レポート

2022年度 No.2「人的資本の潮流 」

2022.9.1

要旨

  • 人的資本のみならず、気候変動や人権問題等の非財務情報開示については、今まさに世界的な潮流になっており、人的資本に取組むに当たっては《人的資本経営》と《人的資本開示》という2つの流れを意識する必要がある。
  • 2021年6月の【コーポレートガバナンスコード改訂版】で人的資本関連事項が盛り込まれたところだが、本年6月に金融庁のWGから示された通り、今後は有価証券報告書において人的資本の制度開示が求められることになる。
  • 一方、内閣官房からは《既存の基準等の活用方法を含めた人的資本情報開示の在り方を包括的に整理した手引き》としての【人的資本可視化指針】が8月末に正式に公表された。
  • この指針では、人的資本可視化の方法に加え、可視化に向けたステップや準備、ISO30414等の任意開示の戦略的活用などのポイントが示されており、今後、企業は本指針に基づいて、自らの人的資本をどう磨き上げ、投資家等に開示していくかが問われることになる。

1. 人的資本の情報開示をめぐる日本国内の動向

人的資本への取組みを考える際には《人的資本経営》と《人的資本の情報開示》という2つの流れを意識する必要があるが、ここでは人的資本の情報開示について説明したい。

ご承知の通り、本年4月から気候変動(TCFD)の開示が義務化された。ESG投資への関心の高まりもあり、自然関連(TNFD)や人権問題なども重要な課題として開示が検討されているが、無形資産を生み出す原動力として極めて重要視されている人的資本の開示も今や世界の潮流となっている。

このような状況下、日本国内では、2021年6月に東京証券取引所から公表された【コーポレートガバナンスコード改訂版】において、人的資本に関連する以下の3点をはじめとするガバナンスの諸課題に対し、企業がスピード感をもって取組むことが重要であるとされた。

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