レポート

2019年度 No.2「江蘇省の化学工業を取り巻く動向について」

2019.5.1

要旨

  • 中国各地の工場で大規模な爆発が続発し、工場の安全管理に関心が集まっている。
  • 江蘇省政府は、省内の化学工場を4,000社から1,000社まで削減することを含む政策案を公表して意見募集を始め、企業関係者に衝撃を与えている。
  • 安全管理の不十分な企業の淘汰が加速する可能性があり、自社の安全管理の再徹底に加えて、サプライヤーの安全対策にも注視する必要がある。

1. 化学工場における爆発事故の続発

今年4月1日、江蘇省政府は、現在省内に4,000社余りあるとされる化学工場を、2022年までに1,000社以下まで削減することを含む政策案を公表し、パブリックコメントの募集を始めた。化学系企業関係者の間では、工場の閉鎖やサプライチェーンへの影響を懸念する声が上がっている。

中国では、工場における安全生産事故(生産の安全に関する事故)が頻発しており、各地方政府は企業に対する監視を強めている最中である。江蘇省政府が今般かなり踏み込んだ政策案を公表した直接的な契機のひとつは、2019年3月21日に同省塩城市の化学工場で発生した大規模な爆発事故である。

この爆発事故は、近隣工場や地域住民を含めて現時点までに78名が死亡する大惨事を招いた。複数の動画サイトには、爆発の瞬間を記録した動画が投稿されており、爆発に伴う火炎や衝撃の凄まじさをうかがい知ることができる。

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