レポート

第18号「ISSBの好敵手?もうひとつのサステナ開示国際基準」

2023.3.1

本号の概要

  • サステナビリティ情報の国際的な開示基準は、ISSBに統合する動きが注目を集める中、EUでも重要なルールの整備が進行中だ。EU基準の柱となるのが「CSRD」。前身制度(NFRD)と異なり法的な拘束力のある強力なガイドラインを備えて最終承認された。
  • CSRDに加え、持続可能な経済活動を判定するタクソノミー、金融機関の投資におけるサステナビリティを明確化するSFDRの三位一体でEU域内でのサステナブルファイナンスの実現を目指す。顧客や取引先、機関投資家が企業の持続可能性を判断する未来像を描く。
  • 欧州の開示基準は、財務面に加えて企業が環境・社会に与える影響を考慮する「ダブルマテリアリティ」を採用。TCFDや日本の現行ルールとは異なる。2028年にはEU域内の外国企業にもCSRDが適用の見込み。グローバルに活動する日本企業も要注目だ。

1. はじめに

企業のサステナビリティ情報の開示基準は、乱立から統一のフェーズへと舵を切りつつある。2020年9月、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、気候変動情報開示審議会(CDSB)、グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)、国際統合報告評議会(IIRC)、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)の基準設定機関5団体は、包括的な企業報告に向けた共同声明を公表。21年6月にはIIRCとSASBの合併で価値報告財団(VRF)が設立された。同年11月には国際会計基準(IFRS)財団が国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を立ち上げ、設立から間もないVRFとCDSBを取り込んで統合した。

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