レポート

2014年度 No.1「大学に求められる海外危機管理」

2014.7.1

はじめに

近年、社会経済のグローバル化に伴い、国際的に活躍できる人材の育成が求められていることから、多くの大学が学生の海外留学を積極的に支援している。しかし同時に、海外留学した学生らが、現地で様々な事件、事故に巻き込まれるリスクも増加している。資料1は、邦人学生が海外で巻き込まれた事件、事故の統計である。

1. 大学における海外危機管理の必要性

(1) 安全配慮義務

留学生が海外で事件、事故に遭った場合、所属大学にはいかなる責任が生じるのだろうか。

まず、法的には、大学と学生の間には在学契約が成立しており、同契約に付随して、大学は学生に対して安全配慮義務を負うと考えられている。

留学の場合、大学による教育の一環ではあるが、物理的な距離の問題もあるため、大学が国内と同様の管理・監督を行うことは容易ではない。また、旅行代理店へ旅程の企画等を委託した場合、旅行代理店に法的責任が発生することも考えられる。

しかし、以上をもって、大学が完全に法的責任を免れるものではない。大学・学部によっては、学生の完全な自由意思ではなく、留学を事実上単位修得の要件にするケースもあるし、学生は社会人に比べ、リスクに対する意識も希薄になりがちである。このため、留学生が危機に見舞われた際に、「学生の自己責任である」と安易に断じることはできないと考えるべきである。少なくとも、渡航先において想定されるリスクや当該リスクへの対策状況の確認など、学生の安全を確保するための合理的なレベルの支援が大学には期待されるであろう。

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