レポート

2016年度 No.2「タンクローリー横転事故で巨額賠償発生」

2016.9.1

1.はじめに

今年8月4日、群馬県を拠点に燃料運送業務を展開していたA社が破産手続き開始決定を受けた。同社のタンクローリーは2008年8月3日早朝、首都高速道路の熊野町ジャンクション付近で横転し、積載していたガソリンや軽油が大量に流出、引火して大火災を起こした。高速道路は高架部分の架け替えなど全面的な改修が必要となり、完全復旧まで2か月半を要した。その後首都高速道路株式会社から損害賠償請求を起こされ、今年7月に裁判所より下された約33億円の支払い命令に応えられなかったものである。

本稿ではこの重大事故の概要、並びに過去発生したタンクローリーの主な事故事例、そして危険物を輸送する事業者が「交通事故」を防止する観点で考えておくべきことについて概説する。

2.タンクローリー横転事故の概要

(1)事故の概要

A社の当該業務は、大手石油業者との運送契約を交わした運送業者からの下請けで、ガソリン16,000ℓと軽油4,000ℓを積載し、都内にある大手石油業者の油槽所からサービスステーションの給油所まで運送することになっていたが、事故は運送途中に起こった。東京都板橋区の首都高速道路熊野町ジャンクションの現場付近は右カーブで最高速度が50km/hに制限されており、路面にも速度に注意することを促す表示がされていた。

会員登録で レポートを全て見る