レポート

ESGリスクトピックス 2019年度 No.2

2019.6.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<生物多様性>
持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)が本格始動

3月21日、持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)の第1回総会がシンガポールで開催された。組織定款、行動規範の承認、執行委員会の設立などが決定され、今後本格的に始動する。本プラットフォームは、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)におけるタイヤ産業プロジェクト(TIP)メンバーによって設立された。天然ゴムのバリューチェーンの社会面・経済面・環境面の改善を目的としており、世界的なタイヤメーカー11社をはじめ、天然ゴム生産者、NGOなど39の企業・団体から構成されている。

(参考情報:2019年3月21日付 WBCSD HP

<気候変動>
環境省、パリ協定長期成長戦略案を公表

4月25日、環境省は「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略案」を公表した。同戦略案は政府が掲げている「2050年までに温室効果ガス80%削減」というビジョンを達成するために必要な対策、施策、技術開発の方向性を示したものである。政府は、パブリックコメントを経て、6月のG20大阪サミットまでに長期戦略を国連に提出することを目指している。

(参考情報:2019年4月25日付 環境省 HP

<生物多様性>
IPBES「動植物100万種の絶滅危機」を警告

世界132カ国の政府が参加する「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)は5月6日、政策決定者向けの要約(SPM)を公表した。SPMでは、動植物100万種が絶滅危機にあると警告しており、社会変革が伴う対策がなければ、生態系の機能低下や自然からの恵みが減少する傾向は2050年以降も続くとしている。

(参考情報:2019年5月6日付 IPBES HP

<気候変動>
UNEP-FI、投資家向け気候変動シナリオ分析に関するレポートを公表

5月10日、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP-FI)が主導するTCFD*試行ワーキンググループは、機関投資家向けに気候変動を組み込んだシナリオ分析手法を検討、試行した成果を公表した。同ワーキンググループは、銀行、投資家、保険の3つの分野に分かれており、投資家向けワーキンググループには20の機関投資家が参画している。

* 金融安定理事会が設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の略称であり、2017年6月に投資家や企業が気候変動による事業リスクと機会について評価、開示し、経営判断に組み込むための枠組みを提言する報告書を公表した。TCFDの提言に対して、500以上の企業が賛同を表明している。

(参考情報:2019年5月10日付 UNEP-FI HP

<サーキュラーエコノミー>
バーゼル条約、汚れたプラスチックごみを規制対象に

5月10日までスイス・ジュネーブで開催されたバーゼル条約*第14回締約国会議で、同条約の付属書を改正し、汚れたプラスチックごみを規制対象とすること等が決定した。2021年1月の改正付属書の発効以降は、汚れたプラスチックごみの輸出にあたり、輸出相手国の同意が必要となる。

* 正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」。有害廃棄物やその他の廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制について、国際的な枠組みを定めている。

(参考情報:2019年5月14日付 環境省 HP

Social-社会-

<事業継続>
関西エアポートが機能喪失別対応計画を備えた新BCPを発表

関西国際空港を運営する関西エアポート株式会社は4月17日、2018年9月の台風21号による被害発生を契機に構築した新BCPを発表した。オールハザード対応型のBCPであり、危機管理計画に加え、電力、空港へのアクセスなど、喪失した重要機能ごとの対応計画を備えている点が特徴。

(参考情報:2019年4月17日付関西エアポート社HP

<情報セキュリティ>
経済産業省が、新たなサプライチェーンのサイバーセキュリティ確保を目的としたサイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF)を策定

経済産業省は4月18日、「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF)」を策定した。本フレームワークは「Society5.0」*と「Connected Industries」**によって拡張される新たなサプライチェーン全体のサイバーセキュリティ確保を目的としている。

* 「第5期科学技術基本計画」において提唱された概念で、従来の情報社会(Society4.0)に続く新たな社会を指す。Society5.0では、IoT(Internet of Things)やロボット、AI等の最先端技術を全ての産業や社会に取り入れることで多様化するニーズへ対応し、経済発展と社会課題解決を両立させる社会を目指すとしている。

