レポート

ESGリスクトピックス 2021年度 No.10

2022.1.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
SBTi、1.5℃目標設定を約束した企業が1,000社を突破したことを発表

SBTi*と、国連グローバルコンパクト(UNGC)は11月10日、両団体らが推進する国際的なキャンペーン「Business Ambition for 1.5°C」に署名し、地球の気温上昇を1.5℃に抑える水準での温室効果ガス排出削減目標の設定を約束した企業が、 1,045社に上ったことを発表した。そのうち半数以上は、2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出ネットゼロを目指すことも約束した。

SBTに目標を申請している企業の75%が1.5℃を目標としている状況であり、SBTiは2022年6月以降1.5℃目標の申請のみを受け入れるとしている。またSBTiは同日、 金融機関向けのネットゼロ目標策定基準案も発表し、1.5℃目標の達成に向けた経済システムの変革を目指している。

(参考情報:2021年11月10日付SBTi HP

(参考情報:2021年11月10日付SBTi HP

<気候変動>
COP26で「グラスゴー気候合意」が採択。1.5℃目標が公式に明文化

第26回国連気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)は11月14日、「グラスゴー気候合意(Glasgow Climate Pact)」を採択して閉会した。本採択により1.5℃目標*が公式に明文化され、締約国は10年後の2030年に向けて、 より野心的な気候変動対策を推進していくこととなる。本合意の中には、炭素回収・利用・貯留(CCUS)**が導入されていない火力発電所の段階的な削減努力を加速させるという文言も盛り込まれた。

また本会議において、議論が長期化していた温室効果ガス削減量の国際移転の際のルール等を定めるパリ協定第6条(市場メカニズム)の実施指針などが合意され、パリルールブックが完成した。

(参考情報:2021年11月13日付UN CLIMATE CHANGE CONFERENCE UK 2021 HP

(参考情報:2021年11月25日付環境省 HP

<環境全般>
欧州委、欧州グリーンディールの一環として森林、廃棄物、土壌分野の個別戦略を採択

欧州委員会は11月17日、欧州グリーンディール*の実現に必要な、森林・廃棄物・土壌に関する新たな構想を採択した。具体的には、以下3点の規則等の導入・改正を提案している。

  • 森林:EU市場に製品を持ち込む企業に対する森林破壊デューデリジェンスの義務化
  • 廃棄物:廃棄物輸出に関する規制強化や、廃棄物を資源として効率的に循環させるシステムの構築
  • 土壌:土壌の保護・回復、持続可能な利用のための具体的な方策などの策定
  •   

(参考情報:2021年11月17日付欧州委員会 HP

Social-社会-

<LGBTQ+>
性的マイノリティの働きやすい環境づくりで 237 社が満点評価

性的マイノリティ(LGBTQ+)の働きやすい職場づくりを目指す任意団体「work with Pride」は11月11日、企業の取り組みを評価する「PRIDE指標2021」の結果を発表した。昨年度の約1.3倍となる300の企業・団体が応募し、 5つの評価指標全てが満点の「ゴールト」が237社だった。また、今年度から新設の「レインボー認定*」に応募のあった41社のうち10社を選出した。自社ステークホルダーへの積極的な働きかけやチャレンジングな 目標設定などが評価のポイントになった。

(参考情報:2021年11月11日付work with Pride

<人権>
取引先の人権デューデリ実施済と半数以上の企業が回答、経産・外務両省の調査で判明

経済産業省と外務省が11月30日公表した「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」によると、回答企業の半数以上が人権デューデリジェンスを実施していると答えた。そのうち、 「間接仕入先まで実施」が25%、「国内の販売先・顧客まで実施」が16%だった。また、約7割が人権方針を策定、約6割が人権主管部署を設置していた。売上が大きい企業や、海外売上比率が高い企業ほど人権取り組みが手厚い傾向がみられた。

(参考情報:2021年11月30日付経済産業省 HP

Governance-ガバナンス-

<情報開示>
経済産業省が「サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて」の中間報告を公表

経済産業省は11月18日、非財務情報の開示指針研究会において、「サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて」の中間報告を公表した。その中で、企業が質の高い非財務情報を開示するために求められる方向性として 以下の4つを提言した。

  1. サステナビリティ関連情報開示における価値関連性の重視
  2. サステナビリティ開示基準の適用におけるオーナーシップ(主体性)の発揮
  3. 企業価値とサステナビリティ情報の関連性に関する認識の深化
  4. ステークホルダーとの「対話」に繋がるサステナビリティ関連情報開示の実施
  5.   

