レポート

保育の質確保は保育士の労働環境改善から リサーチ・レター2019年第1号

2019.11.1

要旨

  • 「女性活躍の目標80%就業の推進」を背景に待機児童ゼロを目指し、政府は児童の受入施設の増設を推進している。その結果、保育士の数が追い付かず保育士不足となっている。
  • 保育園での重大事故がゼロにならない。その中で死亡事故の大半が認可外保育園における0歳児・1歳児の睡眠中の事故である。
  • 保育の無償化は多くの保護者には評判が良い。一方、潜在的待機児童の増加により保育士不足が加速し、取り巻く環境に悪影響が出ることが懸念される。
  • 保育士の労働条件は他の業界と比較して悪く、労働条件の改善は喫緊の課題である。将来を担う人材育成という意味で、保育士の質を確保・向上することは重要である。早期に踏み込んだ対応が必要と考える。

背景

「ニッポン一億総活躍プラン」における「女性活躍の目標80%就業の推進」を背景に待機児童が社会問題化するなか、政府は児童の受入れ施設の増加を推進している。しかしながら保育士が十分に確保されず保育の質が低下し、現場では事故やトラブルが相次いで発生している。また、保育士を取り巻く労働環境(給与面や業務量、人間関係など)が厳しいために、保育士資格を持ってはいるものの保育園で働いていない潜在保育士が76万人以上も存在する。政府は「保育士確保集中取組キャンペーン」を展開するなどして、保育士の掘り起こしに動いている。2019年10月には消費税を10%に引上げると同時に、こども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)の一部を改正し「保育の無償化」1を開始した。無償化実施後にどのような影響が出てくるのか。また改善策はどのようなものが考えられるのか。以下のとおりレポートする。

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