レポート

2020年度 No.1「新型コロナウイルス感染症 中国に見るピークアウト後の社会状況」

2020.4.1

要旨

  • 日本では新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない一方、中国は他国に先駆けて2月中旬にピークアウトし、市民生活や企業活動は正常な姿に近づきつつある。
  • 感染が収束しつつある中国において、ピークアウト後の市民生活や企業活動にどういった変化が訪れているのか、どういった課題が残存しているのか、上海を例にその現状を説明する。

1. .落ち着きを取り戻しつつある中国

中国では武漢が閉鎖された1月23日前後より新型コロナウイルス感染者が爆発的に増加し、市民生活・企業活動とも混乱を極めた。上海に在住している筆者も、かつての活気を失い人通りが絶えた市内での自宅立てこもり生活、 2月12日の外務省声明(在留邦人に日本への早期帰国を求めた)を受けての日本退避、日本での自主隔離生活、上海に戻っての強制隔離生活、2ヶ月以上断続的に続いた在宅勤務等、短期間の間に様々な出来事を経験した。 官民による徹底的な封じ込め対策が奏功して、中国における感染者数(治癒者、死亡者を除く)は、2月中旬に約5.8万人でピークアウトし、現在では極めて低い水準で安定的に推移している(図1)。

日本の感染者数の推移(図2)と比較すると、ピークアウトが見通せない日本の現状は、中国の2月上旬に似た状況にあるといえる。この頃の中国は、現在の日本と同様、連日新規感染者数の増加に関するニュースが繰り返し報じられ、 事態の収束が見通せない状況に多くの国民が最も強い不安を感じていた時期であったといえる。

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