レポート

第13号「SBTNイニシャルガイダンスに見る、企業に求められる自然に対する目標設定と情報開示」

2022.3.1

本号の概要

  • 本稿では、2020年9月に公開された「SBTN(Science Based Targets for Nature:自然に対する科学に基づく目標)イニシャルガイダンス」の内容を踏まえ、そのポイントを整理する。SBTNイニシャルガイダンスからは、 将来的にSBTNの枠組みにおいて企業に要求される、自然に対する目標設定と情報開示のあり方の方向性を読み取ることができる。
  • SBTNは、Science Based Targets イニシアチブ(以下、SBTi)の活動に基づいた枠組み。SBTiは、WWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブである。既に、科学的知見と整合した 温室効果ガス排出量の削減目標の策定についてはガイダンスや方法論を公開し、企業に目標策定を促している。
  • 今回イニシャルガイダンスが公開されたSBTNの枠組みでは、科学に基づいた目標を設定する対象が、温室効果ガスの排出などの気候への影響に留まらず、気候を含む"自然"に対する影響や依存にまで拡大された。本枠組みにおいて企業は、 自社およびそのバリューチェーンの自然に対する影響と依存について、現状の評価、優先順位付け、必要なデータの収集、目標の設定と達成のための具体的なアクション、そしてその進捗状況の追跡と情報開示を行うことが求められる。
  • SBTNイニシャルガイダンスでは、統合的な目標の設定手法の開発に向けて、SBTN策定に取り組む意義、基本的な考え方、SBTN設定のステップ(「分析と評価」、「結果の理解と優先順位づけ」、 「計測と目標設定と情報開示」、「計画の策定と行動」、「進捗状況の追跡」から成る5つのステップ)や、それぞれのステップにおける基本的な考え方や方針、企業の目標設定を支援する暫定版のツールなどを公開している。
  • 2021年6月6日にはTNFD(自然関連財務開示タスクフォース)が正式に発足するなど、気候に留まらない"自然"に対する情報の整理と開示が企業に求められる時代がすぐそこまで来ている中、企業には自社やバリューチェーンの自然に 対する影響や依存に関して、先行して情報収集や整理を開始することが求められる。

1.はじめに

現在「気候」というテーマに留まらない、陸域・海域・淡水域、水資源、生物資源、生態系などを含む「自然」に対する目標策定や情報開示の要請が強まっている。

企業に対して気候変動に関する情報開示を要請する明確なイニシアチブが生まれたのは2014年頃で、国連気候サミットと同時期に「SBTi(Science-based Target initiative):科学的根拠に基づく目標イニシアチブ」が設立された。

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