レポート

ESGリスクトピックス 2023年度 No.6

2023.9.1

<気候変動>
7月の世界平均気温は観測史上最高を記録

欧州委員会が環境観測を行うために運営しているプログラムである、Copernicusは8月8日、2023年7月の世界平均気温が1940年からの観測史上で最も高くなったと発表した。今年の7月の月平均気温は1991年~2020年7月までに平均気温よりも0.72℃高く、過去最も暑かったとされる2019年7月よりも0.33℃高かった。また、今回の気温は産業革命前の水準より1.5℃高く、パリ協定の目標を上回ったことがわかった。

(参考情報:2023年8月8日付 World Meteorological Organization HP

<コーポレートガバナンス>
経済産業省が社外取締役研修のポイントとケーススタディ集公表 基礎と応用の双方強化

経済産業省は6月30日、企業の社外取締役に対する研修・トレーニングについてのポイントをまとめ、公表した。社外取締役の質の向上は、コーポレートガバナンス強化の鍵になるとされており、経産省が立ち上げた研究会や、金融庁が4月に公表した「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」でも、研修などを通じた社外取締役のスキルアップの重要性に言及している。

(参考情報:2023年6月30日付 経済産業省HP

<情報開示>
プライム企業は2030年に女性役員比率30%達成を、政府方針受け東証が規定化

東京証券取引所は7月28日、プライム市場上場の国内企業に、2030年までの女性役員比率30%以上の達成を求める規定を発表した。政府が6月に公表の「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」で掲げた数値目標を反映した。

規定がプライム上場企業に求めるのは以下①~③。

①25年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める。

(参考情報:2023年7月28日付 日本取引所グループHP

<自然資本>
EUで森林破壊デューデリジェンス規則が発効、EU内流通と域外輸出が対象、違反は罰金も

森林破壊・劣化防止を目的としたEUのデューデリジェンス規則が、6月29日に発効した。これにより企業は、EU市場で流通またはEUから輸出される規制対象商品が森林破壊・劣化と無関係であることを確認するデューデリジェンスを実施する必要がある。違反した場合には、当該事業者のEU域内における年間売上高の4%の罰金、当該商品または製品の没収、公的資金へのアクセスからの一時的な除外などの罰則を科すことが定められている。

(参考情報:2023年6月29日付 European Commission HP

<サイバーセキュリティ>
複雑なソフトウェアサプライチェーンを「SBOM」で紐解く、経産省が導入手引書を公開

経済産業省は7月28日に「ソフトウェア管理に向けたSBOMの導入に関する手引 Ver1.0」を公開した。SBOM(Software Bill of Materials)とは、ソフトウェアの要素や部品、それらの依存関係の情報も含めた機械処理可能な一覧リストのことで、日本語では「ソフトウェア部品表」とも呼ばれる。SBOMのイメージをより具体化するために、以下に簡易的なシナリオとそれに対するSBOMの概念的イメージを示す。

(参考情報:2023年7月28日 経済産業省「ソフトウェア管理に向けたSBOMの導入に関する手引 Ver1.0」

<海外危機管理>
中国 個人情報の域外移転に関する新規制を施行、「標準契約」に必要な手続きを規定

中国の「個人情報越境標準契約弁法」が6月1日、施行された。同法は、中国国内にある個人情報を国外に移転する場合に、個人情報の取り扱い者と提供先が締結する「標準契約」*において必要な手続きを規定したものであり、2021年11月に施行された中国の個人情報保護法の下位規定に位置づけられる。個人情報の域外移転には、中国にある日本企業の子会社が中国国内で取得・保有する個人情報を日本の本社に提供する場合や、日本から中国国内のサーバーにアクセスして個人情報を閲覧する場合も該当する。

(参考情報:2023年2月24日付 中华人民共和国国家互联网信息办公室HP、2021年8月20日付 全国人民代表大会HP

<サステナビリティ経営>
日本広報学会が「広報」の定義を国内初策定、サステナビリティの重要性を全面に反映

日本広報学会は6月20日開催の年次総会で、「広報」の定義を1995年の設立以来初めて機関決定した。「広報」の概念は戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が日本に持ち込んだという。それ以来、学術・産業各界で定着したものの、共通の定義がなかったことから、実質的に国内で初めての策定となる。定義の中で、広報の目標に「社会的に望ましい関係」の構築・維持を挙げた。昨今の組織・企業経営におけるサステナビリティ課題対応の重要性を反映した格好だ。

(参考情報:2023年6月21日付 日本広報学会HP

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