レポート

ESGリスクトピックス 2023年度 No.5

2023.8.1

<非財務情報開示>
サステナビリティ開示の国際基準「ISSB」が確定、24年度中に国内適用へ

国際会計基準財団(IFRS)*の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)**は6月26日、サステナビリティ開示の国際基準「IFRS S1号 サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(以下、S1)」と「IFRS S2号 気候関連開示(以下、S2)」の確定版を公表した。乱立するサステナビリティ開示基準の統一化とともに、投資家などへの分かりやすい開示の実現が目的。2021年に起案作業を開始し、当初予定から半年遅れて完成した。

(参考情報:2023年6月26日付 IFRS HP

<生物多様性>
「SBTs for Nature」第1版を公表 自然に関する企業の目標策定に影響

2023年5月24日、45以上の組織で構成される国際非営利団体のThe Science Based Targets Network(SBTN)は、企業向けの自然に関する科学的根拠に基づく目標設定枠組み「Science Based Targets for Nature(SBTs for Nature)」の第1版を公表した。第1版は、自社およびバリューチェーンの自然に対する影響と依存に関する分析と評価、その結果の理解と取り組み課題や地域の優先順位付けを行うための技術ガイダンス、淡水に関する目標設定ガイダンスから構成される。

(参考情報:2023年5月24日付 Science Based Targets Network HP

<SDGs>
世界SDGs達成度ランキング、日本は過去最低の21位、ジェンダーギャップなどが理由

国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が6月21日公表した「持続可能な開発レポート2023(Sustainable Development Report 2023)」によると、世界各国のSDGs目標達成度で日本は対象166か国中21位で過去最低だった。2019年から4年連続のランクダウンで、昨年は19位だった。政治や経済側面でのジェンダーギャップ(男女格差)が低評価に響いた。

1位はフィンランド、2位はスウェーデンで、欧州諸国が引続き上位を占めた。アジア諸国では日本に次いで韓国が31位。中国は63位だった。

(参考情報:2023年6月21日付 国連持続可能な開発ソリューション・ネットワークHP

<気候変動>
日本政府が6年ぶりに「水素基本戦略」を改訂、15年で15兆円の投資計画を検討

日本政府は6月6日、水素基本戦略を6年ぶりに改定した。サプライチェーンへの官民投資金額は今後15年で15兆円を想定し、水素社会の実現と国際競争力の強化を狙う。改定後の戦略では、水素等(アンモニア等の水素キャリアを含む)導入量目標を2030年に300万トン、2040年に1,200万トン、2050年に2,000万トンと設定したほか、2030年までの国内外における日本関連企業の水電解装置導入目標を15GW程度と設定した。一方、水素供給コストは2030年に30円/Nm3、2050年に20円/Nm3と据え置いた。

(参考情報:2023年6月6日付 内閣官房HP

<サイバーセキュリティ>
サイバー攻撃統合分析プラットフォーム“NIRVANA改”が組織横断分析機能を追加

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、6月13日にサイバー攻撃統合分析プラットフォーム“NIRVANA改*”(ニルヴァーナ・カイ)の新機能として、複数の組織から攻撃情報を収集し、MITRE ATT&CK**(マイター アタック)の攻撃記述の枠組みに沿って、組織をまたぐ俯瞰的な分析機能を開発した。これにより、グループの子会社、関連会社や取引先などサプライチェーンの複数組織にまたがった攻撃の俯瞰的な分析が可能となった。

(参考情報:2023年6月13日付 国立研究開発法人情報通信研究機構HP

<サイバーセキュリティ>
「サイバーセキュリティ産業でサステナブルな人材育成」を目指す英国政府プログラムに 3,600人以上が応募

英国政府はサイバー分野の人材育成プログラムである「Upskill in Cyber programme」へ過去最多の3,600人以上の応募があったと公表した。応募のほぼ半分は女性からで、50%以上がロンドンと南東部以外からという。英国のサイバーセキュリティ産業における年間売上高は、2023年時点で105億ポンドを超えており、英国国家サイバーセキュリティセンターのディレクターは「サイバーセキュリティは、幅広い分野にチャンスがあるエキサイティングで急速に成長している業界。これに対応するには、持続可能で極めて多様な人材のパイプラインを構築する必要がある」と述べている。英国全土で多様な人材がサイバー分野での新しいキャリアを始めることが期待される。

(参考情報:2023年6月26日 英国政府プレスリリース: 「Record numbers looking to kickstart new careers in cyber」

<カスタマーハラスメント>
厚生労働省が「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表

厚生労働省は2023年7月4日、うつ病など精神障害の労災認定基準(以下、「認定基準」という)に関する改正の方向性をまとめた「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」(以下、「本報告書」という)を公表した。本報告書のポイントは「業務による心理的負荷評価表の見直し」「精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直し」「医学意見の収集方法の効率化」の3点であり、本報告書に基づいて認定基準が改正される見通しである。

(参考情報:2023年7月4日 厚生労働省HP

<ガバナンス>
経産省が「企業買収における行動指針(案)」を公表、買収提案への非合理的な妨害に規律

経済産業省は6月8日、買収者や買収の対象となる企業に求める望ましい対応を定めた「企業買収における行動指針(案)」を公表した。企業価値の向上や株主利益に寄与する買収提案を、安易に拒否しないよう取締役・取締役会の行動規範を新たな指針で示した。しかるべき買収対応を促すことで企業の成長を後押しし、経済の発展を促す狙いがある。

買収先からの事前要請や打診がない買収提案に関して、買収対象となった企業の経営陣において、保身などを理由に、合理的な理由のないまま経営陣が当該提案を放置したり、阻止したりするなどの問題が存在する。

(参考情報:経済産業省HP

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