レポート

ESGリスクトピックス 2021年度 No.8

2021.11.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<森林関連KPI>
WBCSDの内部イニシアティブFSGが、森林に関するKPIの進捗状況を初めて公表

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の内部イニシアティブ「Forest Solutions Group(FSG)」は8月30日、森林に関する重要業績評価指標(KPI)の進捗状況を初めて公表した。 FSGは、紙パルプや木材など森林関連の企業12社によって構成されている。

(参考情報:2021年8月30日付WBCSD HP

<CO2削減>
WBCSDと加盟企業が、各国政府に向け水素市場の創出や炭素排出量価格の内部化などを提言

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD*)と加盟企業の20社(BPなどの石油ガス大手や横河電機など)は9月24日、世界各国政府に向けて世界全体で二酸化炭素などの排出量を減らし、水素市場を創出していくための政策を提言した。

提言の主な内容は以下の通り。

(参考情報:2021年9月24日付WBCSD HP

<生物多様性>
自然関連財務情報開示タスクフォースが始動、日本から弊社原口氏がメンバーに選出、事務局長は元世銀アドバイザー

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)*は10月6日、初の全体会合を開催。共同議長と世界各国から選出された33名のメンバーが、自然資本に関わるリスク管理・情報開示フレームワークの開発作業を開始した。日本からは、 MS&ADインシュアランスグループの原口真氏が選出された。フレームワーク初版の2022年初頭リリースを目指し、作業を進める。最終版2023年の予定。

(参考情報:2021年10月7日付TNFD:Sep-Oct newsletter

Social-社会-

<人権/AI>
国連がAIの人権侵害リスクを懸念、報告書で開発や利用の透明性求める

バチェレ国連人権高等弁務官は9月15日の声明で、重大な人権侵害のリスクになっているとして人工知能(AI)の販売や使用の一時的な中止が必要と強調。人権の国際規範に違反するAIアプリケーションの使用禁止も求めた。 同日公表の報告書は、AIの欠陥や誤用による不当逮捕や差別的扱いのケースを指摘。開発や利用における透明性確保を求めた。

(参考情報:2021年9月15日付OHCHR HP

<人権>
GRIが「ユニバーサル・スタンダード」を改訂、人権対応状況の開示強化を求める

サステナビリティ情報開示の国際的ガイドラインのGRIは10月5日、業種共通の開示基準「ユニバーサル・スタンダード」を2016年の初公表から初めて改訂した。改訂版では、国連やOECDが企業に求める人権対応の内容、 また国際労働機関が定める「国際労働基準」の準拠など、企業に人権関連の対応状況の開示強化を求めている。

(参考情報:2021年10月5日付GRI HP

Governance-ガバナンス-

<生物多様性>
ILOとIUCNが覚書、自然保護を通じた雇用創出を一体で推進

国際労働機関(ILO)と国際自然保護連合(IUCN)は9月1 日、自然保護を通じた雇用の創出を一体で取り組む旨の覚書を交わした。両機関がこれまでに森林再生や水源・土壌保全、気候変動対策などで実施してきた連携体制を正式化した。 併せて、「Nature based Solution(自然に基づいた解決)」の重要性を強調。農業の生産性や所得の向上を目指し、「Agro-forestry(森林農業)」や都市緑化などの促進で合意した。

(参考情報:2021年9月1日付ILO HP

<気候変動>
欧州中央銀が、気候変動政策への早期対応は企業・銀行にとって中長期的に有利と分析

欧州中央銀行(ECB)は9月22日に公表した気候変動が世界経済に及ぼす影響の分析結果で、脱炭素政策に早期に対応する方が企業や銀行にとって中長期的に有利と結論付けた。気候変動対策を迅速かつ計画的に進めることで最終的な コストを最小化できるため、企業や銀行が早期に気候変動への対応の方針を採用することは明白なメリットがあるとした。世界の企業400万社と欧州域内の銀行1600行を対象に、気候変動に関する3つの政策に基づいてシミュレーションした。

(参考情報:2021年9月22日付ECB HP

全般・その他

<リスクマネジメント>
COSOが企業のAI利用のガイダンスを公表、利活用時のリスク最小化の要点をまとめる

米トレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)は9月15日、企業がAIのリスクを最小化しながら利活用していくための要点をCOSO-ERMのフレームワークに沿って提示したガイダンスを公表した。AIは不適切なデータから ステークホルダーに被害を生じる間違った結論を導き出すことやデータの取得・利用で倫理上の問題を誘発し、自社に風評被害、規制当局からの罰金、訴訟などを生じさせるなどのリスクを挙げている。

(参考情報:2021年9月15日付COSO HP

<カーボンニュートラル>
世界経済フォーラムが、都市のカーボンニュートラル化に資するデジタルプラットフォームツールを公開

世界経済フォーラムのNet-Zero Carbon Cities(NZCC)プログラム*は9月22日、都市のカーボンニュートラル化を進める際に参考となる優良事例とケーススタディをまとめた「Toolbox of Solutions」(ベータ版)を公開した。

同プラットフォームは、自治体や企業において、都市のカーボンニュートラル化に向けた実用的なソリューションの特定・評価への活用が目的。エネルギーや建物、モビリティ、水インフラ、廃棄物管理のカテゴリーで事例をまとめている。 また、数か月以内に機能をさらに強化したバージョンの公開を予定している。

(参考情報:2021年9月22日付WEF HP

(参考情報:2021年9月22日付NZCC Toolbox HP

今月の『注目』トピックス

<人権>
外務省、「ビジネスと人権に関する指導原則」の実践に役立つ事例集を公表

(参考情報:2021年9月付外務省 HP 掲載ページ

(参考情報:2021年9月付外務省 HP 事例集

外務省はこのほど、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を企業が実践する際の参考資料とすることを目的にした事例集を公表した。同省が経団連や中小企業家同友会全国協議会などの協力で企業の取り組みをヒアリングし、まとめた。 「指導原則」や人権デュー・ディリジェンスの実践を普及促進することで、企業の人権取り組みを一層促すのが目的。「指導原則」が企業に求める取り組みの3つの柱【下記】に沿って17社(中小企業2社含む)の具体的な取り組み内容を 整理している。

Q&A

Question

SDGsの目標としている2030年まで10年を切っていますが、日本においてSDGs取り組みはどの程度進捗しているのでしょうか。また、企業においてSDGs取り組みを進めていく上で、参考となる政府の取り組みを教えてください。

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