レポート

第38号「自然資本をビジネスプロセスに組み込む」

2016.3.1

1. はじめに

2012年6月の国連持続可能な開発会議(リオ+20)の前後から、「自然資本(Natural Capital)」という言葉が、持続可能性やCSR分野の議論で頻繁に使われるようになりました。先進企業が、自社が影響や依存する自然資本を貨幣評価し、企業会計と対比して捉えようとする「自然資本会計」を試みる事例も増えています。このような自然資本の基本的な考え方、その考え方の国際的な広がり、企業の取組みのあり方について、過去の筆者レポート1でもご紹介しました。

筆者は2015年11月23日から2日間にわたって英国のエジンバラで開催された「自然資本世界フォーラム2015(WFNC2015)」に参加しました。このシンポジウムには14か国から約500名が集まり、スコットランド首相をはじめ、生物多様性事務局、国際自然保護連合(IUCN)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)、グローバル・レポ―ティング・イニシアチブ(GRI)などの様々な要人も参加しています。分科会では先進企業や国際機関、NGOなどによる事例発表も多数行われ、シンポジウムに合わせて自然資本連合(後述)から「自然資本プロトコル」草案も公表されました。これを受けて、本レポートでは企業と自然資本をめぐる昀新動向について考察します。

2.自然資本という考え方

様々な定義がありますが、自然資本は「人々に便益をもたらす再生可能及び非再生可能な自然資源(生物多様性、土壌、水、大気、鉱物など)のストック」のことです。この自然資本のストックが、生態系サービスや非生物サービスというフローを生み出し、社会経済に価値を提供しています(図表2)。

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