

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