レポート

ESGリスクトピックス 2022年度 No.1

2022.4.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<循環型社会>
米国プラスチック協定、不要かつ問題のあるプラスチック製品11品目のリストを発表

米国のイニシアチブであるU.S. Plastics Pact(米国プラスチック協定)は1月25日、不要かつ問題のあるプラスチック製品11品目のリストを発表した。同イニシアチブは2025年までにこれらの製品の使用を廃止する目標を掲げており、 今回特定した品目に対するサーキュラー・エコノミー型の代替手段に関するガイダンスを今後提供する予定。

(参考情報:2022年1月25日付U.S. Plastics Pact HP

<ネット・ゼロ>
WEF、不動産のカーボンニュートラルを促進する「建築価値フレームワーク」を開発

世界経済フォーラム(WEF)による都市の脱炭素化に向けた「ネットゼロ・カーボン・シティ」プログラムは1月28日、ビルオーナーや資産運用会社、投資家等による不動産脱炭素化への投資を促す「建築価値フレームワーク (Building Value Framework)」を発表した。本フレームワークは、グリーンビルディングへの投資の財務的・非財務的なアウトカムについて解説すると共に、将来性のある投資を実行するための、事例に基づいたチェックリストを提示している。

(参考情報:2022年1月付WEF:Accelerating the Decarbonization of Buildings: The Net-Zero Carbon Cities Building Value Framework

<気候変動>
ClimateWorks財団等、GHG排出量計測方法の開発に向けたイニシアチブ「Carbon Call」を結成

ClimateWorks財団*を始めとする20以上の団体は2月10日、2050年温室効果ガス(GHG)ネットゼロに向けて、信頼性と相互運用性の高いGHG排出量計測方法を開発するイニシアチブ「Cabon Call」の結成を発表した。 マイクロソフトを含む参画機関15団体、署名機関7団体が参画する。

本イニシアチブでは、現在のGHG排出量計測において困難となっている一貫性のある方法で算定された信頼性の高い排出量データの入手および異なる排出量データプラットフォーム間でのデータ連携という2つの課題改善を目指している。 具体的には、特に排出量のデータギャップの大きい炭素除去、土地利用部門、メタン、間接排出の4分野に焦点を当て、信頼性の高いデータへのアクセス拡大と、異なる排出量データプラットフォーム間でのデータの比較、共有、 相互利用の仕組みの構築に取り組む。

(参考情報:2022年2月10日付ClimateWorks FOUNDATION HP

<気候変動>
IPCC、第6次評価報告書のWG2報告書を公表

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2月28日、第6次評価報告書(AR6)第2作業部会(WG2)報告書(影響・適応・脆弱性)を公表した。同報告書は気候変動の影響・適応・脆弱性に関する最新の科学的知見をまとめており、報告書の 政策決定者向け要約(SPM)においては、「人為起源の気候変動は、極端現象の頻度と強度の増加を伴い、自然と人間に対して、広範囲にわたる悪影響と、それに関連した損失と損害を、自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている」と評価。 同報告書では、観測された影響や予測されるリスク、また気候変動リスクへの適応についても限界があることを踏まえ、第5次評価報告書時点よりも気候にレジリエントな開発の緊急性が更に高まっていると指摘している。

(参考情報:2022年2月28日付IPCC HP

Social-社会-

<社会タクソノミー>
EU、「社会タクソノミー」に関する最終報告書を公表

EUサステナブルファイナンス・プラットフォーム*は2月8日、社会的観点から持続可能な企業・経済活動を分類・定義する「社会タクソノミー」に関する最終報告書を公表した。

同報告書は、2021年7月に公表した中間案に対するパブリックコメントを反映したもの。環境タクソノミーの開示基準との整合をめざし、社会タクソノミーが開示対象とする「ディーセントワーク」 「エンドユーザーにとって適切な生活水準とウェル・ビーイング」「包摂的かつ持続可能性のあるコミュニティ」に関して、企業が開示すべき分野をサブ目標として例示した。

(参考情報:2022年2月8日付EU HP

<人権>
国際経済連携推進センターが中小企業向け人権取り組みガイドを公表

国際経済連携推進センターは2月15日、中小企業による人権取り組みの推進に活用することを目的にしたガイドブックを公表した。サプライチェーンの上流にあり取引先から人権侵害の有無を問われることが増えた中小企業が、 「ステークホルダーから選ばれる企業になる」ために人権取り組みの重要性を強調。要対応事項を、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に即して、事例を織り交ぜてわかりやすく説明している。

