レポート

2021年度 No.9「2011年タイ大洪水を振り返って(その1)」

2022.1.1

※本稿は三井住友海上タイ支店と共著でバンコク日本人商工会議所・所報
(No.715、2021年11月号)に掲載した記事を基に再構成しています。

1. 2011年タイ大洪水の概況

タイ経済に深刻な影響をもたらし、またタイ進出日系企業へも大きな打撃を与えた2011年のタイ洪水(以降、「大洪水」)から10年が経過した。大洪水はタイ日本人社会・経済に大きな衝撃を与えた。一方、日本人駐在員には定期異動もあり、 総じて日本人の間では大洪水による甚大な苦難の記憶が風化してきているように思われる。そこで本稿では大洪水から10年が経過したのを機に、大洪水がいかに激しい災害であったかをあらためて振り返り、タイ自然災害の特徴を概観する。

(1) 大洪水の概況

大洪水の被害はタイの広範囲にわたった。全77県のうち65県が被災し、死者815名、約950万人が被害を受けたとされる。2011年の5月と8月は歴史的に見ても極めて雨量が多い月であったほか、6月と7月には 台風が襲来するなど(台風4号:HAIMA、台風8号:NOCK-TEN)、年間を通じて非常に多雨な年(例年の1.4倍)であった。

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