(参考情報:2019年4月18日付 経済産業省 HP

<情報セキュリティ>
NISCが国内重要インフラの情報セキュリティ確保のため安全基準等策定指針の改訂案を公開

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は4月19日、「重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る安全基準等策定指針」改定案を公開した。今回新たに、クラウドサービス等インターネットを介したサービス利用時の留意点やデータセンターの災害対策強化などが盛り込まれた。

同指針は原則3年ごとに見直す決まりで、今回は重要インフラ分野*に「空港」が追加されたことなどの環境変化を踏まえた改定。同指針は、国内の重要インフラ分野に係る事業者等が情報セキュリティ対策を進める際に参照することを目的に設定されている。

(参考情報:2019年4月19日付 NISC HP

<ワークライフバランス>
日本マイクロソフトが働き方改革の加速に向け、「ワークライフチョイス」推進プロジェクトを本年夏に実施

日本マイクロソフトは4月22日、自社の働き方改革の加速に向けた実践プロジェクト「ワークライフチョイス* チャレンジ 2019夏」を本年夏に実施すると発表した。週勤4日&週休3日制トライアル、ワークライフチョイスに取り組む社員に対する支援プログラムの実施に加え、その効果を測定し結果を公表する。

* 同社の働き方改革の基本理念。社員一人一人が、仕事や生活の事情や状況に応じた多様で柔軟な働き方を、自らが選択できる環境を目指すもの。

(参考情報:2019年4月22日付 日本マイクロソフト社HP

Governance-ガバナンス-

<内部通報制度>
商事法務、内部通報制度自己適合宣言の登録事業者の公表を開始

消費者庁が導入した内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の指定登録機関である商事法務研究会は5月10日、自己適合宣言の審査基準を満たしているとして登録を認めた事業者の同法人HPで公表を開始した。同日時点の登録事業者数は8社。

(参考情報:2019年5月10日付 公益社団法人商事法務研究会 HP

<コーポレートガバナンス>
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が、コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた意見書を公表

「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が4月24日、コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性(意見書4)を公表した。

意見書では、運用機関及び議決権行使助言会社、運用コンサルタントがより深く企業を理解して対話すること、アセットオーナーが運用機関に対する働きかけ・モニタリングをより積極的に行うことが、コーポレートガバナンス改革の実効性を高めるうえで極めて重要であるとした。

(参考情報:2019年4月24日付金融庁HP

全般・その他

<情報開示>
S&Pグローバル・レーティングが企業のESGリスクへの取り組み実態を評価するサービスを開始

S&Pグローバル・レーティングは4月11日、企業のESGリスクへの取り組み実態を評価するサービス(ESG Evaluation)を開始した。同サービスの評価項目は「ESG Profile」と「ESG Preparedness」の2つで構成され、前者は顕在化しているESG課題に対する当該企業の対応実態について評価し、後者は将来のESGリスクと機会に対する当該企業の対応能力の程度を評価する。

(参考情報:2019年4月11日付 S&PグローバルHP

<ESG投資>
CECPが企業の長期経営計画を公表する際の推奨テンプレートを発表

CECP*(Chief Executives for Corporate Purpose)は4月23日、企業が長期経営計画を投資家向けにプレゼンテーションする際の推奨テンプレートを発表した。テンプレートでは、リスク管理やコーポレートガバナンス等、長期経営計画において投資家に提示すべき項目・要素のほか、長期経営計画を策定する意義等についてまとめている。

* 「企業の成功はステークホルダーとの関わり方によって決まる」という考え方を共有する企業のCEOが中心となり構成した組織。グローバル企業250社のCEOが参画している。

(参考情報:2019年4月23日付 CECP HP

今月の『注目』トピックス

<情報管理>個人情報保護委員会が改正個人情報保護法の原案を公表

(参考情報:2019年4月25日付 同委員会HP

政府の個人情報保護委員会は4月25日、改正個人情報保護法の原案である「個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理(案)」(以下「原案」という)を公表した。

原案では、EUの一般データ保護規則(GDPR)を参考に、主に以下の6つの個別検討事項について現状と検討の方向性をとりまとめた。個人が情報の利用停止等を求めた場合の事業者側の対応義務付けなど、個人の権利範囲を広げる方向での検討の必要性が盛り込まれた点が注目される。

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