(参考情報:2022年2月15日付CFIEC

<カスタマーハラスメント>
厚労省がカスハラ対策で企業向けマニュアルを公表、類型別対応策などを提示

厚生労働省は2月25日、顧客等からの暴行や脅迫、ひどい暴言などの迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の企業向けマニュアルを公表した。カスハラを類型化し、それぞれの対応や判断基準を例示。加えて、 平時の従業員教育、発生時の連絡・報告、従業員の相談対応などの社内体制整備など、従業員保護のため企業が取り組むべきポイントを示した。同省の調査では、カスハラは過去3年間にパワハラ、セクハラに次いで企業での発生件数が多く、 かつ唯一増加傾向にあるという。また、同省は20年1月に出した指針で、従業員の相談受付体制や被害防止の取り組みなど企業の取り組みについて触れている。

Governance-ガバナンス-

<プライバシーガバナンス>
経産省が消費者プライバシー保護強化のガイドを改定、責任者設置や分析・評価などの事例追加

経済産業省は2月18日、企業が製品やサービスに消費者のパーソナルデータを利活用する際、プライバシー保護の観点から取り組むべき事項を取りまとめたガイドブックの改定版を公表した。昨年7月公表の前回版に、 組織全体のプライバシー問題への対応と内部統制強化のためプライバシー保護責任者(CPO)を設置した事例や、個人情報・プライバシーに係るリスク分析・評価・対応検討を行うプライバシー影響評価の実践例など、 プライバシーガバナンスの構築に資する企業の取組み事例を追加。また、4月の個人情報保護法改正に即して表現を変更したほか、参考文献等も更新した。

(参考情報:2022年2月18日付経済産業省 HP

<情報管理>
欧州委が産業データの活用を促す法案を公表、企業にデータ提供などを義務づけ

EUの欧州委員会は2月23日、企業などが保有する産業データにユーザーなどがアクセスしやすくする法律案を公表した。IoT製品などの利用データをメーカーが独占的に活用する現状を踏まえ、ユーザーによるデータへのアクセスやユーザーの 要望に応じた第三者へのデータ提供などを義務づける。メーカー以外による産業データの自由な活用を促し、新たなビジネスの創出などEU域内経済の成長につなげるのが狙い。IoT製品などをEU域内に提供する日本企業も対応を迫られる可能性がある。

(参考情報:2022年2月23日付欧州委員会 HP

全般・その他

<情報開示>
GPIFが「優れた統合報告書」・「改善度の高い統合報告書」の選定結果を公表

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2月7日、GPIFの国内株式運用機関に選定を依頼していた「優れた統合報告書」、「改善度の高い統合報告書」の選定結果をまとめたレポートを公表した。

本レポートでは、4機関以上の運用機関から高い評価を得た「優れた統合報告書」(6社)について、優れていると評価した理由やポイントが示されており、パーパスが明確で会社トップのメッセージや統合報告のストーリー全体に浸透している点や、 財務・非財務のKPIの明確さ、マテリアリティと中期経営計画との整合性の高さなどが挙げられている。

(参考情報:2022年2月7日付GPIF HP

<ESG、SDGs>
欧州委員会が「企業のサステナビリティ及びデュー・ディリジェンス指令案」を公表

欧州委員会は2月23日、バリューチェーン全体におけるデュー・ディリジェンス義務を求めた「企業のサステナビリティ及びデュー・ディリジェンス指令案(Directive on corporate sustainability due diligence)」を公表した。

デュー・ディリジェンスの内容は「①ポリシーの策定、②人権・環境デュー・ディリジェンスの実施、③苦情申告手続の確立、④定期的なモニタリング、⑤公表」であり、売上要件を満たす場合はEU域外の日本企業も適用対象となる。 また、同指令案は取締役の責任にも言及しており、企業がデュー・ディリジェンス義務を遵守しなかった事により、損害が生じた場合に損害賠償責任を負う旨を定めている。

(参考情報::2022年2月23日付欧州委員会 HP

今月の『注目』トピックス

<情報開示>
金融庁が、「記述情報の開示の好事例集」に「方針・課題等」「事業等のリスク」の好事例を追加

(参考情報::2022年2月4日付金融庁 HP

金融庁は2月4日、昨年12月に公表した「記述情報の開示の好事例集2021」について、新たに、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等*」、「事業等のリスク**」及び「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の 分析(MD&A)」の開示の好事例を追加し、公表した。

今後は、「コーポレート・ガバナンスの状況等」の一部の項目についての公表も予定している。「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「事業等のリスク」について、投資家・アナリストが期待する主な開示のポイントは、以下の通り。

Q&A

Question

英国で気候変動に関する情報開示が義務化されたと聞きました。これを含めて、企業の非財務情報開示制度の近況を教えてください。また、企業で実施すべき対策はどのようなものがあるのでしょうか?

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