レポート

第22号「労働災害で最も多い「転倒災害」の動向と対策」

2016.9.1

1.はじめに

全産業の休業4日以上の死傷災害において最も多く発生する事故の型が、平成17年に「墜落・転落」から「転倒」に変わって以来、転倒災害は現在に至るまで最多発生率となっている(図表1)。厚生労働省および労働災害防止団体では、転倒災害の減少を図るため、平成27年1月から「STOP!転倒災害プロジェクト2015」を開始した。転倒災害の防止に重点的に取り組んできたものの、依然として最も件数が多く、期限を設けずに平成28年から「STOP!転倒災害プロジェクト」として継続している。本稿では、その動向・原因・対策等について紹介する。

2.転倒災害の動向

(1)年代別転倒災害の発生状況

転倒災害は、年齢とともに増加する傾向が見られ(図表2)、20歳代に比べると50歳以上の労働者では、約7倍の死傷者数となっている。これら転倒による被災者数の増加には、加齢によるバランスや筋力などの身体機能の低下が関連していると考える。

なかでも平衡機能の低下は顕著で、20歳代の各種身体機能を100%とすると50歳代でおよそ48%にまで低下している(図表3)。また、薄明順応(暗い所に入った際により早く暗さに順応して物が見えるようになる能力)も36%に減少している。これらは、高年齢の労働者は、平衡機能を必要とする高所作業や暗がりにおける段差や階段などでの作業において特に注意が必要であることを示している。

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