レポート

特別号「改めて海外危機管理を考える 」

2014.2.1

はじめに

2013年1月16日に発生したアルジェリアにおけるテロ事件では、多くの尊い命が奪われました。被害に遭われた企業および役職員の方々のこれまでの事業活動に敬意を表し、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り致します。

本稿は、今回のテロ事件を契機として、「日本企業における海外危機管理の基本原則」を改めて整理すると同時に、「危険地域進出に関する経営判断の基本的な考え方」および「テロ活動を抑止するための企業の取組」について考察したものです。事業活動に伴う海外における危機は多種多様ですが、ここでは役職員の身体生命への危険を主眼としています。

本稿記載事項を参照いただくことにより、同種リスクの低減や回避が即座に可能となるわけではありませんが、読者の皆様が今後の海外危機管理のあり方を改めてご検討いただく一助となることを念頭に置いて記述しています。

1. 海外危機管理の先進的企業を襲ったテロ事件

2013年1月16日、アルジェリアのイナメナス付近の天然ガス精製プラントをイスラム系武装集団が襲撃し、本プラント建設に従事していた関係者が拘束され、日本人10名を含む33名の外国人が亡くなるという大惨事となった。33名は、日本人10名、フィリピン人8名、イギリス人3名、ノルウェー人3名、アメリカ3名、現時点で身元が確認できていない外国人が少なくとも 6名と報道されている。(1月 27日時点)

今回のテロ事件により企業が被った直接的・間接的なダメージ、その波及的な影響は計り知れないものがある。

本プラントは、平時よりアルジェリア軍により厳重に警備されていたといい、そのような環境下で発生したことに鑑みれば、一企業がこの危機を回避するために、アルジェリアやその他関係国の政府や軍における情報収集や警護以外に、積極的に何らかの対策を講じることができたとは考えられない。本事件の結末のみに着目し、企業の危機管理体制や対策に不備があったとの可能性を指摘するのは決して妥当とはいえない。企業が講じてきた種々の対策についても、今後のセキュリティ確保を考えれば、全て開示しないことが賢明であり、あえて公の場で問うべきではないだろう。

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