レポート

第75号「地震後の建物安全確認の必要性と対応のポイント」

2017.4.1

はじめに

大地震発生後に建物内に留まり続けることができるか否かは、以降の初動対応、事業継続活動に大きな影響を及ぼす重要な事項であり、迅速かつ的確に判断する必要がある。

各社の初動対応マニュアルやBCP(事業継続計画)でも、地震後に建物の被害状況を確認するよう定めている例は多いが、その判断手法や手順まで整備している例は少ないように見受けられる。本稿では、地震発生後に自社で建物の安全確認を行うことの意義や、手法、対応のポイントについて解説する。

1.建物緊急点検の背景

(1)大地震と余震

2011年3月に発生した東日本大震災から6年が経過したが、未だに岩手県沖から千葉県東方沖にかけての領域では、東日本大震災以前に比べて2倍以上の活発な地震活動状況にある1)。また既報2)のとおり、2016年4月に発生した熊本地震では、4月14日に発生したM6.5の地震の28時間後、4月16日にM7.3の地震が発生し、ともに最大震度7を記録したことは記憶に新しい。

過去、比較的大きな地震(本震)が発生した場合、その近くでは最初の地震より小さな地震(余震)が続発すると考えられてきた。しかし、熊本地震の教訓から、大地震後には最初の大地震と同等程度の地震に備えることを基本的な対応とすべきである。そのため、大地震後は建物の耐震性が低下していないかを確認した上で建物の使用可否を判断する必要がある。

(2)建物の耐震性

建物の耐震基準は1981年6月の建築基準法改正により大きく変更され、建物に求められる耐震性が大きく向上されたため、一般的にこの改正以前の基準を旧耐震基準、以降の基準を新耐震基準と呼んでいる。旧耐震基準と新耐震基準の概要を図1に示す。

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