レポート

ESGリスクトピックス 2023年度 No.7

2023.10.1

<気候変動>
国連環境計画、「世界の気候変動訴訟報告書」を公表

国連環境計画(UNEP)は7月27日、気候変動の影響を受けた人々やNGOが、企業や政府などを相手に起こす気候変動訴訟に関する動向をまとめた「世界の気候変動訴訟報告書」を公表した。同様の報告書は2017年と2020年にも公表されており、今回の報告書は3回目の発行となる。

報告書によると、気候変動訴訟の件数は2017年版で884件、2020年版で1,550件、2023年版で2,180件であり、報告書ごとに調査法域は拡大している影響はあるものの、全体として訴訟件数は増加傾向にあると言える。

(参考情報:2023年7月27日付 国連環境計画HP

<生物多様性>
グリーンインフラ推進戦略2023 策定官民の両輪でグリーンインフラの普及・実装を目指す

国土交通省は9月8日、グリーンインフラの本格的な実装フェーズへ移行するための「グリーンインフラ推進戦略2023」を公表した。ネイチャーポジティブやカーボンニュートラル、GX等の世界的潮流を背景に、2019年に策定された前戦略を全面改訂した。2023年の戦略はグリーンインフラの目指す姿(「自然と共生する社会」)や、取組に当たっての7つの視点(「連携」「コミュニティ」「技術」「評価」「資金調達」「グローバル」「デジタル」)を示すとともに、官と民が両輪となって、あらゆる分野・場面でグリーンインフラを普及・実装することを目指し、国土交通省の取り組みを総合的・体系的に位置づけている。

(参考情報:2023年9月8日付 国土交通省HP

<生物多様性>
外来種による損失は世界で62兆円超、企業も主体的対策求められる

外来種(元来その種が生息しない国や地域に持ち込まれた生物)の侵入による全世界の年間経済的損失が、2019年は4,230億米ドル(約62兆円)にのぼることが分かった。9月2日までドイツ・ボンで開催された「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」の総会で発表された。商品の輸出入を通じて侵入することも多いため、企業にも主体的な防止対策が求められる。

(参考情報:2023年9月5日付 環境省HP

<ビジネスと人権>
不平等と差別の構造、「解体が緊急に必要」、国連人権作業部会が日本調査で表明

国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」の普及促進を目的とする国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は8月4日、訪日調査のミッション終了声明を公表。その中で、日本国内に、官民による取り組みが不十分な人権課題に「懸念を抱く」とし、女性や障がい者、外国人労働者などのぜい弱な対象への「不平等と差別の構造の完全な解体が緊急に必要」と表明した。

(参考情報:2023年8月4日付 国際連合人権高等弁務官事務所HP

<労働災害>
厚生労働省が「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を改正

厚生労働省は9月1日、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正した。今回の改正は、近年の社会情勢の変化や労災請求件数の増加等に鑑み、本年7月に、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」(以下「専門検討会」という)が取りまとめた報告書に基づいて行われた(改正のポイントは、ESGリスクトピックス「2023年度第5号」を参照)。

今回の改正で、認定基準の「業務による心理的負荷評価表」に記載されている「具体的出来事」について、「出来事の類型」の追加や統合、「心理的負荷の強度を『弱』『中』『強』と判断する具体例」の拡充が行われた。

(参考情報:2023年9月1日付 厚生労働省HP

日本監査役協会が取締役のコンプライアンス意識調査の結果を公表

公益社団法人日本監査役協会は2023年8月8日、取締役のコンプライアンス意識調査の結果を公表した。本調査は、企業不祥事の未然防止のためには、取締役における法令遵守の精神が重要であるとの考えのもと、「取締役のコンプライアンス意識」をテーマに設定し行われ、2,655社から回答があった*。

本調査結果によると、「貴社の取締役のコンプライアンス意識について最も近いものはどれですか?」という設問に対し、「どちらかというと、業務の執行が優先されている」と回答した割合が8%、「コンプライアンス意識が希薄、または、話題となる事が少ない」と回答した割合が2%であった。

(参考情報:2023年8月8日付 公益社団法人日本監査役協会HP

<情報開示>
証券取引等監視委員会が「令和4事務年度開示検査事例集」を公表リスク不開示に勧告

証券取引等監視委員会は8月31日、「令和4事務年度開示検査事例集」を公表した。監視委は金融商品取引法に基づき、企業が開示する有価証券報告書(有報)などの公開情報に不備や虚偽がないか検査を実施しており、重大な開示規制違反が判明した場合には当該企業や金融庁長官等に、訂正報告書の提出や課徴金納付命令の勧告を促している。事例集は開示規制違反の発生を未然に防ぐため毎年作成しており、今回は新たに追加された4件を含む計45事例について、概要や原因、背景などをまとめた。

(参考情報:2023年8月31日付 証券取引等監視委員会HP

<サイバーセキュリティ>
サイバー管理・対策の共通言語がアップデートNISTが「NIST Cybersecurity Framework2.0」の草案を公表

米国国立標準技術研究所(NIST)は2023年8月8日、多くの企業・組織でサイバーセキュリティリスク対策・管理に活用されている「NIST Cybersecurity Framework 1.1(以下、 NIST CSF1.1)」の後継となる「NISTCybersecurityFramework2.0(以下、 NISTCSF2.0)」の草案を公表した。本フレームワークは「識別(Identify)」、「防御(Protect)」、「検知(Detect)」、「対応(Respond)」、「復旧(Recover)」で構成される5つのコア要素(フレームワークコア)と、それぞれの要素に対する4段階の評価軸(インプルメーションティア)を元に、網羅的にサイバーセキュリティリスク対策・管理の成熟度が評価できる。

(参考情報:2023年8月8日付 NIST「NIST Drafts Major Update to Its Widely Used Cybersecurity Framework」

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