(参考情報:2021年11月18日付同省 HP

<ガバナンス>
コーポレートガバナンス改革手法に効果でばらつき、東証調査で判明

東京証券取引所は11月24日、同取引所上場会社を対象にコーポレートガバナンス改革の「取組」と「効果」「成功要因」を聞いた調査結果を公表した。同調査結果によると、取締役会等での議論の活性化や独立社外取締役・委員会による 監督強化について、多くの企業が効果を認識する一方、中期経営計画等の戦略やリスクテイク、マネジメントなどに関する「審議の質の向上」や「株主等のステークホルダーへの説明可能性の向上」などの項目は成果・効果に 結びついていなかった。東証は調査結果と併せて、各企業におけるコーポレートガバナンスの取り組みを促進するため、具体的なプラクティス事例を示している。

(参考情報:2021年11月24日付東証 HP

<サイバーセキュリティ>
トレンドマイクロによる調査で、国内企業などでセキュリティ人材の不足が浮彫りに

トレント?マイクロは11月30日、民間企業や官公庁、自治体のDX推進担当者を対象としたセキュリティ動向調査の結果を発表した。それによると、回答者の35.2%がサイバーセキュリティインシデントを経験する一方で、 ITセキュリティを担う人材を十分に確保する組織は14.3%に留まった。同社はDXを推進する組織に対し、自社の事業構造やビジネスを理解しながらセキュリティ対策を実践できる人材の重要性を認識し、採用や育成に注力すべきだと指摘した。

(参考情報:2021年11月30日付トレンドマイクロ HP

全般・その他

<サステナビリティ>
国連グローバル・コンパクトや国連責任投資原則等が合同で「インパクト・マネジメント・プラットフォーム」を設立

国連グローバル・コンパクトやPRI(国連責任投資原則)等は11月17日、インパクト・マネジメント*の実践を主流化させることを目的とした「インパクト・マネジメント・プラットフォーム」を設立した。

同プラットフォームでは、インパクト・マネジメントに関係する世界の18の機関が協働し、乱立している各種の原則、基準、ガイダンス等を効果的に統合・ブラッシュアップするとともに、今後、企業や投資家の実践を促すための 情報やツールを整備・公開していくことを目指している。

(参考情報:2021年11月17日付国連グローバル・コンパクト HP

<サステナビリティ>
世界経済フォーラムが未来対応型の中小企業モデルに関する報告書を発表

世界経済フォーラムは11月30日、中小企業が将来の環境変化に対応するために必要な組織的能力と方向性をまとめた報告書「Future Readiness of SMEs:Mobilizing the SME Sector to Drive Widespread Sustainability and Prosperity」を 発表した。持続的な成長を実現し、社会と環境にポジティブな影響を与え、変動の激しい時代にレジリエンスとアジリティを維持する企業を「未来対応型(to be future-ready)」であると整理し、その中核的な推進要因が、 「企業の方向性」「ビジネスモデルの柔軟性」「ネットワーク」の3つであると指摘。先進的な取組を行っている中小企業9社の事例もあわせて紹介している。

(参考情報:2021年11月30日付世界経済フォーラム HP

<サステナブル調達>
日本取引所グループ社「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」を公表

日本取引所グループ社は11月30日、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同を表明している国内の上場会社259社を対象に「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」を実施、その内容を公表した。

同調査によると、TCFDによる世界1,600社の開示状況調査と同様に、国内企業においても"リスクと機会"の開示が最も多いことや、"シナリオに基づく戦略のレジリエンス"の開示が最も少ないことが明らかになった。 また、開示媒体としては統合報告書が最も多いことなども示されている。

(参考情報:2021年11月30日付日本取引所グループ HP

今月の『注目』トピックス

<女性活躍>
経団連、各キャリアステージにおける女性のエンパワーメントに向けたベストプラクティス2021

(参考情報:2021年11月30日付経団連 HP

経団連は11月30日、「各キャリアステージにおける女性のエンパワーメントに向けたベストプラクティス2021」を公表した。女性社員の育成に関する課題は、業種や業界、組織の垣根を越えて共通する部分が多いため、課題に直面する 職場の参考となるよう「初期キャリア」「中期キャリア」「後期キャリア」の各ステージにおける企業の取組やその効果を事例集にまとめた。取組の一例は以下の通り。

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