レポート

ESGリスクトピックス 2021年度 No.12

2022.3.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
UNEPFI、金融機関向けにTCFDに関するエンゲージメントおよびリスク評価のガイダンスを発行

国連環境計画金融イニシアチブ(UNEPFI)は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)プログラムの一環として、金融機関向けに、顧客のネットゼロ移行のための評価・エンゲージメントに関するガイダンスと、 気候変動の物理的リスク・移行リスクの統合的な評価に関するガイダンスを発表した。

前者では、顧客の気候関連リスクや移行計画等の評価における課題とベストプラクティスを提示している。後者では、気候変動の物理的リスクと移行リスクを統合的に評価するための理論的な原則と実践のステップを、 セクター別の分析例とともに提示している。

(参考情報:2022年1月付UNEPFI:Leadership strategies for client engagement: Advancing climate-related assessments

(参考情報:2022年1月付UNEPFI:Climate Tango: Principles for integrating physical and transition climate risk assessment with sectoral examples

<生物多様性>
WBA、自然・生物多様性ベンチマークの原案発表。2022年11月には約500社を対象に公表予定

WBA*は1月12日、企業による生態系への貢献度を評価する「自然・生物多様性ベンチマーク」の方法論のドラフト版を公開した。将来的には、影響力の大きい世界1,000社を対象に、本ベンチマークに基づく採点と結果の公表を行う予定。

本ドラフト版では、測定領域は「ガバナンスと戦略」、「生物多様性・環境マネジメント」、「社会的包摂性とコミュニティへの影響」の3つで構成され、重みづけはそれぞれ15%、60%、25%とされている。最も重みづけが大きい 「生物多様性・環境マネジメント」の領域は、自社の生物多様性に対する影響と依存の評価、コミットメントと目標策定、重要な地域における対策、重要な生物種に対する対策、外来種対策という5つの観点から成る 「生物多様性マネジメント」と、二酸化炭素と汚染物質の排出、生態系の保全と再生、土壌の健全性、取水と水質、プラスチックおよび有害化学廃棄物という5つの観点から成る「生物多様性の喪失への対策」の2つのカテゴリで構成されている。

(参考情報:2022年1月12日付Nature and Biodiversity Benchmark Draft Methodology - Report for public consultation

Social-社会-

<人権>
米ブルームバーグの2022年版「男女平等指数」、構成企業が前年比20%増加

米ブルームバーグ通信は1月26日、ジェンダー関連の情報開示や平等への取組で実績のある企業の株価指数「ブルームバーグ男女平等指数(GEI)」について2022年の構成銘柄を発表。45の国・地域の418社を選定し、前年より 20%増えた。構成企業の特長として、▽取締役会メンバーの女性の割合が平均31%▽7割以上がダイバーシティやインクルージョンの担当役員を設置▽6割以上が、女性が高度専門職に就く機会を提供する目的で、 STEM分野(科学・技術・工学・数学分野)の教育・研修プログラムを後援――などを挙げた。

(参考情報:2022年1月26日付ブルームバーグ HP

<人権>
ジェトロの日本企業アンケート、人権尊重方針の策定済・見込み合計で約75%

日本貿易振興機構(ジェトロ)が1月31日に発表した海外事業展開に関する日本企業のアンケート結果によると、人権尊重の方針を「策定済み」と「1年以内に策定予定」の回答の合計が約75%に上った。規模別では、 大企業が83.5%、中小企業は72.6%だった。一方、「策定済み」に限ると大企業64.3%に対して中小企業32.7%と差があった。1745社が回答した。

(参考情報:2022年1月31日付ジェトロ HP

Governance-ガバナンス-

<下請法対応>
不適切な下請取引防止のガイドラインの掲載追加、21年12月末で19業種に

中小企業庁は、下請法違反を防止し適正取引等の推進を目的にした業種ごとのガイドラインを掲載したHPに、化学産業のガイドラインを追加した。これにより、2021年12月末時点で、掲載は19業種になった。具体的には、 素形材、自動車、産業機械・航空機など。ガイドラインでは、下請取引における望ましい取引事例や下請法等で問題となりえる取引事例などを分かりやすく記載している。

