レポート

<第94号>「2023年台風第2号と梅雨前線による豪雨災害について」

2023.6.1

要旨

2023年5月31日から6月3日にかけて大雨により広い範囲で被害が発生しました。被害に遭われた皆様には心からお見舞い申し上げます。

本レポートでは本災害の概要について、気象状況と被害状況をもとに報告します。なお、本レポートは2023年6月15日までの情報に基づいて作成しています。

1. 気象概要

(1) 台風2号の概要

2023年5月20日15時頃にカロリン諸島付近で発生した台風2号は、海面水温の高い海域を西よりに進み、25日には猛烈な勢力に、26日には中心気圧が最低の905hPaまで発達した。台風は一般に海面水温が26~27℃以上の海域で発達する。今回は2023年の年明け頃まで続いていたラニーニャ現象の影響により、フィリピンの東の海面水温が30℃以上と記録的に高く、台風の発達に寄与した。

その後、海水温の低い海域を勢力を弱めながら進み、沖縄の南で東北東に進路を変え、6月2日に沖縄本島付近を通過した。そして、日本の南を衰弱しながら東北東に進み、3日15時頃伊豆諸島付近で温帯低気圧に変わった(図1)。

(2) 日本付近の気圧配置と天気の概要

6月1~3日は西日本から東日本にかけて梅雨前線が停滞していた。また前線の南側には台風2号が位置し、日本のはるか東に中心を持つ高気圧との間で等圧線の間隔が狭くなっていた。台風や高気圧から下層の非常に暖かく湿った空気が前線に向かって流入した。一方、前線の北側には乾燥した空気があり、大気の状態は非常に不安定となっていた。そのため前線付近の対流活動が活発となり、各地で線状降水帯による非常に激しい雨が解析されている(図2)。

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