レポート

第17号「生き残るためのマテリアリティ」

2023.1.1

本号の概要

  • 「マテリアリティ」はサステナビリティ情報開示を考える上で重要な概念である。現在は多くの開示基準やガイドラインが乱立しており、マテリアリティの単一・明確な定義は存在しないとされる。しかしながら、各企業に固有の経営課題を語る概念として、今後も企業情報開示における重要性はさらに高まることが予想される。
  • 単一・明確な定義は存在しないものの、情報開示における重要概念として活発な議論が展開されてきた歴史があり、シングルマテリアリティやダブルマテリアリティ、ダイナミックマテリアリティといった多様な考え方が存在する。定義が明確ではないゆえに、統合報告書などの開示資料においては、固有の経営課題を示すだけでなく、マテリアリティの特定プロセスの記載やその説明も期待される。本稿では具体的な事例として、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの担当者に同社グループにおけるマテリアリティの位置付けや特定プロセスについて話を聞いた。
  • 情報開示の実務においては、開示のためにマテリアリティを策定するのではなく、経営理念に結び付いたものとして課題の抽出を行い、KPIの設定等によりその先の実践へとつなげていくことが重要である。開示基準の変化や趨勢に動揺しないサステナビリティ開示やIRの体制を構築するためにも、経営理念を実現するツールとしてマテリアリティを使いこなす姿勢が求められる。

1. 重要性が高まるマテリアリティ

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)や現在ガイドラインの議論が進められている国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)など、様々なサステナビリティ情報開示のガイドラインにおいて、共通して取り上げられる項目のひとつが「マテリアリティ(重要課題)」だ。

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