(参考情報:2021年12月末日付中小企業庁 HP

<情報セキュリティ>
IPAが選ぶ2021年度の情報セキュリティ10大脅威に「ゼロデイ攻撃」が初めてランクイン

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は1月27日、年間に発生した社会的影響が大きい情報セキュリティ事案を順位付けした毎年恒例の「10大脅威」を公表した。それによると、2021年度の個人向け脅威では、 前年2位の「フィッシングによる個人情報等の搾取」がトップに上昇。10位までの内容は、順位の変動はあるものの、3年連続で同じだった。一方、組織向け脅威では、「修正プログラムの公開前を狙う攻撃(ゼロデイ攻撃)」が 初めてランクイン(7位)した。なお、1位は前年と同じ「ランサムウェアによる被害」だった。IPAは今後、各脅威の手口や傾向、対策などの詳しい解説を公開する予定。

(参考情報:2022年1月27日付情報処理推進機構 HP

<AI ガバナンス>
経産省がAI開発企業向け指針を改訂、人間尊重のシステム開発・運用の原則など示す

経済産業省は1月28日、人工知能(AI)を人間の尊厳の尊重や多様性のある社会の実現などに活用することを理念に掲げた政府の「AI社会原則」を踏まえ、関連するシステムやサービスを開発・運用する企業の行動原則や 目標などを示した「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」の改定版を公表した。昨年7月公表の初版に意見募集結果を反映。目標や実践例などの記載を拡充した。。

(参考情報:2022年1月28日付経産省 HP

全般・その他

<SDGs>
UNDP、「企業・事業体向けSDGインパクト基準」日本語訳を発表

国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所は12月14日、「企業・事業体向けSDGインパクト基準」の日本語訳を発表した。同基準は企業等が事業運営の方針を決定する際、サステナビリティを組み入れることを助ける意思決定基準であり、 戦略、アプローチ(執行・管理)、透明性、ガバナンスの4つのテーマから構成される。同基準に沿った意思決定を行うためのステップおよび同基準の実施状況を把握するための付属資料の日本語訳もあわせて発表されている。

(参考情報:2021年12月14日付国連開発計画 HP

<リスクマネジメント>
世界経済フォーラムが「グローバルリスク報告書 2022」を発表

世界経済フォーラムは1月11日、「グローバルリスク報告書 2022」を発表した。

本報告書では、世界フォーラムメンバーに対して実施される「グローバルリスク意識調査」の結果を踏まえ、"今後10年間の、世界における最も深刻なリスク"の上位10項目が提示されている。今次の結果では、「気候変動への適応の失敗」、 「異常気象」、「生物多様性の喪失や生態系の崩壊」の気候変動関連リスクがトップ3を占めた一方、新型コロナウイルス感染症の影響長期化とそれに伴う格差拡大に関連し、社会関連リスク「社会的結束の侵食」、 「生活破綻(生活苦)」がトップ5入りする結果となった。

(参考情報:2022年1月11日付世界経済フォーラム HP

<ESG投資>
投資運用世界大手ブラックロック社が2022年「フィンク・レター」を発表

米ブラックロック社のラリー・フィンクCEOは1月18日、投資先企業のCEOに向けた公開書簡である通称「フィンク・レター」の2022年版を発表した。

「資本主義の力」と題した同書簡では、企業が持続的にリターンを生み出す上で、明確なパーパスを持ちステークホルダーと共有することや、あらゆるステークホルダーのために価値を創造する姿勢 (いわゆるステークホルダー資本主義)、サステナビリティに配慮した事業活動を行うこと等が重要であることが強調されている。

(参考情報:2022年1月18日付ブラックロック社 HP

今月の『注目』トピックス

<TCFD>
TCFDが「業界主導のイニシアチブ特集レポート」の第一弾を発表

(参考情報::2022年1月25日付TCFD HP

金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は1月25日、「業界主導のイニシアチブ特集レポート」の第一弾を発表した。TCFDはG20の要請を受けて設立されたタスクフォースであり、企業等に対し、 気候関連リスク・機会に関する情報を「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」の項目ごとに開示することを推奨している。

本レポートでは、TCFDの提言に沿った情報開示の手助けとなるような業界主導の3つの活動を紹介している。主導している組織や主な活動内容については以下の通り。

Q&A

Question

昨年、国連ビジネスと人権フォーラムで「UNGP10+ビジネスと人権の次の10年のためのロードマップ」が公表されましたが、どのような内容でしょうか。また、今後企業はどのように取組を進めていけばよいでしょうか。

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