レポート

地球環境との共生(Planetary Health)にむけて~ 原口真(講演:WWFジャパン生物多様性スクール②)リサーチ・レター2023年第4号

2023.9.1

2023年6月21日、WWF(世界自然保護基金)ジャパンが主催する「WWFジャパン生物多様性スクール第4回『生物多様性と金融』」に、MS&ADインターリスク総研 基礎研究部 フェロー/MS&ADインシュアランスグループホールディングス TNFD専任SVPの原口真が登壇した。本稿ではTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)メンバーである原口の発表について紹介する。なお、その1、その2の2部構成としており、今回は2回目のご案内となる。

1. TNFDについて

(1) 体制

TNFDタスクフォースは共同議長デビッド・クレイグ氏とエリザベス・ムレマ氏の2トップ体制である。クレイグ氏はロンドン証券取引所グループ傘下の金融データ会社の前社長、ムレマ氏は国連生物多様性条約の前事務局長であり、金融のプロと生物多様性のプロが共同議長を務めている。その下に、金融機関、事業会社、監査法人、格付会社等から来たメンバー、総勢40名がいる。

(2) TNFDの開発するフレームワーク

TNFDは、自然に関するリスク管理と情報開示のフレームワークの開発を目指している。TNFDの究極の目的は、世界のお金の流れをネイチャーネガティブからネイチャーポジティブに転換させることである。「その1」でも触れたが、経済を20世紀型から21世紀型に転換し、お金の流れを変えるためには、共通のフレームワークでリスク管理し、情報開示を行う必要がある。

また、TNFDでは「気候と自然の統合」を最初から意識してフレームワークの開発を行っている。これは、再生可能エネルギーを進めるためにメガソーラーや風力発電設備を設置することでその土地の自然が破壊されたり、電気自動車や電池の需要が増えればレアメタル採掘現場の自然が壊されたりするなど、脱炭素の取り組みが自然の棄損につながるという事例が発生しているからである。

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